【歩行と運動】
上野の博物館に展示されている320万年前の猿人「ルーシー」は、その骨盤の形状や土踏まずがある事などから、直立二足歩行をしていたと考えられています。
ちょうどルーシーが生きていた時代あたりから、私達の祖先は食料を求めて「安全な森」から少しずつ「危険な草原」に出ていったのでしょう。(ルーシーは木から落ちて死んだ)
私達の祖先は非常にゆったりとしたスピードで長い年月をかけて、その動作は進化していきました。
「登る者」から「歩く者」そして「走る者」へとなっていったのです。
人類と類人猿が共通の祖先から分かれて、100万年が経ってようやく直立二足歩行が出来るようになり、更にそこから400万年かけて走れるようになっていったようです。
更に走りながら「投げる者」に進化するには150万年が必要でした。
この気の遠くなるような「進化のリレー」のおかげで、現在私達は生まれて数年でこれらの事がすべて出来るのです。
そしてこの「登る」「歩く」「走る」「投げる」は食べて生きていく為にはすべて必要なものばかりなのです。
直立二足歩行は身体の構造を少しずつ変えていったようです。
まず「背中」は柔軟になり、「膝」は大きくなり、「大腿骨」はいい塩梅に内側に向きを変え、前に進む為に「おしり」は発達し、しゃがんだり、ジャンプしたり、走ったりする為に「アキレス腱」は強固になっていったのです。
そして、歩くことで頭が上の方に位置した事によって、「声」がはっきりと発音できるようにもなりました。
私達の最大の特徴である「歩行」と「会話」は平行して発達していったようですね。
歩いて、走って、石や槍を投げる「狩り」の中で互いにコミニュケーションを取りながら「会話」が少しずつ発達していったのでしょう。
「運動と健康」の関係を明らかにしたのは、第二次世界大戦後のイギリスでした。
同じバス会社で働く運転手(動かない人)と車掌(よく動く人)約3万5千人の健康調査を長期にわたり行ったのです。
その結果、運転者は車掌よりも2倍、心臓発作を起こすことがわかったのです。
今では適度な「運動」や「散歩」をすれば、心臓発作や脳卒中の危険性が30パーセントも減少することがわかってきました。
1日にたった10分活発に動くだけで1.8年、60分以上活発に動けば4.2年も寿命が延びるとも言われています。
しかし私達はあまり歩きませんし、あまり運動もしません。何もかも満たされているからです。
私達の身体は、旧石器時代に設計された身体のまま、この飽食の時代を生きています。
私達の祖先は少ない食料の時代に生き延びれるよう、身体に「脂肪」を蓄えられるように身体を進化させたのです。
少ない食料の為に一日に50㎞も歩くのだから太ってる暇などありません。
現代人が1㎞2㎞歩くだけでは、体重もなかなか落ちない訳です。
私達の身体の仕組みからすると、たった100グラム(おにぎり一個分)体重を落とすのに12㎞も歩かなくてはならないそうです!(一万歩は約8㎞)
一方で私達は何もせず、ただ息をしているだけでも相当のエネルギーを消費しているようです。
「心臓」「脳」「腎臓」はそれぞれ1日に400kcal、「肝臓」は200kcal消費するそうです。
ものを食べるのに250kcal、
1時間立ってるだけで110kcal消費しています。
「生きる事とは食べる事」なのです。
世界的に見ると、どの国も(特に先進国)過体重は深刻な問題で、アメリカでは全国民の70%の人が体重オーバーで、そのうちの38%が肥満だと言われています。
日本は食べ物に恵まれてるのか、あるいはよく動く人が多いのか、肥満が非常に少ない国のひとつです。
「脂肪」は身体の中に4種類あり、そのうちの「中性脂肪」と「コレステロール」が「生活習慣病」に深い関わりがあると言われています。
身体の脂肪のほとんどは「中性脂肪」で、その多くが食べ物(動物、植物、魚類)由来です(肝臓でも少し作られている)。
いわゆる「脂肪」は1gにつき約9kcalのエネルギーを作ったり、体温を保ったり、皮下脂肪として内蔵を守る役目があります。
エネルギーとして使われなかった「脂肪」は、それが皮膚の下にいけば「皮下脂肪」になり、肝臓にいけば「脂肪肝」になり、血液で増えれば「動脈硬化」の原因になる訳です。
「コレステロール」は約7割が肝臓で作られていて、血液によって全身に運ばれ、余ったものは、また肝臓に戻ってくる仕組みです。
この「運び役」を「LDL(悪玉コレステロール)」と呼び、「戻す役」を「HDL(善玉コレステロール)」と呼んでいるのです(血液検査の項目では、その値は常に注目されています)。
「善と悪」が分かれているのは、その仕事ぶりにあるようです。
せっせと回収するものは(善玉)、運んで置き去りにするものは(悪玉)だと言う訳です。
どちらも身体にとっては大切な仕事なのですが、そのバランスが問題で、回収役(善玉)が少なく運び役(悪玉)が多ければ、悪玉コレステロールが血管に溜まっていき「動脈硬化」の原因になるのです。
また、中性脂肪が増えてしまうと善玉コレステロールが少なくなる事もわかっています。
遥か昔「脂肪」によって助けられた私達は、今「脂肪」によって苦しめられているのです。
『花咲く空手曳舟教室』
ありがとうございました。
押忍 織田