ユニコーン 「クロスロード」収録 「アルカセ」という劇薬がすごすぎたので | とらんぬのブログ

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肉を食え!!たまにエモ!人生はロックと快便!

数年前、カラヴァッジョ展で見た美術展紹介映像。

失われた「法悦のマグダラのマリア」が見つかり、持ち込まれたその絵のマグダラのマリアを見た学芸員が言った。「彼女よ。」
自分には美術を解する能力はないが、その学芸員の気持ちが、心の底から理解できた。

久々に脳内が占領されてしまい仕事をしながらもずっとそのことばかり考えるようになり
これはどこかに吐き出さねばいかんとPCに向かう。
家のキーボードで100文字以上打ち込むことなど既に失われてしまった過去の風習だというのに。

ユニコーンの新譜「クロスロード」について。
これに先立って発売された「ええ愛のメモリ」で、正直に言うと期待値がかなり落ちていた。
確かに色々凝っているんだけど、何か求めている音ではない。勿論ボーカルがAIのせいもあるが、曲の力が何か薄い。
後からあべが明かしたが、実際のボーカルの魅力をを超えないよう調整した、ということで、
上記の感覚は正常だったわけだが、そんなこと10月の時点で知らない上、
新譜の作詞作曲構成の6割近くが電大チームになっており、これはおそらくボーカルもそういうことだろう、と。
自分のこれまでのユニコーン歴から、どうしても反応するのはあべ曲や奥田さん曲で、もっと言えばあべ曲奥田さん歌で、
本当に申し訳ないのだけど、半数以上が電大作構成では楽曲全体のの威力はやはり何段か落ちるわけで、なんとなく損した気分になっていた。
ただそこで、自分の中にある最後までしつこく残る人間の本能が新譜の可能性をあきらめてはいなかった。

とにかく各種ラジオで突然流れる新曲をすべてミュートしながらなんとか発売日を迎える。
あの曲についてはすでにSNS上では名曲確定の言葉がひたすら書き込まれ、誘惑がひたすら続いたが耐え続けた。
できる限り早くセブン受け取りでゲットするために当日は在宅とする。
(*本当はワンオクマイファス東京ドームライブに行くため在宅にしていたがチケット当たらなかった・・・)
朝一に店舗到着確認しパジャマのままセブンに取りに行き、朝の準備を整えまだ8時。
仕事を始めるまでに十分に聞く時間があったので再生を押した。

夢であふれたおもちゃ箱からかわいい鼓笛隊やお人形が飛び出してきたかのような表題曲「クロスロード」、
奥田さんの、計算高くて器用でずるいようで、でもそれ以上に本人のチャーミングな魅力にあふれた舞台の幕が上がる。
この曲のおかげで下がっていた期待値が一気に戻り、いつも通りのユニコーンを聞くときのわくわくが蘇ってくる。
そしてAIボーカルで何となくピンとこなかった「OAW!」が、同じ曲と思えない生命力を持っていた。
なんてエネルギーにまみれた楽しい曲なんだ!音楽が跳ね回っているじゃないか!
そうか、あべはAIを提示することで、AIの更なる可能性や恐怖のことのことより、
人間にはまだできることがある、という人間の力の可能性を見せたかったんだ!ということを理解する。
そうしてご機嫌になっていた時にそれがきた。

アルカセ。

最初のピアノの爪弾きだけで理解した。「これだ。」
聴いた瞬間一気に心拍数が上がり、呼吸は荒くなり、目が熱く潤み、自分は明らかに聴覚だけの存在となった。
自分はこの音を待っていたのだ。阿部義晴という人間そのものが細部にわたるまでしみ込んだ、煌めく光の溢れる世界。
「HELLOのような壮大な曲を、とオーダーされたが、HELLOは本当に大切な曲で、そう簡単に書けないけど頑張った。」と言っていたその曲だ。
そして奥田さんの声がその静かなはじまりに合流し、これまで聞いたことのない高音を奏でる。
14年前、HELLOをCDで初めて聞いた時の衝撃を完全に上回った。
奥田民生の声の美しさを宇宙一理解する阿部が丁寧に積み上げ配置した音、それに完璧に合致する答えとしての奥田さんの声。

この上に降り注ぐ奥田さんの、巧妙に隠されていながらも世界すべてに向けて叫ばれる誰かへの愛の告白と断言できる詞の世界。
家族愛映画のテーマソングということでもあるけど、これまでにはないほど明確な愛の世界の歌詞。
レコーディング風景を見ると、あべのデモテープの言葉をうまく流用した言葉のようだが、
(*そこでめちゃくちゃふざけてて単なるばかっぷるになってたがw)
自分を「歩かせ」る誰か、という意味と、自分をつなぐ「或る枷」でもある誰かの意味もあるんだろうか。

大きく鳴り響くドラムの全力と正確に重なるベースが地上を作り出し、音楽なのに映像が浮かんでくる。
ライラックブルーの近未来の優しい光のタイムマシンから出ると、現在の世界に広がる、オレンジとブルーのマジックアワーの海。
音だけなのに映像が一気に脳内を走っていくし、楽曲の主人公のことなど何も知らないのにあらゆる情報が注ぎ込まれる。


ABEDON奥田民生という、ほんの一瞬のズレがあれば出会わなかった天才同士が出会い、
別れ(*実際には解散後も全然別れてないが)、そして再び出会った奇跡を享受できる喜び。
ああ、今彼らの作る音楽を全身全霊で信じている。本能が喜んでいるこの感覚。
これは法悦ということなのだろう。
この絶望的に美しい音楽。これ以上美しいものに出会えないという絶望が待っているとわかっているけども、
それでもこの美しさゆえに絶望を受け入れる。
エモだ。
今どきの子たちが「エモい」で使う方のものでなく、本来使われる方のエモだ。
圧倒的な感情に打ちのめされ立ち上がれなくなる。恍惚のさらに向こう側にあるようなその感覚。
私はユニコーンは間違いなくエモバンドである、とずっと言っているけど、この感覚だ。これをずっと待っていたんだ。

自分が求めている音楽を驚異的な高さと深さで上回ったアルカセの5分で、「これは一度止めねば」とCDを止めた。
スマートウォッチを見るととんでもない脈拍になっており、そこで初めて呼吸を整えねば、と気付いた。

完全に脳内は乱れていたので、むしろ身体に何も起きない方が不自然なのだ。

5分間、この神秘の存在を前に、ありえないけども、もし身体が爆発しても自分は驚かなかったであろう。

 

あべの音楽が作る世界は薬でもあり毒でもあることは前々からわかっているけども、久々に実感した。
ここに奥田さんの詩の世界が一緒に入ってくるんだからあまりに素晴らしすぎて本当に体に悪い。
音楽の深さに加えて歌詞のことも考えてばかりで一瞬で今週が終わってしまった。
火曜のフラゲ以降、興奮で金曜までまともに眠れなかった。
使用法を間違えると自分の普段の生活が根本から壊れてしまう。
それこそリングサイドのあの多幸感は演者の方も中毒になっているわけで・・・

これだけとりあえず何が言いたいって、

この美しい世界の中毒症状を一気に治すEBIちゃんは偉大!!!!!!!!

 

とりあえず他の曲ももちろん素晴らしかったけど、発散のために文章書いてたらちょっと明日の仕事に響くので終了。

三郷のチケット欲しかったけど敗北したので群馬から頑張ってライブ三昧するぞ!