眼瞼下垂の中でも、最も多く、誰でもなる可能性があるのが、『腱膜性眼瞼下垂』です。
そこから様々な症状が引き起こされうる疾患です。
その機序を解明して、眼瞼下垂の新しい治療法と概念を確立されたのが、
信州大学名誉教授(現在は松尾形成外科・眼瞼クリニック院長)の松尾清先生です。
その松尾先生が『腱膜性眼瞼下垂』ついて詳しく書かれたご著書がこちらです。
実に様々な症状が起こりうる腱膜性眼瞼下垂ですが、松尾先生のご著書から、簡単にその一部を抜粋して紹介します。
腱膜性眼瞼下垂の模式図をご覧になりながらお読みください。
①上眼瞼挙筋が強く収縮→目の奥の痛み、群発頭痛、眼精疲労の可能性
挙筋腱膜と瞼板がはずれているので、挙筋の力が伝わりにくくなります。力を伝えようと挙筋が頑張るために、眼の奥が痛くなったり、群発頭痛が起こったり、眼精疲労が起こる可能性があります。
②ミュラー筋が代わりに頑張る→ミュラー筋を支配する交感神経が過緊張になる、噛みしめが起きる
挙筋の力が不十分なので、もう一つの筋肉であるミュラー筋が代わりに頑張ろうとします。ミュラー筋を支配しているのが、交感神経なのですが、ミュラー筋が頑張ることで、交感神経が刺激され、交感神経が過緊張の状態になります。交感神経が過緊張になると、不安感を覚えたりする方もいます。また、交感神経過緊張の状態が長く続くと、自律神経のバランスがくずれて、うつになる方もいるようです。
もう一つ、ミュラー筋の働きを助けるために起こることが、奥歯を噛みしめることや舌で前歯を押すことなのだそうです。歯が骨に付着している部分に、『歯根膜』というものがありますが、奥歯を噛みしめたり舌で前歯を押すと、この歯根膜にあるセンサーが刺激され、固有知覚という刺激が脳に入り、交感神経の中枢が緊張します。この交感神経の緊張が、同じく交感神経に支配されているミュラー筋の働きをアシストするのだそうです。あきにくい瞼を開けるために、ミュラー筋をはたらかせようと、奥歯の噛みしめが起こり、ミュラー筋をしらないうちにアシストしているのです。そして、咀嚼筋が原因の頭痛が発症したり、顎関節症になる方もいるようです。
③眉を挙げる前頭筋、頭皮を後ろに引っ張る後頭筋を収縮させる、顎を挙げる→頭痛、肩こりが起こる
瞼が持ち上がらないのを助けるために、おでこの筋肉(前頭筋)が頑張ることで、額にシワが入ります。また、その前頭筋につながる、首の後ろにある後頭筋も一緒に収縮することで、筋緊張性の頭痛や肩こりが起こる可能性があります。
ご紹介した症状は、松尾先生の理論のほんのごく一部です。
さらに詳しくお知りになりたい方は、ぜひ松尾先生のご著書をお手に取ってみてください。