意識が戻らないまま義母は救急車でこの地域で1番大きく設備の整っているH病院に運ばれた。
救急車には義父と私が乗り、夫と息子は後から車で。
救急車の中で私は少し落ち着きを取り戻した。
とういのも、私は救急車に乗るのは3回目だから。
2回は自分が、後の1回は仕事先のお客さんの付き添いで乗ったことがあるので。
案外、救急車というのは乗り心地が悪い。
けが人や重症の病人を乗せるのだから中はあまり揺れずにサスペンションもしっかりしててガタガタ道にもちゃんと対応してるのだろうと勝手に想像していたのだけれど、実際に乗ってみると、これが縦に横にとす~んごく揺れる!
救急車とは、スピードを出して走る車なのに運転席と助手席以外にちゃんとしたシートが無いので、付き添いで乗る場合、どこかにしっかり掴まってないと上に下に右に左にと飛ばされそうになるという結構、危ない乗り物(苦笑)。
その掴まっていないと飛ばされそうになってしまう救急車の中でも隊員の方は義母の心臓マッサージを続けてくれていた。
それはH病院の救急センターに着いてもずっと続けられた。
地域1、2を争う大病院の診察時間をとっくに過ぎたガラ~ンとした広い廊下に置かれた長椅子に私と義父はただ黙って座っていた。
時折、開く救急センターの扉の向こうで今度は医師たちが義母の心臓マッサージをする姿が見える。
・・・これは義弟夫婦(夫の弟)にも連絡しなければならない、急いで連絡しなければならない・・・。
私が義弟夫婦に電話しに行き、戻って来ると私がいない間に先生が義父のところに来たらしい。
私「どうだって?」
義父「いろいろやってみたけど心臓は動かないらしい。もう少ししたら機械も全部止めます、って。」
私「・・・。」
「あーぁ・・・ダメかぁ・・・・。」
義父の声が広い廊下に響いた。