私の目の前に現れのは、ジヒョク君だった。


「あ、麗ちゃんお疲れ様」


「ジヒョク君!お疲れ様です」


「明日オフになったんだってね~ はあ・・・・・」


「そうですね。大雪らしいですよ・・・・あれ?ジヒョク君、何だか元気ないですね?」


「あーわかる?さすが麗ちゃんだね・・・・」


「何かあったんですか?泣きそうな顔してますよね?」


大きな瞳をうるうるさせて、ジヒョク君は叫んだ。


「麗ちゃ~ん!お腹すいたよ~~~ッ!」


「えっ?お腹?なっ・・・・なぁんだ、お腹空いてたから元気がなかったんですね」


「今日ずっと仕事が押してて、ほとんど食べてないんだよ~、麗ちゃん何か食べる物持ってない?」


「えっ・・・・・私ですか?ごめんなさい、ないです・・・・」


「お腹空いた~、韓国料理食べたくなっちゃったよ~」


「韓国料理ですか?いいですねぇ」


「ねえ、麗ちゃん、今から一緒に韓国料理食べにいこ!」


「わっ・・・・・私も一緒にですか?」


「麗ちゃんもお腹空いたでしょ?」


「少しは空いてますけど、でもこの時間から食べたら太っちゃいそうで・・・・・」


「ロケでハードに動いてきっと痩せるから大丈夫だよ!」


ジヒョク君は私の手を引っ張る。


「もっ、もう、ジヒョク君たら急に元気になるんだから・・・・」


「まだ元気じゃないよ!ご飯食べないとパワーチャージできないんだよ。さ、行こう!」


私がジヒョク君に引きづられるようにしてドアの外に出て行こうとしたその時、誰かが横から声をかけてきた。


「あれ?ジヒョク、麗ちゃん・・・・・どこ行くの?」


「あ、ソンモさん!ジヒョク君がお腹空いたって言うので、今から韓国料理食べに行くんです」


「ジヒョク、また?」


「仕事するといつもよりお腹が空くんだよー」


「はぁ・・・・・全くジヒョクは食べ物の事で頭がいっぱいなんだから・・・・」


「そんな事ないよ!一生懸命仕事するからお腹が空くんじゃないかー!」


「またみんなから『ハッピーブタ』になったって言われちゃうよ?それで、今から2人でご飯を食べに行くの?」


「うん、麗ちゃんと一緒に韓国料理を食べに行くんだー!」


「へえ、いいね、楽しそうだ」



「あ、でも、俺は麗ちゃんと2人っきりで行くんだから、邪魔しないでよ!!」


ジヒョク君がソンモさんから隠すように、私をぎゅっと抱きしめる。


「ボク、まだ何も言ってないんだけど・・・・」


「ジ・・・・ジヒョク君たら・・・・・。ソンモさんはこれからどうするんですか?」


「ボクは・・・・海に行こうかなって」


「海?今行っても寒くて泳げないよ?」


「泳ぎに行くわけじゃないんだけど・・・・・」


「海ですかあ、素敵ですね」


「だったら、麗ちゃんもおいでよ」


「・・・・私ですか!?えっと・・・・・」


「ダーメ!麗ちゃんは俺と出かけるの!」


「ソンモさん・・・・ごめんなさい・・・・、先にジヒョク君と約束しちゃったし・・・・また誘って下さいね」


「そうか、残念。じゃあ、また」


ソンモさんは、足早に去って行った。


「麗ちゃん、ソンモと出かけるつもりなの?」


「あっ・・・・せっかく誘ってくれたのに一緒に行けなかったから、また今度って・・・・」


「えっ、ソンモと2人きりで出かけるのはダメだよ。その時は俺も一緒について行くからね!麗ちゃんと2人で出かけていいのは俺だけなんだから!」


ほっぺを膨らませて、ジヒョク君は訴えてくる。


(もう子供みたい・・・・)


私は思わず笑ってしまった。


「はい、わかりました、ジヒョク君も一緒に行きましょうね」


空腹でもう歩けないというジヒョク君と一緒に、私はタクシーに乗り込んだ。


(これからジヒョク君とご飯・・・・。楽しみだな・・・・・!どこに行くんだろう?)


「新大久保まで」


「・・・・・えっ、新大久保まで行くんですか!?」


「うん、すごく美味しい韓国料理屋があるんだよ」


「でもテレビ局から新大久保まで30分以上かかっちゃいますよ?お腹空いてるなら近場のほうが・・・・」


「ダメ!俺もうそのお店の味しか頭にないから、絶対新大久保に行くよ!」


「も・・・・もう・・・・、食べ物にこだわるんだから・・・・」


「だって食べるのと眠るのが大好きなんだもん。ふぁ~、眠い。昨日もあんまり寝てないんだ・・・・」


ジヒョク君は、大きなあくびをした。


「ね、新大久保着くまで寝てていい?」


「あっ・・・・いいですよ。着いたら起こしてあげます」


(そう言えば、昨日も深夜までレッスンしてたって言ってたっけ)


「よろしく!」


ぐらり、と上体を私の方に倒してきたジヒョク君の頭は・・・・・。

ごろん。

私のひざの上に・・・・・


「えっ・・・・!?どうしてこんな寝方・・・・」


「だって俺、座ったまま寝るの苦手なんだよー」


「しょっ・・・・しょうがないですね・・・・」


気にしていないフリをしたけれど、本当は足全体が緊張してしまう。

だって・・・・ジヒョク君の頬が、私の太ももの上に乗っている・・・。


「一度やってみたかったんだ~、ひざ枕」


「ジ、ジヒョク君、嬉しそうですね」


「うん、あったかくて気持ちいいよー。麗ちゃんのあし」


なでなで・・・・。

ひざ頭を大きな手のひらで、なでられる。


「・・・・きゃっ!」


「ごめん、びっくりした?何か丸くてつるつるしてて可愛いのがあるからつい・・・・」


「びっ・・・・びっくりしましたよ、も~っ」


私の方に頭を向けて、ジヒョク君は舌を出した。


「ジ、ジヒョク君たら、いたずらで、小学生の男の子みたいです」


「ひどいなー、俺はもう立派なオトナだよ」


「で、でも小学生の男の子はクラスの女の子にちょっかい出して遊ぶじゃないですか」


「俺は小学生じゃないよ!小学生みたいにスカートめくりもしないでしょー?あ、それとも、していいの?」


「だっ、ダメです!絶対ダメ!!」


「何スカート押さえてんの?麗ちゃんの方こそ可愛いー」


「そんなに笑わないで下さいよ。・・・・私だって、生まれて初めてひざ枕されて、どんな顔していいのか、わかんないんですから・・・・」


か細くなった私の声に、慌てたのはジヒョク君だった。


「ごっ、ごめん、ごめん。俺、からかいすぎた?すぎたよね?・・・・ごめん、少し寝るよ、ほんとに」


(はしゃいだり、イジワル言ったり、しょぼんってなったり・・・・・ジヒョク君は本当に見ていて楽しいな)


ジヒョク君は私のひざの上ですやすや眠っている。

いつの間にか、タクシーは新宿の街に入っていた。



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