【姿勢】
空手の「立ち方」は、すべて攻防時における瞬間的な立ち方であり、それぞれ「突く」「引き込む」「投げる」「蹴る」動作を切り取ったものです。
例えば「後屈(こうくつ)立ち」は技を受けた一瞬の前足バックステップの形であり、相手を掴んで引き込む体勢でもあります。
「猫足立ち」は後屈立ちの受けから前蹴りにいく寸前の立ち方であり「騎馬立ち」は相手を掴んで投げた瞬間の立ち方です。
また、すり足で安定して動く事の出来る最小限の歩幅の立ち方が「三戦立ち」です。
さらに「組手立ち」は前に行くにも、後ろに下がるにも、左右に動くにも、そして立ち止まるにも最適な立ち方です。

空手は様々な立ち方で「基本稽古」や「移動稽古」や「型」などを行いますが、その一番の目的は「身体の使い方を学ぶ」為です。
例えば「前屈立ち」は必ず後ろ足のカカトは床に着けますが、もしカカトを上げて正拳突きをした場合、腰回りの筋肉がまったく使われていない事がわかります。
「立ち方」の稽古は身体の使い方を学ぶと同時に空手に必要な筋肉をつける為でもあるのです。

私達の空手の「自然体」と呼ばれる基本的な立ち方は「不動立ち」です。
「構えありて構えなし」と言われる立ち方で、咄嗟の時にも対処できる構え方です。

街中での「構えありて構えなし」の立ち方は「オープンガード」と呼ばれるもので、足は軽く前後に開き、両手のひらを相手に突きだします。
「落ち着いて下さい!」のポーズです。
この構えは一見威圧的に見えないので、相手側のスイッチも入りづらいし、伸ばした手で相手との距離をコントロールできます。
一方、相手に対して斜めに構える立ち方は、自分の急所を相手から遠ざけるという利点はありますが、相手からすれば後ろを取りやすい構え方なのです。
街中での究極の「構えありて構えなし」は「考える人」です!
相手と向き合った時、考える素振りをしながらアゴやボディを守るのです。
アゴを守っている「考える」前手は防御にも攻撃にも使える優れものです。

武道においては「居着く」こと(同じ場所にとどまる)は即、負けにつながるので空手の立ち方には「休め」はありません。
「なおれ」も「休め」も、すべて「不動立ち」なのです。

地域や時代にもよりますが、学校での昔の「休め」は左足を斜め前に出し、重心は右足の立ち方でしたが、今の子供達の「休め」は左足を横にずらして、真ん中に重心を置くのだそうです。
ちなみに左足を斜めに出すのは日本の海軍式で、横に出すのはイギリスの軍隊式だと言われています。
今でも学校の仕組み(運動会の行進、整列、ラジオ体操、給食の配膳)や学校の造りそのものに軍事教育の頃の名残が数多く残っています。
武道も学校教育の一環として取り入れられていましたので、その影響を多分に受けています。

一番上の絵は「気を付け」の姿勢と「良肢位(りょうしい)」の姿勢です。
左側が関節に角度がつかない「気を付け」で、右側が程よく角度がついている「良肢位」です。

「良肢位」とは筋肉や関節に負担がかからない楽な「姿勢」のことで、その関節の角度は、病気や怪我で身体が不自由になっても日常生活の動作には支障のない角度であると言われています。
関節の角度はそれぞれ、手首や膝関節を少し曲げ、肘は90度、指はテニスボールを軽く握る程度に曲がっています。
誰かの寝姿をチェックしてみて下さい。
必ずこの角度に近い姿勢で眠っているはずです。

座り姿勢の「良肢位」は椅子に奥深く腰かけて骨盤を立て、膝と腰の角度はそれぞれ90度に保ちます。
背骨のS字を崩さずに、いかに楽に座れるかがポイントです。
「立ち姿勢」での「良肢位」は今の子供達の「休め」に近いものでしょうね。
そこでのポイントは、やはり「足底」の意識です。
「足底」の感覚は「体性感覚」のひとつと言われており、簡単に言えば「自分の人差し指は目を閉じてても触れる」とか「目に見えない身体の中の痛い部分がわかる」とか、そういった感覚の事です。

空手でも「足裏で床をつかむように!」だとか、あるいはバレエでは足の指で物を掴むのを練習したりだとか、
「足底」の意識は非常に大切なのです。        足底を意識する事でバランスはもちろん、スムーズさにもつながります。
特に「拇指球(ぼしきゅう)」(足裏の親指の付け根)を意識する事でパンチやステップのキレやスピードも違ってくるのです。

ちなみに「土踏まず」があるのは人間だけです。もし「土踏まず」がなければ私達は走ったり歩いたりするだけで、かなりの衝撃が足の裏にかかると言われています。
あまり歩かない人は土踏まずがない「扁平足(へんぺいそく)」になりやすいんだとか。














今週もありがとうございました!  押忍 織田