「おぉ!いい匂い!麗ちゃん、お腹すかない?」


一通り、乗り物に乗った私達は、フードコーナーがいっぱいあるエリアに来ていた。


「はい。実は・・・・・・メリーゴーランド乗っている時にお腹がぐう~って鳴っちゃいました」


「聞きたかったなあ」


「いやですっ!聞こえなくてよかったってホッとしたんですから」


「麗ちゃんなら、お腹が鳴る音もかわいいと思うよー」


「もう。ジヒョク君ったらすぐからかうんですから」


「ホントにそう思ったのっ。あ、あそこのベンチ開いてる。座ろうよ」


(あれ・・・・・・?お店に行かないのかな?)


ジヒョク君は戸惑う私の手を引いて、木陰のベンチに連れて行く。2人並んで腰を下ろすと、ジヒョク君はごそごそカバンの中を探りだした。


「サプライズだよ!じゃ~ん」


中から出てきたのは、バンダナ柄のナプキンに包まれた・・・・・・


「お弁当です!」


「作ってきてくれたんですか?」


「うん。今日、朝5時に起きて作ったんだ。見て見て!」


お弁当箱の中からは、鮮やかなオレンジ色のご飯が現れた。


「キムチチャーハンだよ」


「わあ、おいしそう!」


「おいしいよ・・・・・・たぶん!」


「ありがとうございます・・・・・・」


感動しすぎて、言葉が出ない。


「あんまり辛くしてないから安心してね。麗ちゃん、辛いものそんなに得意じゃないもんね」


「そんな事まで覚えていてくれたんですか?」


(ダメ・・・・・感動して泣いちゃいそう・・・・・・)


「どうしたのー?」


「嬉しくて胸がいっぱいで・・・・・・」


「フフフ、喜んでくれて嬉しいなぁ。じゃあ一緒に食べよう。あーん」


ついついつられてしまい、口を開けると、ジヒョク君がキムチチャーハンを口に運んでくれた。


「ん・・・・・・おいひい!」


「おいしい?・・・・・・じゃあ、おいしかったなら最高の笑顔がほしいなぁ~」


「最高においしいです!」


「よかった!その顔が見たくて作ったんだー」


あまりにもおいしくて。私は自分の分をぺろりとたいらげてしまった。


「こっちにデザートあるよ。ほら」


小さなタッパーの中には、イチゴが詰まっている。


「かわいい!」


「でしょう?」


ジヒョク君はイチゴを1つつまんで、私の口に放り込んでくれる。


「すごいです、ジヒョク君。こんなにいたれりるくせり・・・・・・」


「いたれり、つくせり?聞いたことある。どう言う意味だっけ」


「ジヒョク君が、とっても行き届いたおもてなしをしてくれてるって事です」


「その通り!俺ね、デートする時は、何もかもやってあげたいって思うんだー」


「本当は女の子の私が作ってこなきゃですよね」


「じゃあそれは今度ね。今日は俺がサンタさんだから!」


「でも何だかしてもらってばっかりで・・・・・」


「うーん、じゃあ1つ、してほしい事があるんだけど」


「何でしょう!?お弁当のお礼に何でもしますっ!」


「俺の事、後ろからハグして」


「えっ・・・・・・ハグですか・・・・・・?」


「うん。ぎゅって」


「えっ、そ、そんな、無理です!」


顔が真っ赤になっているのが、自分でもわかる。


「えー、悲しいな。何でもしてくれるって言ったのに・・・・・・」


ジヒョク君がしょぼん、とうつむいてしまった。


「えっと、うーん・・・・・・・・・・・わ、わかりました」


私は勇気をふりしぼって立ち上がった。

ぎくしゃくしながらベンチの後ろに回る。

目の前には、ジヒョク君が座っている。


(恥ずかしいけど・・・・・・えいっ)


私は目をつぶってジヒョク君に抱きついた。


「ジヒョク君、ありがとうございます!」


もっともっと感謝の気持ちを伝えたいけど、これ以上言葉にならない。

しばらくそのままでいると、ジヒョク君の右手が伸びていき、また私の頭をぽんぽんと優しく叩いてくれた。


「ありがとう。最高の気分だよ」


「そんな・・・・・・。ジヒョク君がしてくれる事の方がずっとずっと・・・・・・」


また、泣きそうになってしまって言葉がでない。


「ずっとこうしてて欲しいなあ」


ジヒョク君がそう言ってくれたけど、さすがにもう限界。


「・・・・・・も、戻りますっ!」


またぎくしゃくとベンチに戻った。


「ちぇー。もっとぎゅってして欲しかったのにー」


ジヒョク君が残念そうにこちらを見つめる。


(でも、あれ以上抱きついていられないよ・・・・・・!)


「まぁ、いいや!まだチャンスはいっぱいあるし♪」


「へっ、チャンス!?」


「よーし、お腹もいっぱいになったし、午後の部、出発しようか」


ジヒョク君が私の言葉をさえぎって、お弁当箱を片付け始めた。


(チャンスって・・・・・・)


ジヒョク君の言葉が、ぐるぐる回る。

そんな私を尻目に、ジヒョク君は私のバッグを持って立ち上がった。


「あ、いいですよ


私が自分で持とうとすると


「大丈夫よ~あたしが持つからぁ~」


ジヒョク君はバッグをを掲げて、女の子みたいな仕草で笑わせようとしてくる。


「やだぁ、ジヒョク君ってば!」


その姿があまりにもおかしくて、私は吹く出してしまった。


「男性が女性の荷物を持つのは当然でしょ?あのカップルだって、男の人が女の人のバッグ持ってるよ。ほら、見てごらん」


ジヒョク君に言われて辺りを見回すと、確かに男の子が小ぶりなブランド物のバッグやファーのバッグを持ってあげている。


「こういうのは、男に任せておけばいいの!ね?」


「・・・・・・じゃあ、お願いしてもいいですか?」


「もっちろーん!ね、麗ちゃん、遠慮は絶対ダメだからね。これから長く一緒にいるんだから、遠慮してたら疲れちゃうよ」


「えっ?」


(今の言葉って・・・・・・聞き間違いじゃないよね・・・・・・?)


「じゃあ、午後はジェットコースターに並ぼうか」


「は、はい!」


私達は再び、手をつないで歩き出した。

私達はそれからまた150分、ジェットコースターに並んだ。

乗り終えるとさすがに疲れてしまい、私達は休憩することにした。

するとレストランの中でショーをやっていて、きらびやかな衣装を着たダンサーさんが楽しそうに踊っていた。


「すごい、すごーい!俺も参加したーい!」


ジヒョク君が楽しそうな声を上げると、ダンサーのお兄さんが近づいてきた。


「そこのイケメンのお兄さん!前に出てきて一緒に踊りましょう」


なんて声をかけられて、ダンサーさんと一緒にコミカルに踊り始めた。

観客席に大ウケ!

ダンサーの方達が外国人だし、ジヒョク君の事を知らないみたいだけど・・・・・実はヒットチャートをにぎわせている超新星のメンバーだって知ったらびくりするだろうな。


「あー楽しかった。汗かいちゃったよー」


「ジヒョク君、すっかり馴染んでましたね」


「そうなんだよー!お兄さん達と意気投合しちゃって盛り上がっちゃった!」


「ふふふ、周りのお客さんも大歓声でしたよ


話ながら外に出てくると、もう日も暮れ始めていた。


私達が次にどこに行こうか話していたその時・・・・・・


「あの、もしかして・・・・・・」


女の子が話かけてきた。

さっきのレストランで、私達の席の側に座っていた4人組だ。


「超新星の、ジヒョク君じゃないですか?」


「あ、そうです」


「やっぱり!私達、超新星の大ファンなんです!コンサートも行った事があって・・・・・・」

「会えるなんて夢みたいです・・・・・・!!」


この女の子は感激で半泣き状態だ。


(ど、どうしよう・・・・・・)


私がジヒョク君の前に出ようとした時、ジヒョク君がチラッと目配せをした。


「あの、握手してもらってもいいですか?」


「もちろん、喜んで!応援ありがと~」


ジヒョク君は本当に嬉しそうに笑いながら、快く握手に応じている。


(ジヒョク君、本当にファンの人達を大事にしてるんだなぁ・・・・・。女の子達もいい子そうだし、しばらくは見守っていよう・・・・・)


私はそろりと、ジヒョク君から離れた。

やがて、サインも、写真も、と女の子達が騒ぎ出す。

彼女達は本当に超新星が大好きみたいで、CDを持ってるとか、コンサートに2日間連続で行ったのだとか、興奮気味に話している。

サービス精神旺盛なジヒョク君は、ファンの子達のお願いに、全部応えている。

私はその姿を、少し離れた場所から見ていた。

すると・・・・・・


「お母さん、あれ、もしかして・・・・・・」

「あら・・・・・・ジヒョク君だわ!やだ、こんな所で会えるなんて」

「わぁ!ウソみたい。握手してもらおうよ」

「お母さん、一緒に写真を撮ってもらいたいわ。ああ、北海道から出てきて、ツイてるわぁ」


親子連れは嬉しそうに駆け出していった。

どうやら、超新星ファンの親子みたいだ。


(ふふふ、ファンの皆さんに囲まれてるジヒョク君、嬉しそうだなあ)


ジヒョク君を取り巻く人垣はどんどん大きくなっていく。

そんな姿を見ていると嬉しい。

でも、心のどかかで


(やっぱり、ジヒョク君は通り存在の人なんだ・・・・・)


と、感じて寂しくなってしまう。

私もアシスタントマネージャーからデビューが決まって、超新星のメンバーや周りからは「シンデレラストーリーだね」って言われるけど・・・・ 

長い間レッスンを積んで、異国に来て頑張っているジヒョク君とは全然違うんだ・・・・・・。

私は、さっきまでジヒョク君と座っていたベンチに腰を下ろした。


(しばらく時間かかりそうだな・・・・そうだ!この隙に、お揃いのグッズ、何にするか探してきちゃおうかな)


だって私ったら、クリスマスプレゼントも用意してないし・・・・・・。

私からもサプライズプレゼントしなくちゃ。

私は立ち上がって歩き出した。




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