すっかり満タンになった胃袋が少しでもこなれてくれる事を願いながら、府前路をひたすら孔子廟方面へと歩く。


*前回の台湾滞在記はこちらからどうぞ!


この辺りは台南でも観光名所が密集しているスポットであり、食の名店・人気店も点在しているのであまり土地勘が無い私もよく通るエリアである。


司法博物館や…


↑裁判所の歴史に関する体験型展示があるらしい。


2019年に誕生した台南市美術館2館を通り過ぎたら…


↑美しくモダンな白い建物の2館。

後ほど訪れてみる予定だ。


孔子廟エリアが間も無く現れる。


孔廟エリアと言えば私にとっては大好きな莉莉水果店の存在を外せないが、生憎まだ開店前(台南の果物店は遅めのオープンで夜遅くまで開いている所が多い)な上、こちらも例の法則が発動(?)し、本日水曜日は定休日であった。


という事で、どちらにしても今回は莉莉(店名も可愛くて好き)には行けない。



今はまだ満腹だったが、食後の小休止も兼ねてコーヒーが飲みたかった。

Googleマップで現在営業中のコーヒーショップを検索すると、ありがたい事にすぐ近くに何店舗かヒットした。

今いる場所から最も近い店に行ってみる。


府前路と交差する南門路沿いに見つけたその店は、想像していたより年季が入った良い雰囲気のお店だった。


…うん?

艾維斯珈琲?何て読むんだろう?



…と、思った瞬間に店内でにっこり微笑むエルヴィス・プレスリーの顔に気付く。


そっか!エルヴィスコーヒーか!!


*「艾維斯」は実際は「アイウェイスー」と読むらしい。


店内で読書をしていた年配の女性に「注文いいですか?」と言う気持ちを込めながら「珈琲?」と訊くと、メニューを見せてくれた。

ラテを注文し、お会計をしてしばし待つ。


↑何となく癖でいつもラテを注文してしまう…。

後で気付いたのだが、「Cookies&Coffee」って書いてある!

クッキーも食べたかったなぁ(満腹だったのでは?)。


歩道上に設えられた座席でラテを頂く。

うん、朝の台南。こういうのも良いな。



通りを行き交う人々や車やバイクなどを眺め、美味しくラテを頂いていると、何とおかみさんはいきなりシャッターを閉じて店を閉めてしまった。

私には「ここで飲んでて良いからね」という素ぶりを見せ、去ってしまった。


ありゃりゃ。これも台南か。


さて、この後はどうしよう。

実はこの近くにどうしても行ってみたい店があったが、そこは9時30分からの営業だった。


ただいま9時。

という事で、来た道を少し戻って9時オープンの愛國婦人館に行ってみる事にした。



実は、こう言った場所にはそんなに興味がない私である。

しかし、この愛國婦人館に併設されたギフトショップには台南土産がいろいろと売られているとの事だった。


↑こういった台南限定土産もいろいろ売られているのである。


夫に台南でしか買えないらしい「あるもの」を頼まれていたのだが、愛國婦人館のギフトショップでも買えるようだったので来てみたのだ(それにトイレもお借りしたかった)。


*この旅での購入品は後日別記事にてご紹介します。


ギフトショップにて目当てのものを購入し、さてトイレを…と思ったところである事に気付く。

トイレは2階にしかなく、2階に行くには靴を脱いでスリッパに履き替える必要があるのだった。

さすがに、厚かましくも無断でそんな事は出来ない。


という事で、受付にいらっしゃった職員の方に「Can I see 2nd floor?(2階を見学させてもらって良いでしょうか?)」と訊く。

すると快く「Sure!」と応じてくださり、スリッパを勧めてくださった。


まさかトイレに行きたいだけ、なんて素ぶりは一切見せず、優良な観光客として2階に行く手段を取ったのである…。


↑2階にトイレが…。


結構ぎりぎりだったので(何が?)、2階に上がるや否やとにかく先にトイレへと駆け込んだ。



しかし、なぜかトイレットペーパーホルダーが個室(2ヶ所あった)の外についている。

「何でやろ?」と思いつつ、個室に入って納得。

中にはトイレットペーパーが無いのである。

慌てて個室を出てペーパーを貰い、再び中へ。

しかし、いくら頑張っても鍵が掛からない。

(誰も居なかったし)諦めて、内側からドアノブを抑えながら用を足した…。


用を済ませ、落ち着いた私はせっかくなので2階を見学させてもらう事にする。


ものすごく不純な動機で見学させてもらったが、この愛國婦人館はすごく胸にじんと来る建物だった。


ここは日本統治時代に建てられた施設をリノベーションしたものである。

リノベーションされているとは言え、とても美しく保存されていた。

スリッパを脱いで大広間に入らせて頂いたのだが、畳の上を歩いた時、なぜか感動して涙が出てしまった。


いや、「なぜか」では無いな。

当時の建物をこんなに良い状態で保存してくださっている事に感動したのである。



木製の格子から眺める窓の外の風景も、おそらく当時とは違うものだろうけど、でもきっとこんな風に台南の街が見えたんだろうな、と思った。



「愛國婦人会」とは傷病兵の救護や軍人遺族の援護を目的とする婦人団体だったそうだ。

台湾在住の日本人女性の社交の場を提供したり、台湾人女性の入会勧誘をしたりしていたそうなので、当時の女性たちはこちらで賑やかに交流していたのかも知れない。

宿舎も併設されていたとの事なので、一時的にこちらで不安な時間を過ごしていた軍人遺族の方もいらっしゃったのではないだろうか。



本当に不純な動機で2階の見学を希望してしまったが、そこでは思いも寄らない経験をする事が出来た。


これまで「日本統治時代」に関する書籍を色々読んで来たが、当時のものに実際に触れる事がこんなにも衝撃的だとは思いもしなかったのである。

時間にするとほんの僅かなひと時だったが、立ち寄ってみて本当に良かったと思う。


このエリアにある代表的な歴史的建築物は、やはり孔子廟(17世紀に建築)だろう。

しかし、古都台南には比較的近い過去の歴史を歩く事が出来る場所もたくさんあるのだという事を今更ながらに思い知らされるのであった。