【ゲーム感想】『徒花異譚』エンディングへ…(全章ネタバレあり) | 雪花の風、月日の独奏

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『徒花異譚』、全てのエンディングにたどり着いたぞーーー!

嗚呼、なんて美しい近代純愛浪漫譚なんだろう…。

 

 

御伽話を舞台にした和風幻想ファンタジー……なんだけど、

実は、病床に臥す愛する人がこれ以上苦しむことのないようその人の「夢」の中に優しい世界を作ろうとする、一途な愛の物語でもある。

この感じ…。やっぱり『フェアリーテイル・レクイエム』を思い出す…。

 

 

物語の完成度や美しさ、グラフィックを含めた世界観も好きなんだけど、主人公の黒筆と白姫、そして、二人の大元となった「少年」と「少女」の関係性。

これがまた心をくすぐるのですよ。

作中での明確な言及はないけど、衣装と舞台設定から察するに時代は明治~大正当たり。

近代浪漫が好みの人なら絶対刺さると思う。

 

身分違いの恋という主題は、王道中の王道なので真新しさはないけれど、

この作品の良いところは、その身分の差による障害を成り行き任せで乗り切るんじゃなくて、

主人公コンビの片割れが「したたかに」立ち回り、「図太く」「ずる賢く」なって、幼い頃の淡い恋を叶えるべく、長い年月をかけて想い人のところに帰ってくるという展開。

これが非常に良い。

大方の「身分違いの恋」って、何か事件が発生して、それを解決して、褒美みたいな、いわゆる棚ぼたの形で恋愛を成就させるものが多いので、『徒花異譚』の計画的な恋愛成就は、新鮮味があって良かった。

ただ、計画が長期的過ぎて、帰ってきたら悲劇が待っていたわけで、その辺りは、「妹」にも言われてた通り、詰めが甘いなあ…少年。

しかし、その詰めの甘さすら愛おしい。

 

あと、各御伽話を修正する時にお披露目される白姫の「お色直し」も本作の見どころ。

この設定はアニメ向きだと思う。

 

では、各章の印象をば。

 

 

(1)花さかじいさん

 

 

・春の章。柔らかな雰囲気の桜の里で繰り広げられる「死と再生」の物語

・白姫に「生も死も一度限りのもの」という現実を思い起こさせるための装置

・『徒花異譚』という物語の導入部にふさわしい

・改めて読み返すと、なかなか残酷だな…「花さかじいさん」…

・白姫のお色直し装束は「桜」。着物から帯、かんざしまで桜尽くしの薄紅散華

・お色直しから絵草紙の修繕までの過程が二人の結婚式にしか見えない。

・夫婦の共同作業、良い…すごく良い…

・バッドエンドの印象が鮮烈

 

 

(2)浦島太郎

 

 

・夏の章。抜けるような空と底なしの深海の青が対照的な「永遠と刹那」の物語

・白姫に「楽しい時間は永遠はなく、いつかは終わりを迎える」ことを知らしめる装置

・妖艶、情念、純情の要素を詰め込んだ乙姫様は、本作のマイヒロイン

・乙姫様の中の人の演技も素晴らしい

「首を立てにしか触れない奇病か……!」に笑った

・この章ぐらいから黒筆の過保護が加速。可愛い…

・白姫のお色直し装束は「空と海」。目に鮮やかな二つの「青」の競演。

・知る人ぞ知る浦島太郎の異本がハッピーエンドの創造につながっていてニヤリ

・まさか乙姫様が教えてくれたあの一文字が終盤の白姫救済に繋がってくるとは…

 

 

(3)うりこ姫とあまのじゃく

 

 

・秋の章。紅葉の里。のどかな世界で繰り広げられる「嘘と本当」の物語

・本作で最も背景CGが美麗と断言しても過言ではないほど

・うりこ姫のこましゃくれたキャラクターが良い味を出してる

・感情の起伏に合わせてぴょこぴょこ動くうりこ姫のアホ毛が可愛い…

・白姫のお色直し装束は「錦」。赤と金を基調にした着物に、折り鶴と楓の飾り、彼岸花のかんざし

・あまのじゃくの大量出現は、下手なホラーよりおっかなかった。BGMとの相乗効果

・「何事もやってみなくちゃ分からない。嫌な生活の中にも意外な楽しみが待ってるかも?」

 

 

(4)桃太郎

 

 

・冬の章。凍てつく白の世界にて真実が晒される「始まりにして終わり」の物語

・白姫がすべてを思い出すトリガーとなるエピソード

・プレイしてて一番きつかった章。「救いは、救いはどこに…?」と何度ヤキモキしたことか

・徒花郷の真実、黒筆の正体、白姫の「現実」など、全てが詳らかになる

・「少女」と「婚約者」の関係が潔く、「少女」と「少年」の関係性とはまた違った趣深さがある

・桃太郎さんは早々にリタイアしてしまって悲しい…と思いきや、まさか…

・黒筆を力と変えた白姫の装束が喪服にしか見えなくて落涙…

・他の三章でどの選択肢をチョイスしたかによって、二度三度絶望させられる

・選択肢、「そっちの方向性」だと思わなかった。その辺りも『フェアレク』を思い出させる

 

 

(5)エンディング

 

現エンド、夢エンド、バッドエンドの3種類。

現エンドの幕引きが理想的、夢エンドの幕引きが現実的という対照な結末になってる。

現エンドはベタといえばベタだけど、

これまので登場人物が主人公に力を貸してくれる筋運びには、目頭が熱くなった。

夢エンドは、とにかく「切ない」の一点。

青年は筆を折らずにそのまま歩み続けることができるのだろうか。

 

バッドエンドも一見の価値あり。

最もやるせないエンディングで、「少年」と「少女」の関係の終わり自体もやるせないけど、夜行列車の道中、自分から物語をせがんだにもかかわらず、「紳士」の言葉に耳を傾けていたはずの旅客が無責任にもうたた寝をしていたこと、そして、旅客の最後の独白が「紳士」の結末をより悲劇的なものに仕上げている。

 

一番好きなエンディング?

もちろん現エンドに決まってるじゃないか!!!

黒筆&白姫、「少年」&「少女」に幸あれ!!

 

 

多くのプレイヤーさんは、とっくにクリアしてるかと思うけど、

のんびり世界観に浸ってプレイしたい人種のワタクシは、

購入から10日目でようやくエンディングに到達。

トータルプレイ時間は、15時間くらいかな。

昨今のノベルゲームに比べればボリュームは控えめ。

でも、お値段に反比例して、内容が濃厚だったのでとてつもない満足感が味わえた。

ついでに、また『フェアリーテイル・レクイエム』もプレイしたくなった。

 

ともあれ、スタッフの皆さま、演者の皆さま、

「ありふれた人たちのありふれた一生」を描いた美しい絵草紙をありがとうございました!!

 

 

――――ところで。

 

 

件の「紳士」に「あの死に神に比べれば可愛いものです」と言わしめた二人の後日談は

 

のちに発売予定のFDで補完ということでよろしいでしょうか(ぇ

 

みんな見たいよ…………祝言に至るまでの過程…。

 

 

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評価 (★:1点、5点満点)

 

 シナリオ     ★★★★★

 キャラクター  ★★★★★

 システム面   ★★★★☆

 グラフィック   ★★★★★

 音楽       ★★★★★

  文章の精緻さ ★★★★★  

 総合       ★★★★★

 

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★2020/9/12追記

 

noteで、徒花異譚について素晴らしい感想を挙げられている方がいらっしゃったので、

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