今回は、眼瞼下垂の手術後に修正をした症例をご紹介します。
下の写真で、術後に修正を要した患者さんの経過をご覧ください。
術前は重度の眼瞼下垂の状態でしたので、瞼縁切開で挙筋腱膜の内角・外角を切開し、腱膜を前転固定しました(詳しい手術記事の説明記事はコチラ)。右の写真は術中に座位になり、左右のバランスを確認したところです。この時点では、眼の開き方に目だった左右差はありません。
ところが、術後10日目に抜糸に来院された際に左右差が出ていることに気が付きました。
術後3週間の時点でも、患者さんの左目(写真向かって右)の開きが大きく、力の入れ方によっては、いわゆる「白目」が一瞬見える状態でした。眉の位置にも左右差が出ています。左上眼瞼の過開瞼(瞼が開きすぎ状態)と考えられました。
術後4か月経過を観察しましたが改善がないため、4か月を過ぎてから修正術を行いました。
腱膜固定を2mm後退させ、挙上の具合を弱める手術を行いました。
写真はまだ修正術後1か月のものですので、最終結果ではありませんが、左右差は改善しています。
最終的には、患者さんにはご満足いただける結果となりましたが、私の中では、術中の記録を見直しても、今回の左右差の原因が分かりませんでした。そこで、松尾形成外科・眼瞼クリニック(HPは⇒こちら)に見学にお邪魔した際に、松尾先生のご意見をうかがってみました。少し専門的な話になってしまい恐縮ですが、松尾先生のご意見では、過開瞼となった左側のミュラー筋の力が強かったのだろうといことでした。それが術前に予見可能だったかについては、脳波計を使用すれば分かったであろうということでした。では、そのミュラー筋の強さを勘案して左の挙上の程度をどのくらいにしておくかについては、松尾先生は術中の挙上具合ではなく、下方視で判断されているとのことでした(確認はしていませんが、ミュラー筋を弱める手技を加えられるかもしれません)。これに関しては、経験を要するとしか言えないことがわかりました。
このブログでもたびたび書いてきましたように、瞼の挙上には、神経支配の異なる2つの筋肉、眼瞼挙筋とミュラー筋が連動していること、そこに若干、前頭筋の影響も加わることから、術後の瞼の上がり具合を事前に完全予測することは非常に困難です。特に、術前に左右差がある方は術後にも左右差が出やすいと感じています。経験値を上げていくことで、修正を要する頻度を下げていく努力をしていくしかありませんが、その可能性をゼロにすることはとても難しいと思います。
今回も、貴重な学びの機会とブログへの掲載を快諾してくださった患者さんには、心より感謝申し上げます。