消防車!?
私、火事ですって言っちゃったの!?と家の前で慌てふためいていた私に消防士さんが言った。
「大丈夫ですよ、後ろから救急車が来ますからね。」
そう、消防車の後ろから救急車が現れた。
家の前に停まった消防車と救急車の中から救急隊員がワラワラと降りてきた。
どうやら、義母の状態は救急車に乗れる隊員の数では対処できないと判断されたらしい。
何人の隊員が来たのだろうか?6人?7人?
今、考えればあの時、来た隊員の全員が大柄だったわけでもないだろうが、極度の緊張状態を強いられていた私にはどの人の背中もやけに大きく頼もしく見え、素人の私たちがかろうじて繋いでいた義母の命を彼らにバトンタッチできたことにホ~っと胸を撫で下ろした。
「イチ、ニ、サン、シ・・・」と義母胸を押し、口に当てたマスクからシュコ~と酸素を送り、また「イチ、ニ、サン、シ・・・・」と胸を押す。
隊員が義母に呼びかけて意識を確認する。
意識は戻らない。
担架が運び込まれる。
それは、いつもテレビの中で繰り広げられている光景そのもの。
義母を彼らに任せたことでホッとして傍観者となった私には目の前の光景が現実のことではなく、テレビドラマのワンシーンのように見ていた。
でも、テレビの中の出来事みたいなのに、隊員たちが人工呼吸をし、呼びかけている相手はお義母さん・・・何でお義母さん?
一体、目の前で何が起こっているの?
私の頭の中は混乱していた。
どれくらいの間、家の中で処置をしていたのだろうか・・・。
隊員たちが懸命に人工呼吸や心臓マッサージをしてくれているにもかかわらず、義母の指の先が次第に白くなって行った。
(お義母さんは助からないかもしれない・・・。)
混乱した頭の隅っこの方を目の前の現実が氷のクイになって冷たく刺さった。