それほど渋滞もなく、車は順調に都内を抜け、ファンタジーランドに到着した。

開園1時間前だけど、駐車場もすでにいっぱいだ。


「うわぁ、やっぱりクリスマスイブだから混んでるね」


ジヒョク君はようやく停める場所を見つけ、車をバックさせる。

ジヒョク君はぴったりの位置に車を停めて、ブレーキをかけた。そしてカバンを開けて、がさがさと何かを探している。

ちらりと見ると、文庫本が入っていた。

日本の小説だ。


(そういえば前に、控室で本を読んでいるのを見た事があるなぁ・・・・・・)


いつも明るくてメンバーの中でもいじられキャラだけど、静かに本を読む時間も大事にしている。

ソファによりかかって本を読んでいるジヒョク君は、とても知的な雰囲気だった。


「あったあった、はい、これマスク。人ごみだからさ、風邪ひかないように。あと一応、芸能人だしね」


ジヒョク君がマスクを差し出してくる。


「私の分まで、すみません」


「あーっ!」


「な、何ですか?」


びっくりして、思わず辺りをキョロキョロ見回した。


「また謝ったー!」


「ごめんなさ・・・・・・」


「わー、また言ったー!俺は麗ちゃんに謝ってほしいことなんかひとつもないんだってば」


ジヒョク君はハンドルにつっぷした、


「俺は、麗ちゃんと一緒にいられるだけで嬉しいんだからもう謝っちゃダめだよー」


「ジヒョク君・・・・・」


(クリスマスだからってサービスしすぎだよ。何でそんなに嬉しい事ばっかり言ってくれるの?)


もう胸キュンどころじゃなくて、ぎゅうぎゅう絞られてるみたいに胸のあたりが幸せで痛くなってくる。


「あ、じゃあ、罰ゲーム1つ目いくよ!」


ジヒョク君はパッと顔を上げた。


「これからぜーったい謝っちゃダメ!」


「す、すみません、ちゃんとできるかどうか・・・って、わわ!」


「しょうがないから、今のはカウントしないであげる!でも、この車から降りたら開始だからね」


「うぅ、そんな事言われても・・・」


口を尖らせたまま考えていると、いきなりジヒョク君が私の唇をつまんだ。


「・・・・・・むむ」


驚いたけど、声が出ない。


「これも罰ゲームっ!」


ジヒョク君がいたずらっぽく笑ってる。


「・・・・・・う、うぅ」


「あ、ごめんごめん、苦しいよね」


「もう、ジヒョク君の手tにリップグロスがついちゃいますよ?」


「大丈夫、大丈夫。麗ちゃん、そんなにメイクしてないでしょ?」


「そうですけど・・・・・・」


「それは、スバラシイ。特に唇はあんまり塗らないでいてくれると嬉しいなー」


「えっ」


(それって、どういう意味?)


想像力がたくましくなって、頭の中がぐるぐるしてしまう。


「だって、食べ物がおいしくなくなっちゃうでしょう?」


「え、あ、そうですね・・・・・・」


思わず肩の力が抜ける。


「ん?ほかに何があるのかなあ。教えて?」


「べ、別にないです・・・・・」


「ウッソだー」


ジヒョク君がさっきよりもっといたずらっぽい笑顔で、私の顔をのぞきこむ。


(ああ、もう、恥ずかしくてたまらない・・・・・・)


ジヒョク君の視線に耐えられなくなった私は・・・・・・。


「も、もう!罰ゲームは終わりです!」


私は急いで車から降りた。


「あ、待ってよ!麗ちゃん!」


「ジヒョク君なんて、キライです!」


「えー、ウソでしょ?俺、そんなに困らせた?」


ジヒョク君が慌てて私を追ってくる。


「・・・・・・なーんて、ウソです」


私は振り返って、ジヒョク君に向かってぺろっと舌をだ出した。


「ジヒョク君に罰ゲームでした!」


「キライ・・・・・・はウソ?」


ジヒョク君は心細そうな顔をする。


「ウソですよ。ウソに決まってるじゃないですか!」


「じゃあ・・・・・・何?」


「え・・・・・・?」


キライじゃなっかたら・・・何?」


「えっ、それは・・・・・・」


「聞かせてくれないと、もうここから動かないよ。キライじゃなかったら、なに・・・・・・?」


「・・・・・・」


(そんなの、分かってるよね・・・・・・?)


私が口ごもっていると


「ウソだよーん」


ジヒョク君が笑っている。


「もう困らせたりしないよ。ごめんね。さ、行こ!」


歩き出そうとすると、あ、これこれ、とジヒョク君がさっきのマスクを渡してくれる。


風邪ひいたりしたらメンバーに怒られちゃう」


「そうですよね。年末も歌のお仕事、ありますもんね」


「ただでさえ『ジヒョクだけクリスマスイブに休みなんてズルイぞー』ってみんなに言われたからなー」


「今日ここに来ることは皆さんには言ったんですか?」


「まっさかー。誰にも言ってないよ」


「知ってるのは私達だけ?」


「そう、2人だけのヒミツだからね。もったいないから誰にも言わない!」


「はい!」


私達は顔を合わせて笑うと、歩き出した。


「わぁ!すごい人」


ファンタジーランドは、多くのお客さんで溢れていた。


「なんか、迷子になっちゃいそう・・・・・・」


「よし、早速乗り物に乗ろう!」


さ、行くよ、とジヒョク君は足早に歩いて行く。


(わ、ジヒョク君ってば歩くの早い・・・・・・!)


私は慌てて後を追うけど、足の長いジヒョク君になかなか追いつけない。


「あ、忘れてた」


ジヒョク君は少し進んで、急に私の方を振り返った。


「?」


「手、つなご」


左手が、すっと差し出される。

私はその手を見ながらしばらくじっとしていた。


「どうしたの?やだ?」


「ち、違います。いやなわけありません!」


(びっくりしちゃって、固まっちゃったんです・・・・・・なんて言ったら笑われちゃうよね)


「お、お願いします」


私はぎくしゃくと手を差し出した。


「それじゃ、ダメー!」


「えっ?」


「だって手袋じゃーん」


「どういう事ですか?」


「手をつなぐ時に手袋っておかしくない?」


「あ、ご、ごめんな・・・・・・じゃなくて」


私は慌てて右手にはめていた手袋を外して、バッグにしまう。


「あの、じゃあ、これで・・・・・・」


差し出した右手をジヒョク君がぎゅっと握ってくれた。


(あったかい・・・・・・)


「うん、これで大丈夫♪」


ジヒョク君が満足そうにうなずいた。


「あれ、見て!」


ジヒョク君が指差した方向には、キャラクターグッズが売っているショップがあった。


「わあ、かわいい!」


「ここで帽子やメガネ買ってさ、つけて歩こうよ!」


「わあ、私やってみたかったんです!でも・・・・・・たくさんあって迷っちゃいますね」


「ここはやっぱりクリスマスバージョンじゃない?」


「じゃあ、これは?」


私はトナカイのかぶり物を手に取り、ジヒョク君にかぶってもらう。


「どう?」


「似合います!似合いすぎです!本当に角が生えてるみたいです」


「ちょっと麗ちゃん、可愛い顔して結構キツイなー」


ジヒョク君が苦笑する。


「でも1つ目はこれに決定!今度は麗ちゃんの選んであげるね」


「楽しみです!」


「麗ちゃんはねー。そうだなー・・・・うーん」


ジヒョク君は店の中をあれこれ探して


「これ!」


持ってきてくれたのは、サンタクロースの赤い帽子。


「ほら、かわいい」


「似合いますか?」


「ばっちり!赤いコートとも合うし帽子についてる白いファーもマフラーとぴったり!」


「ホントですね。トータルコーディネートしてるみたい・・・・・!」


「あ、でも今日は俺が麗ちゃんのサンタだったんだ」


「じゃあ、交換しましょうか?」


「いやぁ、やっぱりトナカイが俺でしょ。麗ちゃんにソリを引かせる訳にはいかないからね!」


ジヒョク君はソリを引くしぐさをした。


「何ですかそれ~!」


もう、ジヒョク君といると笑ってしまうばかりで、お腹が痛くなってきちゃう。


「他にもお揃いの物、何か買おうよ!」


「はい!私もほしいです!」


私は、自分が素直な気持ちを口にしていることに驚いていた、

元々引っ込み思案であんまり自分の気持ちを表に出せるタイプじゃなかった。

出会った頃はメンバーといても緊張しすぎて縮こまっちゃうぐらいで・・・・・・。

でも、おしゃべり上手なジヒョク君と一緒にいると、いつの間にか思った事をそのまま口に出せるようになっている。


「麗ちゃんとお揃いなんてサイコー」


「何にしましょうか?やっぱりストラップとか・・・・・・」


「いやいや、ストラップはお揃いでつけてたらすぐにみんなにバレちゃうよ」


「ゴニルさんとかすぐに気づきそうですよね。髪型変えた時とか、いつも1番最初に気づいてくれるし」


「そうなんだよー!俺だって気づいてるのにさー!でも、いっつもゴニルには先を越されちゃうんだよ」


「ジヒョク君も気づいてくれてるんですか・・・・・・?」


「あったりまえじゃん!麗ちゃんが前髪1ミリ切ったってわかるんだから!」


ジヒョク君の言葉に、私はふふふ、と照れ笑いを浮かべた。


「そう言えば、ソンジェ兄さんも見てないようで意外に見てる時あるよねー」


「グァンスさんやソンモさんも結構鋭いですよね」


「グァンスは絶対にからかってくるな。で、ソンモがそれを見て『知ってたよ』って顔でニヤッとする」


「ユナクさんは気を使って気づかないふりをしつつ、ぜーったい気づいてるんですよね」


「って事は、全員にバレちゃうって事だー!」


「ははは、ホントですね!」


私達は声を合わせて笑った。


「みんなに見つからない物にしようよ」


「う~ん何がいいかなぁ」


「帰るまでに考えておいて、1番最後に買おうよ」


「はい、そうしましょう!」


なんだか心が浮き立ってくる。


「じゃあ、行こっか」


ジヒョク君は私の手を取った。


「あ、ジヒョク君、お金払ってないですよ」


「あ、そうか。俺、自分の事普通にトナカイだと思い込んでた」


「もともと頭から角が生えてたって事ですか?」


「さっき、麗ちゃんが言ったんでしょ?」


「そうでした!」


私達は2人でまた、ゲラゲラと大きな口を開けて笑った。


「あー、麗ちゃんといると楽しすぎる!」


「それは私のセリフです!まだ1つもアトラクションに乗ってないのに」


「ホントだ。まだ何も乗ってないじゃーん。早く行こ!」


ジヒョク君といると、自分が明るくて楽しい子になったような気になってくる。


(ジヒョク君の魔法にかかったみたい・・・・・・)


私はジヒョク君のパワーに改めて驚いていた。




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