【目】
頭部にある器官は「映像」「音」「味」「匂い」などの情報を受けとる役割があります。
そうした情報の80%が「目」から得た情報です。
「目」は身体のバランスや姿勢制御にも深くかかわっており、人とのコミュニケーションにおいても重要な役目を担っています。
武道にも「一眼(いちがん)、二足(にそく)、三胆(さんたん)、四力(しりき)」という言葉があるくらい、目の働き(気配も含めて)が大切だと考えられています。

目はよくカメラにたとえられますよね。
カメラのレンズにあたるのが「水晶体」、絞りにあたるのが黒目のまわりの「虹彩(こうさい)」、フィルムにあたるのが「網膜」で、レンズキャップとシャッターを兼ねてるのが「まぶた」です。
まぶたから白目の部分を覆ってる膜を「結膜」、黒目を覆ってる膜を「角膜」と言います。 
この角膜がピント合わせの3分の2を担っています。

ものが見える仕組みは、まず前方の部品(水晶体と角膜)が通過する像をとらえ、目のうしろにある壁(網膜)に映し、「視細胞(光受容体)」と呼ばれるものが、それを電気信号に変えて「視神経」を介して脳に伝えてるのです。

実際に「見える」という仕事を担っている部分は、網膜に位置する「中心窩(ちゅうしんか)」と呼ばれる大きさ0.3㎜ほどの、ほんの一点だそうです。
その一点から少しでもずれると「視力」は低下すると言われています。

人は一日に150g~300gほどの涙を作っているそうです。
目の部品を淀みなく動かす為に、常に涙は出ていて、そのまま鼻に流れ込んでいます。
しかし、鼻に排出される量より作られる量が上回れば目からこぼれ落ちます。
私達には身体の機能的な涙(潤滑剤、目に入ったゴミを流す等)以外に感情的な「涙」があります。
他の動物には見られない人間特有のものですが、何故人が泣くのかは、まだはっきりと解明されていないようです。
一説には、泣いたあとに訪れる「喜び」に似た感情を誘い出す為ではないかとも言われています。

私達の「目」は約300万~800万の色を見分けられるそうです。
私達が見る世界は「青」「緑」「赤」の三色に分けられていますが、鳥やは虫類はもう一種類「透明(しがいせん)」が加わります。
その世界はライトアップされたようにカラフルで綺麗なんだそうですよ!(羨ましい!)

網膜には「視細胞」と呼ばれる細胞がぎっしり並んでいて、その数は両目合わせて2億個ほどあると言われています。
視細胞は大きく2種類あり、そのひとつが三色の色や形を認識する、主に「明るい場所の視力」を生み出す細胞で、もうひとつは、主に「暗い場所の視力」を生み出す細胞です。
このふたつの細胞の割合は意外にも、「暗い場所の視力」を生み出す細胞が全体の9割を占めているそうです。
かつて私達が夜行性だったことが、よくわかります。

明るい場所から暗い場所に入ると、最初は真っ暗ですが、時間が経つと少しずつまわりが見えてきます。
これらの現象は、ふたつの視細胞がゆっくりとチェンジしていってるのです。
ちなみに「海賊」は、よく片目に眼帯をしていますが、暗い船室に入った時に少しでも目を暗反応にならしておく為のものではないかと言われています。

日本人の視力の平均は「0.5」で、8割以上の人が「1.0」未満だそうです(スマホやパソコンによる影響)

目を動かさずに見える範囲を「視野」と言いますが、私達は普段、この「視野」はじゅうぶん広いと感じています。
しかし、今読んでるブログの、ある文字に視線を固定して、まわりの文字まで読めるか?となると、まったくぼやけて読む事は出来ませんよね。

実は「視野」は非常に狭い範囲なのです。
どんな瞬間でも完全に焦点を合わせられる範囲は、伸ばした手の親指の爪ほどの広さしかないそうです!
「目」は絶えず動いているので、広い範囲が見えてるように思えるのです。

目の奥にある「網膜」には、脳に信号を伝える「視神経」が貫いていて、そこは「盲点」と呼ばれていて、本来暗くて見えない部分です。
この「盲点」は、えんぴつの太さぐらいあると言われています。
えんぴつの太さ分の視野は本来常に欠けているものなのですが、何ひとつ欠ける事なく私達がものを見れるのは、「脳」が欠けた部分を、まわりの景色に合わせて埋めてくれているからなのです。
つまり私達が見ている、かなり大きな範囲は「脳」の想像物なのです!

私達が揺れる車の中で本を読んだり、ランニングしながら標識の文字を読めるのは「前庭動脈反射」と言われる機能のおかげです。
耳の奥にある「前庭」や「半器官」と呼ばれる平衡感覚をつかさどる器官が、頭の動きを感知して、瞬時に眼球を逆方向に移動させているのです。
鏡の前でゆっくりと顔を左右に動かしてみると、自然と目が反対方向に動くのかわかります。
この目の機能のおかげで、空手の激しい動きの中でも、ぶれずに相手の姿をとらえられるのですね。

健康な人の目は網膜上で焦点を結んで、ピントの合った映像が見られます。
網膜の前で焦点を結んだものが「近視」、うしろで結んだものが「遠視」と呼ばれています。
「乱視」は黒目を覆っている角膜の炎症などによる「歪み」が原因で、一部が歪んで見えます。
「白内障(はくないしょう)」は加齢によって水晶体がにごる事で、目がかすんだり、光がまぶしく感じるなどの症状が起こります。

網膜を貫いてる視神経に異常が起こり視野が狭くなるのが「緑内障」です。
網膜の一部が剥がれた状態が「網膜剥離」で、目への衝撃や加齢、身体の病気などによって起こります。
「老眼」は加齢によって水晶体が固くなり、近くや遠くを見る為の「厚み」の調節が出来なくなって起こります。

サバンナの遊牧民「マサイ族」は視力がすぐれている事で有名ですが、その視力はなんと!「10.0」近くもあると言われています。
その世界はどんなものかと言うと、地面に立てて置かれたパスタの本数を14階の高さから一本一本数えられるそうです!(見えすぎは争いの元ですね)。