ペーパーレス化が著しい昨今,はんこを押す機会がめっきり減りました。
お父さんの会社でも,地方の店舗でははんこがバリバリの現役ですが,店舗より支社,支社より本社という具合でペーパーレス化が進んでいます。
お父さんが我が社に採用された頃は,はんこのサイズまでうるさく言われたもので,新入社員は3分(約9ミリメートル)の丸でないとだめだと採用関係書類に書いてあるほどでした。
入社数日目の右も左も分からない頃に,同期の子が4分(約12ミリメートル)の認印を使っているのを見つけた古株の係長が,「おめー,何様のつもりじゃ!」と怒鳴った後,さらに人事の係を電話で呼びつけて,「おめー,何を教えとんじゃ。昔から新入社員のはんこは3分の丸と決まっとろうが!!!今どきはそんなことも教えんのか!!!」と,同期の子の眼前で怒鳴りつけていたのを思い出します。
ちなみに,お父さんは中学校の卒業式でもらった3分の丸のはんこだったので,叱られることはありませんでした(貧乏。
さて,そんなはんこ文化も風前の灯となりつつある今日この頃ですが,それでもはんこはしぶとく生き残っているところ,お父さんの偏見をつらつらと書き連ねてみたいと思います。
まず,はんこのサイズが大きい人がいたら,ひとまずは警戒した方がいいでしょう。
現在の三文判の主流は3分半(約10.5ミリメートル)ですが,特に高い役職にあるわけでもないのに,これを超える大きさのはんこを使う人にはとりわけ注意が必要です。
感覚的にですが,はんこのサイズは,自己顕示欲の表れだと感じています。
自分を実体以上に大きく見せたい人に限って,たいてい,大きなはんこを使ってるような気がします(※ただし,役職が高い人の場合は当てはまりません。)。我が社の社員の場合はある程度統制されているんですが,お客様が使われるはんこから,そういう印象を強く受けます。大きなはんこを使う人のビジネストークは,眉に唾つけて聞いた方がいいでしょう。
認印なら3分半,銀行印なら4分半(約13.5ミリメートル),実印なら5分(約15ミリメートル)を超えるサイズのはんこを使う人(男性の場合)がいたら,ちょっと距離を置いて,よくよく観察してみた方がいいと思います。
銀行印,実印について,どうして上記のサイズを基準にしているのかと思う人もいるかもしれませんが,野口さんでも樋口さんでも福沢さんでもいいので,財布からお札を一枚抜き出して,そこに押してある印影に物差しを当ててみてください。その上で,あなたが日本銀行総裁殿や,同銀行の発券局長殿のはんこより大きなはんこを使うことの是非を,御自分で考え,判断してください。
次に,書体ですね。
個人的には,認印なら,古印体の一択だと思います。他人(上司,同僚又は部下)が見るものですから,読みやすいのが一番ですね。ある書類を見た人が,その内容に同意した,または,承知したという表示ですから,はんこの書体が読めない(=誰が同意してくれたのか,承知してくれたのか分からない。)と,あなたの次に意思を表示する人や,起案した人が困ります。
そういう意味で,認印に判読しにくい篆書を用いる人は,かなり自己中心的だな…と感じてしまいます。
他方,可読性を気にする必要性の低い銀行印や実印であれば,篆書は謹厳実直で実に格好のいい書体だと思います。
同様の趣旨で,認印に印相体(吉相体)という,篆書の変形文字を用いるのはどうかと思いますが,この書体の場合,銀行印や実印にもどうかと思います。単に自己中心的という印象にプラスして,迷信深いか又は騙されやすそうな印象も受けます。
印相体は,篆書の末端を変形させて印の縁にまで到達させていますが,そもそも印は書であり,このような書は存在しません。さらにここに占いの要素を混ぜ込んで,いかにも歴史と伝統があるように見せかけているわけですが,実際はそんな歴史も伝統もありませんから,実質,新興宗教みたいなもんなのです。それでも開運とか,縁起とかを気にする方というのは,相当に迷信深い方だと思いますし,そんなことを意識もせずに,はんこ屋のセールストークに易々と乗せられてしまう方も,たいがい騙されやすいんだな…と感じます。
以上,ネット上でよく見かけるはんこ屋のセールストークとはだいぶ違う話だったと思いますが,はんこを実務でよく使う(使っていた)昭和の遺物の酔っぱらいの戯言です。参考までに。



