屋久島ストーリー 上陸 | 星の輪ネットワーク

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金 銀花の独学パン工房 .
山ぶどうから生まれた自家製天然酵母で焼くパンを楽しみ、緑に囲まれて暮らすワンダーフルな日々の出来事を綴ります。

九州自動車道を走りぬけ、(混んでたのよ、これがまた。それにトンネルばっかりでがっかり。)鹿児島に着いたのは夜10時半頃でした。

岡山で高速に乗ったのが午前11時近くでしたから、およそ11時間半高速道路上にいたことになりますね。

長い道のりでした。

鹿児島市内のコンビニでフェリー乗り場までの行き方を聞き、いわれたように走っていくと道はマイアミ通りへ、そして突き当りがドルフィンポート。

信号を右に曲がって、屋久島丸の停泊しているフェリー乗り場へと向かいました。

出航は明日の朝8時半なので、この辺りで今夜のねぐらを探したいところでしたが、パーキング場ばかりで適当な場所が見つかりませんでした。

けれども少し場所を変え、テントを張るのにいい場所を見つけました。

4人でテントをたてた頃にはもう深夜12時近くなっていたし、ずーっと車の中に閉じ込められていたせいで体中縮こまっていたので、どこでもいいから足伸ばして体を横にしたいと心底思っていたのです。

ですから皆、横になったとたんに眠ってしまったようでした。

朝起きてみると、東に桜島が見えました。

暑かったので開けっ放しにして寝て、テントの中に桜島の灰が吹き込んでいたのには驚きました。
初め砂かと思ったけど、ビーチも無いのに砂が来るはず無いね、ということで、きっと灰に違いないと結論づけたのです。

しかしあの灰、なかなか大変ですね、洗濯物とか困るだろうな。あんなに降っちゃあね。

朝の身支度をしていると、犬を連れたおじさんが朝の散歩にやってきました。
どちらからとも無く挨拶を交わすと、おじさんが「どちらへ行くの」と尋ねるので「屋久島へ行くんですよ」と応え二言三言言葉を交わしました。

私たちの車のナンバープレイトを見て、遠くから来ているのでちょっとビックリしていました。

おじさんは「それじゃ気をつけて」といいながら犬と一緒に波止場の方へ歩いて行きましたが、それから10分程して車で戻ってくると、手に缶コーヒーを持っていて、「車の中にあったからどうぞ・・・」と私たちのほうに差し出すのです。

私たちもなんだか鹿児島の人の人情に触れたような気がして、嬉しくなって遠慮なくいただきました。

朝から良い気持ちになり、フェリー乗り場へ向かい、午前8時過ぎには船上いて、いよいよ旅のメインの始まりです。

左手に桜島を見ながら、波一つない鹿児島湾の海上をゆっくりと進んでいくと、今度は右手に開聞岳が、その優美な山姿を現して来ます。

開聞岳は何年も前に飛行機の窓から見て、その美しい姿と、海からまっすぐに山が始まるというそのロケーションに感嘆したことがあるのです。

それ以来、いつか登ってみたい山の一つになっているので、今回こんなに近くでこの山と対面できて、それだけでも感激でした。

開聞岳を後ろに見送って、船が湾から出ると、波が少し立ち始めていました。

小笠原諸島の辺りから、東へ抜けていってしまうはずの台風の影響がこんなところまで出ていて、波が立っているらしいのです。

確かに東の方角は、空に重そうな雲が垂れ込めていて、天気が悪そうに見えました。

船が湾を出てすぐに西の方に海からそそり立っている高い山だけに見える島がみえました。その他にも小さい島影が見え、この辺りにこんなに一杯島があることを、私は少しも知りませんでした。

鹿児島港を出て4時間、船はどんよりと重たそうな雲を頂いた峰みねに出迎えられて、ついに私たちは、一ヶ月に三十五日雨が降る、と言われる屋久島、宮之浦港に、上陸しました。

これからどんな冒険が待ち受けているか、楽しみで一杯に膨らんだ私たちのハートに、歓迎の雨がそっと降り注いでいる屋久島の午後でした。