新幹線といえば殆どが東海道新幹線の利用となっていて、その次が東北新幹線。これまで上越新幹線にはあまり乗る機会がなかったのだが、最近上越新幹線に乗って面白いことに気付いた。
それはトンネルを通過している時の音だ。
「洞窟探検」を趣味の筆頭に記載する小生、様々な建造物の中ではトンネルが一番好きなのだが、「特にトンネルを通過しているときの音を聞くのがオススメです」なんて言うと、たいていの人はドン引きするだろう。
しかし、ローカル線のトンネルの場合であれば、走行中に誘導灯や誘導路、引き込み線の線路などが見えて楽しいし、特に幽谷深山にぽっかりと空いた単線のトンネルなどではコンクリートの壁の間に岩盤が見えるところもあり、そんなところを通過するときは思わずハァハァしてしまう。こんな楽しみ方を知らない人はかわいそうだと思うのだが。。。
この習性、いつ頃からだったか思い出すと、恐らく高校時代の夏休み。岩手県の気仙郡にある洞窟探検調査の帰りに立ち寄った龍泉洞に行く岩泉線のトンネルが最初だったと思う。
何しろ昭和40年代の話だから、車両にはエアコン設備なんかなく、夏であれば窓は全開がアタリマエの時代。なので、トンネルに入れば車内にはいつもすさまじい轟音が鳴り響く、そんな状況だったのだが、くだんの岩泉線のトンネルでは、他のローカル線とは異なり、それまで経験したことのないほどの強い風が列車内に吹き込んできたのだ。しかも冷風。窓の外を見ると、地下水と思しき水流が「いい感じ」で流れている。
洞窟探検をしている人であれば、ピンとくる、そう、これはどう考えても洞窟を寸断する様にトンネルが掘られているのだ。案の定、トンネルを出た瞬間に窓ガラスが一斉に曇った。つまりそのトンネルの内部は他のトンネルよりも相当に気温が低いことだ。
いずれ、その洞窟、いやトンネルを探検してみたいと思っていたのだが、2010年に岩泉線で発生した土砂崩れによる脱線事故以来、復旧費用がままらないということから今年11月に岩泉線の廃線が決まったと聞くが、完全に廃線となったら真剣に探検できそうだ(もちろん、許可を取ってからだけどね)。
それはともかく、同じトンネルでも新幹線の場合はひたすら高速で走り抜けるだけなので情緒はないし、車両の気密性も優れているために風を感じることもないということもあって、トンネルとしての興味度は低いために、大方は寝過ごしていたのだが、先日乗った上越新幹線でトンネル通過中に様々な音を聞くことができることに気付いた。
ある時はF15戦闘機の様な甲高い金属音に近いジェットエンジンの音、またある時は軍用輸送機のターボプロップの重厚なエンジン音。そういった音たちが重なり合って脈を打つ様に干渉し合いつつ刻々と変化し、まるで交響曲を聴いている様に耳に届いてくるのだ。
目を閉じて、そういう音を聞いていると様々なことが瞑想できる。
これまでの様々な新幹線のトンネルのなかでは、
上越新幹線の新清水トンネル通過音が秀逸である。
恐らくこれ等の音の変化は、トンネルが複線型トンネルなので、トンネル通過中に対抗車線側から列車が進入し、それに伴って気圧が大きく変動するといったことや、トンネルによっては形状が歪曲しているために減速を余儀なくさせられる箇所があり、いきおい、モーターの唸り音が変動するため、といったことも要因の一つだろう。
トンネル通過中には、目を閉じてそんなリアルタイムな音の変化を楽しんでいる。