最近Amazonプライムで見てる2000年代のアニメたち | 雪花の風、月日の独奏

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以下、最近見てる古い作品。いずれ劣らぬ名作。

 

 

 

 

 

『忘却の旋律』

錦織博×榎戸洋二という強力タッグが送るバトルファンタジー。

2004年で一、二を争うくらい好きな作品で、演出も舞台設定もシュールでトリッキーだけど、物語自体は正統派な少年の冒険成長譚。

昨今はあまり見かけなくなった「視聴者の解釈に任せる」「キャラの名前や名称、映像にメタファーが隠されている」タイプの作品で、キャラクターの会話ではなく、映像で制作陣の伝えたいことを見せてくれる。
長谷川眞也氏による煽情的なキャラクターデザインと小林七郎氏による赤が鮮烈な背景が印象的。

 

現実や社会システムを「モンスター」に、夢を見続ける心を「メロスの戦士」に見立てた物語構造は、夢を諦めて唯々諾々と現実社会に従う大人と、正論を突き付けられても世界を貫く矢のように自分の道を突き進む若者の対峙を連想させる。

若い時分に視聴するよりも歳を重ねてから見たの方が感じ入ると思う。

 

ソロと「忘却の旋律」の関係性がすごく好きで、最終回で二人の手がすり抜けてしまうシーンは、いま見返しても号泣する。

シナリオ面でも演出面でも、本作お得意のメタファーでも今のところベストワンなのは、第5部「迷宮島」編。

1話で犠牲になったクラスメイト・ケイの「僕も宝物が捨てられるようになりたかったな――」の台詞は胸をえぐる。

 

一番啞然としたのは第8部「圏外圏」編。もう好きにしてくれ。

 

 

 

 

 

 

『シムーン』

西村純二監督の最高傑作。

「少女時代」を永遠のものにしたかった少女たちの物語。

 

世界に子供は「少女」しか存在せず、いずれは「男」か「女」かを選ばなけらばならない。

そんな世界で唯一選択しないでい続けられる方法――それは、「巫女」になって「シムーン」と呼ばれる機体を操り、他国との戦争に勝ち続けることだった。

 

戦争ものかと思いきや、主に描かれるのは思春期の少女たちの葛藤というマクロな世界で、ちょっとした仕草や台詞からキャラの心情が汲み取れる映像の見せ方が素晴らしい。

物語序盤の時点から何となく負け戦になることを匂わせているので、戦争の行く末よりも、少女たちが大人の都合で戦争に駆り出されたり、和解のために「巫女」を止めることを強いられたりする中、彼女たちが最終的に何を捨てて、何を選び取り、何に希望を託していくのかに関心がいく。

 

終盤は、大人の思惑で選択を強いられてしまったパライエッタたちと、仲間の希望を一身に背負って自由になれる空へと旅立っていった主人公アーエルたちの対比が切ない。 

けれども、性別を選択した元少女たちも永遠に向かって飛んで行った少女たちも結局は同じで、そのワルツは決して永久に続かない。

モラトリアムの終焉を予感させる閉幕は寂寥感に満ち満ちている。

あと、成人男性役にまで女性役者を宛がった徹底ぶりがすごく良かった。

 

 

 

 

 

 

『GUNSLINGER GIRLS』(1期)

戦うための道具として改造された少女たちと、少女たちの監督役となった男性陣の悲哀を描いた重厚なヒューマンドラマ。

自分は断然1期派。さすが『さくら』の浅香監督。

 

余計な台詞を語らせず、キャラクターの表情や挙動で心情を表したり、「兄妹」の関係性の変化をちょっとしたカットでアピールしたり、さりげない演出に目が離せない。

まるでシックな劇画を見ているような気分にさせられる。

ただ、一回見ただけでは気づけないことも多いので、周回視聴がおススメ。

2話の天体観測のシーンは、映像美の面でも「兄妹」の関係性の切なさを象徴する意味でも名場面。

暗いのが苦手な人には4話のトリエラお当番回がおススメ。ゲストキャラ役の長嶋雄一さんの名演が光ります。

 

 

「兄妹」ごとに異なる関係性も、本作の見どころの一つ。

メインキャラのジョゼ&ヘンリエッタ組は、核爆弾。

ひと回り年上の男性に恋する少女と、その想いを受け止めきれない大人の「兄妹」。

一見順調な関係性を育んでいるようだけど、ヘンリエッタは恋慕でジョゼのために死体を増やしているので、一歩足を踏み外すと奈落の底まで真っ逆さまに落ちていきそうな危うさがある。

一方、ジョゼは本当にスマートでかっこいいし、女の子の視点からすると理想の男性だけど、彼が本当に「ヘンリエッタ」を見ていたかどうかは怪しい。

終盤のゲストキャラ、エルザ・ラウーロ組の末路こそが彼らが辿る道だと思えてならない。

 

ジョゼの兄・ジャン&リコ組は、ビジネスライク。

少女を仕事道具としか思わないジョンと、薬のせいでそれを疑問に思わないリコ。

本作で一番悲しいコンビ……と見せかけて、実はジョンさんにもリコに対する想いがあったことが後の原作で明かされてる。

くそう!!ジョンさんのデレ期!!!!アニメで見たかったよ…。

今見返すと、このコンビが徹頭徹尾最も幸福な関係性を築いていたような気もする。

「自分が不幸である」ことに気が付かせない配慮も、一種の愛情なのかもしれない。

 

ヒルシャー&トリエラ組は、見ている方が微笑ましくなる関係性。

聡明だけど思春期の複雑な感情を持て余すトリエラは、ヒルシャーに対してつっけんどんになってしまうし、生真面目なヒルシャーもそんなトリエラにどう接するべきなのか分からず頭ごなしに叱ってしまう。

でも、ちゃんと腹を割って話してみれば、互いに互いを嫌いになれない自分がいて、その感情も決して不愉快なものじゃなくて…。

おおお、こそばゆい!

恋かどうかはさておき、個人的には、本作における相思相愛コンビはこの二人だと思ってます。

 

ラバロ&クラエス組は、年齢差もあって親子と形容するのがふさわしいかな。

出世のための道具、仮初の職場だとしか思っていなかったラバロさんが不器用ながらもクラエスと絆を育んでいく様子には心が温まった。

クラエスを救おうとして彼は帰らぬ人になってしまったけれど、あの日の約束はクラエスの中にしっかりと根付いている。

 

マルコー&アンジェリカ組は、ジョゼ組がたどるかも知れない可能性。

どんなに愛情を持って接しても、少女たちは傷つき、壊れ、薬や後遺症で大切な記憶をこぼしていく。

自分は覚えているのに相手は覚えていない――最初の愛情が深ければ深いほど、その反動は大きい。

それでも、最期の最期に大好きなマルコーさんに物語を聞かせてもらったアンジェリカは、きっと幸せだったに違いない。