よかった! 死んじゃうのかと思った! 30分以内に来てくださいなんて驚いちゃったじゃないの~~~!!
最悪の事態を想像していた私たちは息子の穏やかな顔つきを見て安心し、病院を後にしたのだけれど、それでも、呼吸器にまで麻痺が進行したことで、これから先が長くなりそうだと覚悟を決めた。
しかし、覚悟は決めたけれど、「これから先」がまさか、あんなことになろうとは考えもしなかった・・・・。
翌日、面会時間を待って、ICU(集中治療室)に入る前に荷物や上着をロッカーに入れたり、靴をスリッパに履き替えたり、手洗いやマスクの着用やらの決まりごとを経て息子のベッドまでたどり着いた私は息を飲んだ。
息子が目をつぶっている。
眠っているというより、これは『意識不明』っていう感じ!?
いったい、どうしたの?
「目も開けられなくなっちゃったんですか?」
「そうですね・・・。」
息子のベッドまで案内してくれた看護師さんは気の毒そうな顔で頷いた。
「どうして・・・どうしてこんなことに・・・」
私は息子のベッドの脇で呆然としていたらしく、担当医が来たのに気づかなかった。
医師は胸のポケットからペンライトを取り出すと、息子の目を無理やり開け、ペンライトを当てて左右に振った。
「うん・・・反応はないね。」
反応がない!?
医師が今、息子にやっているのは、まさにドラマでよく見かける病室シーンで横たわっている患者のまぶたを開けてペンライトを左右に振り、そして、「ご臨終です。」となる一連の動きだ。
しかも、反応がないということは瞳孔が開きっぱなしってこと。
瞳孔は開き、自発呼吸はなく、体はピクリとも動かない。
「生きてるんですか!?」
思わず聞いてしまった私に医師は
「生きてますよ。 意識レベルもそんなに下がってないから、反応がなくても声をかけてあげてください。」
「?????」
瞳孔が開きっぱなしで息もしてなくてピクリとも動かないのに意識レベルが下がってないってどういうこと?
要するに呼吸器や瞳孔に至るまでの全身の筋肉という筋肉は麻痺しているけれど、脳の働きは正常で耳は聞こえているだろうということ。
あ、それと心臓も動いている。
恐るべし心筋!
いや、でかした!
とにかく、息子は生きていて、耳は聞こえるはずだから体の回復を促すためにも話かけろ、と、そういうことらしい。
それから毎日、私は息子のベッドの脇に座って何の反応もしてくれない息子に話かけたり、まだ息子が話せる時に私に手足のリハビリをしておいてくれと言っていたので、点滴の針が入っていない腕や足を曲げ伸ばししたりマッサージをしたりしていた。
ここから先は私に日にちの感覚がなくなりますので、順不同になるかもしれませんが思い出したことを書いていきます。