
【女性空手家】
10月25日は「空手の日」です!
今から86年前(昭和11年)のその日は沖縄空手界の大家が一堂に会し「座談会」が開かれ、それまで「手(てぃー)」や「唐手(トゥディ、からて)」などとバラバラに呼ばれていたカラテの名称を「空手」に統一した日なのです。
座談会では名称の他に「型の統一」も取り上げられたようですが、間もなく始まる戦争によって話は進展せず、現在に至っています。
実はこの座談会が催された頃には、空手普及の為に本土に行っていた船越義珍を中心とした学生グループがすでに「空手」の名称を使っており、座談会の席でも取り上げられた「空」の字の評判が良かった事もあって、結果的には本土の「空手」を追認する形となったのです。
1929年に慶應大学が発行した体育冊子の中で船越氏は「空手の空は仏教の色即是空(しきそくぜくう)、空即是色(くうそくぜしき)からヒントを得て付けた」と語っています。
この記念すべき「座談会」から63年後の1999年には、日本で初めて「女性空手家」だけによる空手座談会が開かれました。
この座談会には、琉球古武道の世界で初の女性師範になった新城ヨシ子さんらが顔を揃えました。
また、この座談会に参加した古武道清流館館長、知念みさ子さんの道場には80才で空手を習い始め、83才で初段を取られた女性のお弟子さんがいて、生涯空手道の見本とされました。
「女性空手家」の登場は以外に古く、すでに1800年代の終わりには3名の女性空手家の名が空手年誌に登場します。
その初期女性空手家のひとり与那嶺ツルさんは、すでに15才にして男顔負けの剛力と無敗伝説をもち、のちに首里手の名人、松村宗棍(まつむらそうこん)の妻となる方です。
女武士(イグナブシ)と呼ばれた真栄城初枝さんは、あの大ヒット空手映画「ベストキッド」に出てくる「師匠ミヤギ」のモデル、渡口政吉(とぐちせいきち)さんに剛柔流の道場で型(形)を教えていました。
ちなみに渡口政吉氏(沖縄剛柔流尚礼館)は菅元総理(日大空手部)の師匠にあたる方です。
この時代の女性空手家達は同時に琉球舞踊の踊り手でもありました。
「武と舞」の一致点を見出だし、足腰の鍛練として空手を学ぶ方が多かったようですね。
女性空手家が一気に増えたのは1960年代に入ってからです。
どの流派も土台が出来上がり、それぞれが特色を打ち出しつつ活発に大会が開かれていった時代です。
その頃の大山道場(極真会の前身)には渡辺美智子さん(初代師範代渡辺一久氏の妹)が入門し、日本舞踊の出来る実戦女性空手家として、当時のマスコミを賑わせました。
1987年には女性空手家による「空手と琉球舞踊」の併用道場「空手舞踊研究所」が誕生し、それから数年後には空手専用の初の女性道場主も誕生します。
道場主の大城信子さんは沖縄小林流(しょうりんりゅう)で空手を学び、18年の修行ののちに道場を開いたそうです。
2015年にはアルゼンチンでの空手の普及活動が評価され、アルゼンチン上院から「栄誉賞」が贈られました。
女性だけの空手道場「上地流アゲダ女性道場」は全国でも珍しく会社の中に道場があります。
道場主の町田初子さんは夫が経営する会社内に1999年道場をオープンしました(夫はその10年前に社員道場を社内に作っています)。
女性が空手に興味をもっても「男の世界」と言ったイメージが覆い被さり、習うのをためらってしまったり、逆に断られてしまったりと言った声が身近にあるのを知り、「女性による女性の為の女性だけの空手道場」を夫の協力のもと、社内に立ち上げたのです。
今にわかに流行りつつある「女性だけの空手道場」の先駆けですね。
珍しいと言えば、私が若い頃に通っていた道場(芦原道場堺支部)は会社のビルの屋上にありました!
どういった経緯で屋上に建ったのかは今となっては謎ですが、屋上のプレハブ造りの空手道場は当時かなり珍しかったと思います。(現在、正道会館館長の石井和義氏が極真会館芦原道場を関西一円に広げました)。
女性空手家が全日本クラスの大会に登場するのは、フルコン派では極真会館が分裂した1996年以降のことで、新極真会、極真会館松井派ともに、それぞれ「全日本女子、国際女子空手道選手権大会」
「世界女子空手道選手権大会」の名で開催されました。
それ以降、新極真会では第38回全日本大会(2006年)から、極真会館松井派では第29回ウエイト制全日本大会(2012年)から女子の部が同時開催されています。
伝統派(全空連)では第3回全日本大会(1973年)で型(形)部門に初めて女性空手家が登場します。
組手の女性部門開設はそれから8年後の1981年の第9回大会からです。
伝統派の全日本大会の型(形)部門で2連覇を達成し活躍した真野あずささんは現在沖縄で劉衛流(りゅうえいりゅう)空手「あずさ龍鳳館」の館長をしています。
沖縄出身で同世代の女性空手家には、新極真会で唯一の女性支部長の砂川久美子師範がいます。
最近は柔術の大会などでも活躍されていますね。
一風変わった女性空手家と言えば、極真松井派の「文学少女から世界チャンピオン」になった江口美幸さんがいます。
運動不足解消の為に軽い気持ちで始めた空手で、あれよあれよと言う間に世界チャンピオンにまで登り詰めた文化系女子です。
他にも新極真会の世界大会で日本人女性初の優勝に輝いた将口恵美さん、伝統派の全日本型(形)部門で5度優勝の宇佐美理香さん、同じ全日本型(形)で7連覇した清水希容選手や組手部門で4連覇した植草歩選手など大会で活躍した女性空手家は数多くいます(古武道の大会でも女性が活躍しています)。
最近では新極真会の全日本大会で、久保田道場の久保田千尋選手が3連覇を達成しました!
2018年には、アパレルブランドの「ジュン」が武道をコンセプトにした日本発のフィットネス女性専用スタジオ「ビーアイエフ バイ ナージー」を原宿に立ち上げ、公式アンバサダーに宇佐美理香さんを任命しました。
今後も益々「女性空手家」の活躍に目を離せませんね。
『花咲く空手教室』
すみだ生涯学習センター
ユートリヤ内
織田