「日本語歌詞つきの音楽に狭く浅く接しているブログ主が、心に留まった歌詞を紹介し、思わぬ魅力やそこに秘められた意味を浮き彫りにしたい」シリーズの15回目です。
( 著作権については、『こちら』に基いています )
今回は、大貫妙子さんの 「テルミネ」という曲です。
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リリース時期:1981年
初めて聴いた時期:1995年
作詞 : 大貫妙子
作曲 : 大貫妙子
編曲 : 坂本龍一
1981年発売の AVENTURE(アヴァンチュール) というアルバムの5曲目、A面の最後の曲です。
以前も書いたかも知れませんが、このころの大貫さんは「旅」をテーマにした曲が多いです。
この「テルミネ」は、それが強く現れた曲のひとつです。
「テルミネ」とはイタリア語の「termini」、いわゆる「ターミナル」で、この曲ではターミナル駅のことを指していると言っていいでしょう。
ところでターミナル駅とは、本来は終着駅(始発駅)のことで複数の線路が行き止まり状態で集まった駅。
こんなイメージだと思います。
(写真はフランスのリオン駅)
自分は歌いだしの、
別れと出会いがあり、降り立てば駅は、さまざまに揺れた
「さまざまに揺れた」っていうのが最高に好きです。
現実世界ではプラットフォームの床面が列車の振動で揺れる、列車の位置や速度によって振動はさまざま。
それと
別れと出会いによる人の心の動き(揺れ)を重ね合わせている。
と勝手に思っています。
途中で登場する TRAIN BLEU はフランス北部と南部(地中海)地方をつないでいた歴史ある夜行列車。そんな豪華列車でフランス料理を食べながらワインを飲んで旅ができたらいいですね。日本人にとって海外旅行がまだ遠かった時代の曲です。
この曲を聴くとそんな旅をしているような気持ちになることもできます。
そして、このタイミングで取り上げたくなった理由・・・
先月お亡くなりになった坂本龍一さんがアレンジとピアノ&シンセサイザーを担当しています。
音楽的なことはよくわかりませんが、おそらく現代に比べるとシンプルな楽器構成にもかかわらず情緒豊かな曲だと感じます。
坂本さんはいつの時代も美しい音楽を創る人でした。
大貫さんと坂本さんは言わずと知れた盟友です。坂本さんの長寿ラジオ番組「RADIO SAKAMOTO」の最終回(3月6日放送分)は坂本さんの体調悪化で収録できなかったため、大貫さんがピンチヒッターをされていました。それほど結びつきが強いお二人です。死期が近いことを誰よりも知っていたことでしょう。
(これ以上のご厚意があるでしょうか)
「戦場のメリークリスマス」や「エナジーフロー」など坂本さん名義の音楽も素晴らしいですが、自分は大貫妙子さんの楽曲への参加という形で彼の音楽に非常に多く接してきました。アーティストというより、まさしく音楽家でした。お亡くなりになられたのはとても残念ですが、きっとずっと忘れないと思います。音楽を聴いては何度も思い出すことと思います。
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ちょっとだけ余談です。
大貫さんのこの頃のアルバム3作品を取り上げて「ヨーロッパ三部作」ということがあります。
ですが、その対象となるアルバムが謎です。なぜなら
一般的には ROMANTIQUE、AVENTURE、Cliché という組み合わせが多数派ですが、AVENTUREのLPの帯には、
MIGNONNE、ROMANTIQUE、AVENTURE が三部作であるかのような記述があるからです。自分はこっち派でした。
今となってはどちらでも構いませんが、帯って時に大胆不敵なことがあるんですよね。レコード会社の誰かが考えたんでしょうけど。
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