英語表記による駅名表示がもたらす混乱 - 勘違い系の国際化 | プロムナード

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先日、大阪で大きな地震があった。鉄道関係もこの影響で運転中止や見合わせなどが相次ぎ、駅では大混乱が生じた。乗客の中には、日本へ旅行に来ている外国人も多数いた。鉄道会社は、彼らを正しく誘導することができたか。そもそもその仕組みが確立されていたか。そしてその方法が正しく検証されていたか。

 

国際化をもくろみ、海外からの観光客を呼び込むことを政策とするならば、日本人の思い込みではなく外国人の立場で見て用意すべきことはまだたくさんあるのではないか?

 

例えばこんな例がある。

 

駅名について、駅案内を日本語と英語の両方で車内放送するようになって久しい。国際空港へ向かうモノレールなど、場所によってはそれに加えて中国語や韓国語での放送も多くなった。国際化を鑑みるうえでは、いいことだと思う。ちなみに、グリーン車の料金についてのアナウンスが、日本語では「車内で買うと料金が異なる」と伝えているのに対し、英語では「車内で買うと高い」とはっきり伝えていた時期があったのは結構印象的だったものだ(現在は両方とも「異なる」とだけしか言っていない)。

 

この程度のことであれば、混乱するとをきたすというほどはなさそうだが、何か中途半端なアナウンスも散見されるのだ。

 

一つ例を挙げよう。

 

埼玉県の大宮駅を発着駅とする埼玉新都市交通という鉄道があるが、この中の一つに「鉄道博物館」という名前の駅がある。かつては「大成」という駅名だったが、鉄道博物館が開館してから駅名を鉄道博物館と改名した駅だ。今でも鉄道博物館という駅名表示の下に(大成)と書いてある。

 

この鉄道博物館、元々は秋葉原に合った交通博物館のうちの鉄道関係を踏襲したもので、首都圏にある鉄道関連の博物館としては規模も大きく、鉄道ファンならずとも大いに楽しめる施設であり、連日多くの客が訪れる博物館なのだが、問題は新都市交通における日本語と英語の社内アナウンス、そしてなんといってもその駅名表記だ。

 

電車の中での次駅紹介に関する英語のアナウンスを聞いていると、鉄道博物館のことをRailway Museumと紹介している。ところが、駅に到着した時の駅構内でのアナウンスは「鉄道博物館」、つまりTetsudo Hakubutukan

 

日本語が全く分からないに外国人にとって、電車の中での駅名の判別は耳に聞こえるアナウンスだろう。したがって、次駅はRailway Museumという駅と思うだろう。しかし、実際に到着した時の駅構内アナウンスはなんと、Railway MuseumではなくTetsudo Hakubutukanなのだ。

このRailway MuseumTetsudo Hakubutukanこの二つが同じであると判るのは日本語と英語の両方を理解している人だけだろう。車内におけるアナウンスを聞いた外国人が「次の駅はRailway Museumと聞いていても、駅に到着した時の駅構内アナウンスがTetsudo Hakubutukanだったら、混乱することは想像に難くない。

 

また、駅名表示もまちまち。

 

 

大宮駅の券売機のところでは、大宮駅の次駅である鉄道博物館駅はRailway Museumだが、駅構内にある次駅表示にはTetsudo Hakubutukanの表示。

 

 

一方、駅柵にある次駅表示はRailway Museum

 

 

そして実際に鉄道博物館にある標識はTetsudo Hakubutukanなのだ。

 

 

この英語表記を見れば、この一貫性のない表示の異常性が理解できるだろう。

 

切符を買ったときは大宮駅の隣駅であるRailway Museum行きとして買ったはずだが、その駅の表示をRailway Museumと書いてあるところもあるし、Tetsudo Hakubutukan と書いてあるところもあるのだから混乱するはずだ。

 

日本語がわからない外国人に、Railway MuseumTetsudo Hakubutukan という二つの駅がある様に思われても不思議はない。

 

日本人が海外旅行で鉄道に乗った時、日本語のアナウンスが「次は鉄道博物館」だったので、そこで降りようとしたとき、到着時のアナウンスが全く違う名前だったらさぞかし狼狽するだろう。同じだと判るには両方の単語を理解していなければならないのだ。

 

この様な事が結構見られる。日本語をなまじっか英語に訳してしまうと、かえって混乱する。日本語の名前はそのままにすべきだろう。

我々が普通に使っている単語をそのまま伝えるべきだと、考える。

 

この程度のことは些細な事かもしれない。実際に外国人がこのことで混乱して問題になったということはこれまでなかったかもしれない。だから表示の改訂がされていないのかもしれないが、決して良いことではない。口に出して言わないだけかもしれないのだ。

 

こういうことをきちんと整備することこそが「おもてなし」であるし、日本人らしいきめ細かいサポート能力を発揮するところだろうと考える。