昨今のシリコンバレー四方山話  - 半導体産業の裏事情 | プロムナード

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先日、シリコンバレー出張に行った際、現地のエンジニア連中から辛辣な話を聞いた。初めて聞く話ではないものの、現実はそうなのだと改めて痛感したのだが、

シリコンバレーでの成功は、早い話「コネ」と「学歴」で決まるという。

今更驚く様なことではないのだが、このご時世、景気が良くなっているのかどうかが良くわからない状況下では、彼らの話は相当に深刻である。

アメリカンドリームという言葉が生まれて久しい。無一文に近い丁稚奉公が、実力世界の中で頭角を現し、やがては世界に君臨する大企業のトップとなる。正直言って、そういう話、シンデレラや白雪姫の様な夢物語に出てくる強運の女の子の話よりもずっと現実的だし、実例だってたくさんある。そして、恐らく今でもそのキーワードはシリコンバレー界隈でも生きているだろう。

小生が携わっている半導体を含むIT関連も、まさしくアメリカンドリームの象徴の様にも言われている。実際、くだんの地、シリコンバレーでは、起業家たちがNASDAQの様な証券市場に自社を上場させて億万長者となった例、数えれば枚挙に暇がない。しかし、その実態、現実はそんなに甘くはないわけで、というか、その実例、少なくとも最近では極めてレアなケースとなっている様だ。

現地の一般的な技術者たちの話を聞くと、ここしばらくのVC(Venture Capitalist)たちの財布の紐は相当に固く、投資先としての半導体への投資は想像以上に厳しいらしい。

確かに無理もない。実際、半導体製造のウェハー投入に至るには、デザインルールの小さいものになると、開発にはすさまじい金がかかるし、昨今の回路は複雑極まりないから、基本機能に限定したところで一度ですべて動くということは稀で、セカンド、サードスピンを行うことはザラにある。そもそも一回のウェハー投入で「億近い金」がかかる上、ウェハーを何度もやり直しするともなると、時間も金もやたら浪費するわけだから、その間VCたちはじっと我慢しなくてはならないし、何といっても一番問題なことは、それで必ず成功するとは限らないということ。 

こういうリスクの大きい投資は当然リターンも多いのが普通であるが、時間がかかるということは、同等或いはそれ以上の技術が別のところに生まれてくるという可能性も大きいということでもあり、「健全な」投資家は、特に最近は、そういう「賭け」に対して相当に及び腰になっているそうだ。

かつて、太陽電池の開発で一世を風靡したソリンドラ。シリコンバレーを南北に走る高速880号線沿いのフリーモントにあって、高速道路からその広大な敷地がよく見えた。じりじりと値段を上げていくシリコンの価格を見据えながら、CIGS(銅・インジウム・ガリウム・セレン)という化合物半導体で構成された薄膜太陽電池の開発メーカーであるソリンドラは、オバマ氏もグリーンニューディール政策として国費53,500万ドルを投入するという、太陽電池業界にあっては圧倒的な技術力と影響力を誇っていた。。。

Sorindora社、GoogleMapより

ところが実態としては、実際のビジネスに至る前に、シリコン価格が一段落するに伴って台頭して来たアジア諸国による安価なシリコン結晶型太陽電池との抗争が勃発、ソリンドラ社は創立後たった6年であえなく沈没という体たらくを演じた。
これがトラウマとなって、VCはハイテク産業への投資に対して食指を動かさなくなってきているという。

確かに、こんにちの高機能半導体は頗る複雑なものとなっているが故、はっきり言って完成品というのは存在しないと言い切ってよいだろう。つまり今やバグ無き高機能半導体といのは存在しないのだ。それがなぜ問題にならないかというと、要は単にバグが発覚していないだけということ。

今日びの情報端末、四六時中その端末の持つ100%の機能を使っている人というのはまずいないだろう。極端に言えば、ある特殊な機能なんか一度も使わないまま機種変更、ということだって、ザラにあるはず。逆に云えば、その使われていない機能の中に、実はとんでもない時限爆弾が潜んでいる可能性すらあるのだ。

極めて大きな破壊力をもつ火薬だって、火が付かなければ爆発しない。バグというのは、そういうものであり、発覚しない限りはバグではないのだ。

そういった複雑怪奇な半導体製品、さすがに誰にでも開発できるシロモノではなくなってきており、スタンフォード大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)、UCバークレー(カリフォルニア州立大学バークレー校)、ハーバード大学辺りのPh.D(博士号取得者)の中でも、ほんの一握りの天才にしか開発できないものとなっている。

起業家精神教育の中枢、スタンフォード大学

そうなると、中堅どころの技術者としては、そう云う天才とのコネがあって職にありつくか、もっとプリミッティブでシンプルな半導体設計に携わるしか道はない。つまり、シリコンバレーでの半導体開発については、二極分化が進んでいるのだ。

ほんの一握りの天才へのコネがあるかどうか。しかもコネ持つ人もたくさんいるはずだから、抜擢してもらうためには、オーディションの前に学歴という「書類選考」で落選しないようにしなくてはならないのだ。

以前にも、ここに書いておいたが、
http://ameblo.jp/millimeter-wave/entry-11509669580.html

シリコンバレーでの成功、実はそこに横たわるバリバリに学歴偏重な風土というものを、今一度理解しておく必要がありそうだ。