感染症の影響を表す指標として「超過死亡数」というのがある。これは、インフルエンザの流行時に用いられた指標で、感染症や災害が発生した月・年の死亡数が通年の死亡平均値に対して超過した数をいうもの。つまり直接起因による死亡以外の間接的な死亡数、例えば医療崩壊などがもたらす間接的な死亡数なども含むため、全体像を把握するには大変重要な指標の一つである。
この死亡数と共に、感染に関連する企業倒産も極めて重要な懸念事項だ。そこで、ふと思ったのだが、感染症と同様にその流行によって倒産してしまった企業の実態を把握するために、「超過倒産数」という指標も必要ではないだろうか。
ググってみてもそんな言葉は出てこないので、小生が勝手に作った造語かもしれないのだが、今年の場合は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って経営困難となって倒産したところも多るために、過去の月別倒産件数傾向とは明らかに異なる分布傾向が現れるはずだ。先日、テレビのコメンテータから、「新型コロナウイルスによる倒産状況、実は末端までは把握しきれない」などという発言があったのだが、この超過倒産件数を調べれば、もっと実態が分かると思われる。
古い言葉で「風が吹くと桶屋が儲かる」というのがあるが、逆に、「風が吹かなければ桶屋が倒産する」ということもあり得る。こういった間接的な連鎖倒産こそ、経済低迷の潜在的な危険要素だろう。
その連鎖倒産は、時間軸的に感染拡大と同じ様な等比数列になっているわけで、末端まで把握することは困難なことは理解できる。それならば、その数をカウントするよりも「超過倒産」から実態を把握して、先んじて手を打つということが経済政策ではないかと思うわけだ。
生活できるか否かのギリギリにいる企業や人々に対する救済もきちんと行わないと、連鎖倒産の逆方向倒産も起こり得る。車に用いられている部品の一部が小さな町工場で製造されている例など、枚挙に暇がない。
次のグラフは、6月20日付け週刊ダイヤモンドに掲載されていた「帝国データバンク 全国企業財務諸表分析統計」の今年の倒産件数であるが、ここに記されている数字は飽くまでも倒産件数であって、休業や廃業は含まれていないのだ。倒産予備軍である休業や、実質的な倒産である廃業は、恐らくカウントされている倒産件数よりも遥かに多い可能性はあるのではないだろうか。
全国企業財務諸表分析統計(帝国データバンク)
末端に行くほど政治の世界からは遠いので、実態が直接見えないのはやむを得ないとは思うが、その様な状態での施策は意味がないとは言えないものの、暗闇で刀を振り回すのは効率が悪すぎる。
休業や廃業まで含めた「超過倒産」をよく調べるべきと思う。