今日、池上 彰さんの番組で、ノーベル賞や科学研究費のことをやっていました。大学の理系の教員の場合、一部の分野を除けば科学研究費がとれなければ、研究は全くできません。学生に研究をさせてあげることもできません。ミクロ系の分野だと、1人の大学院生に満足に研究をさせてあげるには、1年に数十万円は必要です。科学研究費を獲得できている大学の教員は、地方の国立大学の理系の場合3割くらいですから7割の教員は研究室の機器の消耗品すら購入できないのです。資金がなくて生産がストップした工場と一緒ですね。僕も、研究費の確保には随分苦労してきましたが、これまでかろうじてなんとかやってきましたが、とうとう研究費はストップしてしまいました。あと退職までわずかですから、まあいいのですが、若い研究者はこれから大変です。科学研究費の採択には審査があります。過去数年間に出した論文の質と数、そして申請書の研究計画が審査の対象です。ですから、研究費をとって、学生たちと一緒に研究をして、その成果を論文としてたくさん書けば、数年後も研究費がとれます。しかし、研究がうまくいかなければ論文が出なくなります。そうなると数年後の研究費はとれません。一度研究費がとれなくなれば、工場がつぶれるのと一緒で、研究室の機能はストップし、研究費を獲得するのに必要な研究論文をだすことができません。そう、永久に研究費をとることができなくなるのです。
一流の大学になればなるほど、科学研究費を獲得できている教員の割合が多く、その額も多いのです。ですから、学生にとって、いい大学に行くということは、めぐまれた教育研究環境が存在することが保証されている可能性が高いということでもあります。
これまでに、科学研究費の不正使用で懲戒解雇となったひとが何人かいます。このなかには、知っているひともいました。不正使用は、私的に着服したのではなく、物品を買ったことにして架空の請求書を業者から発行してもらい、お金は業者に預けておいて、先で使用するのです。なぜそんなことをするか?それは、研究が永久にうまくいくわけではありませんから、論文を出すことができなくなって、科学研究費がとれなくなったときのためにお金を貯金しておくのです。研究が永久にうまくいくわけではないので、「文科省に預けておこう」ということはできないのです。3年計画で申請して獲得した科学研究費は、原則として3年で使い切らなければなりません。研究がうまくいかなくなったからといって、10年間かけて使わせてもらうことはできないのです。そのようなことができれば、科学研究費の不正使用など誰もしないでしょう。
最近、有名な科学者が研究費の不正使用で解雇となりました。その教授は、名前を覚えるのも大変なくらいの人数の大学院生と卒論生を研究室にかかえていました。彼らの研究費はその教授が獲得してきた多額の科学研究費に支えられていたのはいうまでもありません。なので、研究がうまくいかなくなれば、数年後には、大人数の大学院生は研究できなくなり、彼らの将来も前途多難になります。この教授はとても優秀なひとで、すごい研究を世界に先駆けてやっていました。「彼は、僕らのような凡人教授ではなく、天才なのだ」と思っていました。「決して、論文や研究費が途絶えることはないのだろう」と、とてもうらやましく思っていました。しかし、彼が研究費をプールしたことを考えると、彼も研究費を永久にとり続ける自信がなかったのでしょうか。
理系の場合、研究結果は予定通り出る訳ではありません。研究がうまくいかなくなるのは当たり前のこと。文科省は、科学研究費の使用期限を延長する措置がどうしてとれないのでしょうか?