
【重心】
イスから立ち上がる時、いちいち「よし!今から立つぞ。」なんて思いながら立たないですよね。
でも立ち上がる時に、誰かに「頭を動かさずに!」と突然言われたら、たちまち立ち上がれなくなります。
なぜなら私達は無自覚に頭を前に突き出して腰を浮かせて立ち上がっているからです。
普段私達は意識しないで身体に備わっている「軸」を巧みに使い、絶妙なバランスで体重を移動させながら動いているのです。ただ歩くだけでも私達は上下に5cm、左右に3cm重心移動させながら歩いているのです。
人間の身体をパーツに分けて考えると「重心」の位置はそれぞれ「眉間の奥」「みぞおち」「太ももの真ん中」にあり、全身での重心位置は「おへその下」にあります。
その位置は「丹田(たんでん)」と呼ばれる場所と重なっており、上から順に「上丹田」「中丹田」「臍下(せいか)丹田」と呼ばれています。
丹田とは「気力の集まる場所」と言われていて、意識しなければ存在しませんし、お腹を割っても見つかりません。
空手の型の終わりに「なおれ」をしますが、その時両手を重ねて額から正中線(中心線)を通り、下腹部の前までゆっくりと両手を下ろす動作があります。それは「上丹田(眉間)」に集まった精気を沈めながら、お腹の底に落としていく「気沈丹田(きちんたんでん)」と言われる所作なのです。
正中線は「中心軸」と重なっており、最も力が入る場所で、最も安定した場所でもあります。
空手の「受け」は、相手の技に力負けしない為にも、必ず正中線の近くで受けなければいけません(上段受けは側軸で受ける)
空突きや空蹴りをする時も正中線に向けて技を繰り出すと全身に力が込められます。
私達は握手する時も、雑巾を絞る時も、おむすびを握る時も無意識に「重心」が並ぶ「正中線」の近くで、それらを行っているのです。
重心の位置を確かめる方法は立った姿勢で足を動かさずに身体を前に倒していきます。
バランスが崩れる寸前で「グッ!」と力が入る場所があります。
そこが「重心」です。
この動作は崩れる寸前に足を一歩出すと、簡単に体重移動を実感できます。
空手の蹴り技は蹴り足の反対側に体重を乗せなければ蹴ることが出来ませんが、この時の動きはできるだけ小さくしなければいけません。相手に技を見破られてしまうからです。
身体を傾けて「重心」を移動させるのではなく、脇腹やお腹の筋肉を使って「重心」を移動させるという身体操作が必要なのです。
イメージとしてはお腹の中に風船が膨らんでいて、風船の端をつまむと反対側が膨らみ重量も移動するといったイメージです。先人が考えた、あらゆる身体操作は、まるで「科学!」ですね。
野球やバレーボール、卓球の選手が球を追う際の動き出しは、すべて身体から動く「重心移動」です。
更にもっと言えば動く時は身体のバランスを崩しながら動いているのです。
ジャッキー・チェンの映画「酔拳(すいけん)」などは、まさにそれのお手本のような動きです!
へそ下の「重心」は男女で微妙に位置が違うようで、女性の方がやや下側に、そして奥側にあるそうです。
ちなみに「重心」が安定している体型は細身の方だそうで、筋肉マッチョの人は「重心」が身体の端っこに移動しやすい体型でバランスが悪いのだそうです。
では最も「重心」が安定している体勢は?
それは………寝ている時です。

出場される皆様頑張って下さい! 押忍 織田