
【護身】
去年の9月、ボクシング東洋太平洋ミドル級のチャンピオン竹迫選手の妻が、赤ちゃん連れ去りの現場に居合わせ、犯人を「護身術」で制圧したと言うニュースが話題になりました。
赤ちゃんを守る為に、果敢に男に立ち向かっていったこの女性の勇気には頭が下がる思いですが、もしこの犯人が刃物を持っていたらと思うとゾッとします。
私の教室でも身を守るにはどう動けばいいか?の練習をよくしますが、「護身」の難しさは、その時になってみないと相手がどう動くか解らないと言う点にあると思います。
それを踏まえて考えると、よく動画等で流れている「護身術」には、本当にこんな技で対応出来るのかと言ったものが少なくありません。
本来「護身術」は力の弱い者の為のものでなければなりません。
興奮した者の腕を「こうしてああして」など出来るはずもなく、また考えてる余裕などもそこには無いはずです。
空手の「捌き(さばき)」と
暴れる者を取り押さえる「制圧」は、共に相手の死角を取る動きが共通しますが、
私はこの「捌く」練習をするたびに必ず思い出す言葉があります。
《技は力の中にあり》です。
相手に打ち負けないパワーがあって、はじめて人を制圧する事が出来るのです。
「小よく大を制す」には、余程の「感」と「タイミング」がそこには必要なのだと言う事を肝に命じておかなければなりません。
最も基本的な「身の守り方」は「逃げる事」です。
しかし逃げる為には「不審者」を見つけだす「目」と普段からの「心構え」が必要です。
あらゆる人の中から不審者を見つけ出すのは、そう簡単ではありません。
何故なら彼らの多くは、見た目が普通だからです。
安倍元総理の襲撃犯も、あんな大それた事をする人間には到底見えませんでした。
警察官が不審者らしき者を職務質問する際のポイントはいくつかあるようですね。
「挙動」
「目線(そらす)」
「黒っぽい服装」
「帽子、サングラス」
「汚れた靴」
「大きなカバンや紙袋」 などです。
私も過去に一度だけ職務質問された事があり、その時はリュックを背負い黒い帽子に黒いジャンパー姿でした(その日は、すぐ近くで事件があったそうです)。
今から30年程前に、一人旅をしていた女子大生が、京都の山中で野宿をしていた男に金品目当てで殺害されると言う悲しい事件が起こりました。
被害者の女性は空手を10数年修行しており、二段の腕前でした。
にもかかわらず簡単に男の手に掛かってしまったのは、男が不審者に見られないように地元民を装って女性を安心させたからでした。
悪い奴らはあの手この手で近づいてきます。
笑顔で気軽に話しかけてくる見知らね人にも注意が必要です。
そのような場面に出くわした時は相手の「目」をよく見ましょう。
今から悪さをしようとしている者の「目」は多分笑っていないはずです。
子供の身を守る為に作られた標語はいくつかあります。『いかのおすし』もそんな中のひとつです。
ついて「いか」ない
誘いに「の」らない
お「お」きな声を出す
「す」ぐ逃げる
誰かに「し」らせる
「大きな声を出す」は簡単そうに思えますが、実際は恐怖と緊張で声を出せない事の方が多いでしょう。
普段から声を出すことが大事です(空手の気合いは、いざと言う時の練習にもなる)。
もし大きな声が出ない場合は
手を叩いたり、物を鳴らしたりして出来るだけ多くの人に一大事を知らせるようにしましょう。
悪さをしようとしている者は「音」や「目」に異常なほど敏感なのです。
「すぐ逃げる」も、ある程度普段から練習しておかないと、いざと言う時に動けません。
どんなものにも「基本」はあります。
それを知ってるか知っていないかで差が出るのです。
逃げる際はいきなり背を向けて走り出すのではなく、「後退り(あとずさり)」をしながら相手とじゅうぶんな距離(4m以上)を確保し、一気に反対方向に走り出すと言う動作が基本になります。
すぐに捕まえられない距離が4mなのです。
何よりも相手に「捕まれない」ことが大事です。
万が一「捕まってしまった」場合は、声や身体や物を使って音を出しながら足をバタバタさせたり、腕をグルグル回したりして出来る限り抵抗しましょう。
相手の足を踏みつけたり、腕に噛み付いたりするのも簡単な反撃方法です。
抵抗する事で相手を興奮させる事があるかもしれませんが、無抵抗のままより抵抗した方が被害に合う率はグンと下がると言われています。
日本における犯罪件数は暮らしが豊かになりはじめた1980年代から次第に増え始め、2002年頃にピークを迎えます。
その後は「防犯カメラ」や「防犯ボランティア」の増加など地域の『目』によって、犯罪は少しずつ減っていき、現在ではピーク時から比べると約7割も減ったそうです。
ちなみに、街中に「防犯カメラ」が増えるきっかけとなったのは、1968年に起きたあの「三億円事件」が始まりだと言われています。
最近多発している各地で起こった強盗事件は、人々の「防犯」への関心を更に高めたようで、自宅用防犯カメラの売れ行きも伸びていると聞きます。
人の「目」や防犯カメラの「目」、そして「見てるぞ!の目の絵」やステッカー。
今や街は「目」で溢れています。
目を合わせるのが苦手な人は結構います。
目と目が合うと、思わず目を伏せてしまう人も少なくありません。
そういった日本人の気質が「お辞儀」の風習に繋がっていったのかも知れませんね。
空手は「向かい合いの武道」なので相手の「目」を見る事から始まります。
しかし「目」を見る事に慣れてしまって、普段でもあらゆる「目」を見る癖がついてしまい、おかげで子育て中のカラスに追いかけ回されたり、肩をいからせた怖いお兄さんに唾を吐かれたりと色んなことが起こります。
武道家の皆さん、くれぐれも注意して下さいね(笑)
織田
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