子供達の理科離れ | プロムナード

プロムナード

古いこと、新しいこと
いつでも、どこでも
思いつくまま、気の向くまま

子供の時から、測定オタクというか計測マニアで、計測してデータを取るということが大好きだった。

実際、拙宅では室内温度や湿度はもとより、外気についても4箇所での計測データが一箇所に無線伝送されていて、集中管理が可能となっている。これが結構楽しい。どういう風に楽しいかというと、2階のベランダでは今何度で湿度何パーセントか、玄関の外では何度か、そして門の辺りや裏の勝手口の温度はどうか、そういった外部情報が一度に把握できるからだ。それがどうしたと言うこと無かれ。楽しいんだから、理屈なんかない。

ただし、この温度計群は一度に購入したものではなく、米国出張に行った際に見つけるたびに調達したものだから、メーカーも商品も異なっている。いきおい、外観形状が統一されていないため、並べてみても統一性が無いので、すこしダサいのが難点だ。出来れば発電所の制御室の様に整然とメーターが並ぶ環境にしたいところだが、金銭的にも空間的にもそれは難しそうなので、諦めている。

いつから測定好きになったかと言うと、恐らく、小学生の時に購読もらった学研の「科学」と言う雑誌に付録として付いていた、抵抗値が分かる
テスターの作成が最初だった気がする。コイルを巻いて乾電池からの電流を流すと磁界が発生し、鉄心に接続されていたアルミ片が針として動くという簡単なモノだったが、針の振れ方で抵抗の大小が把握できるということは、小学生にとって大きな衝撃だった。尤も、抵抗値などという大袈裟なものではなかったが、それでも鉄線やアルミ線、ニクロム線などの素材によって針の振れ方が違うことが目で確認できるという画期的な付録だった。

その後、中学に入り、小遣いをはたいて三和電気計器(SANWA)製の「本物のテスター」を買った。秋葉原まで都電に乗って、買いに行った。あの時の喜びは今でも鮮明に覚えている。秋葉原通いはあの時に始まったと思う。その後、くだんのテスターは乾電池の液漏れなどから内部が随分と腐食してしまい、現在は現役を退いているが、今でも手元にあって捨て難いものの一つとなっている。気が付けば、45年も手元にあるわけだ。


このテスターには随分と世話になった。真空管やトランジスタラジオの組み立てや、ギターアンプの設計、無線機の組み立て、さらには、当時はアナログ通信であった警察無線傍受の受信機、等々。或いはステレオアンプの修理、近年では、コタツの修理でも活躍してもらったものだ。警察無線傍受機が完成したときは、うれしくて両親に見せた(なんていうもの作ってんの?と叱られたが)

今日び、電気製品は機能がより一層複雑となり、しかも小型化している。かつての真空管やトランジスタといった部品は大半がIC化して、しかもカスタム部品となっており、修理や改造のために一般消費者が入手することが困難となった。故障しても、部品が入手できなければ買い換えるしかない。つまり消費者と半導体メーカーとの剥離は増大する一方であり、それが子供達の理科離れの原因の一つではないか、と思うのだ。また、機器の小型化に伴い、受動部品も殆どがチップ部品化しているので、手ハンダでの交換もままならない。
仕方が無いとは思う。しかし、子供の知的好奇心を助成するものが減ってしまった気はする。

エレクトロニクス、その原理原則は勉強することで習得できるが、子供達に勉強を始めさせる前に、まずは興味を持たせ、勉強したいと思わせる様な材料が減ってしまったことは残念だ。