インゴルフ=アルトナルソンから始まる本格的なアイスランドへの移住は、おおよそ西暦930年頃にピークを迎え、その後緩やかに落ち着き始めます。それと同時に、今度はアイスランド内部における政治・法制度の整備が開始されていきます。その中心となるのが、「アルシング」と呼ばれる原始民主議会の誕生です。
もともと、古代ノルド社会では、シングと呼ばれる集会があり、そこで主だった政治政策の決定や犯罪者の裁き、土地や財産を巡る争いごとの解決を行ってきました(ただし、決定事項の強制力はない)。この制度をアイスランドに適応させたのがアルシングです。始めは一地域ごとに別れ行われていましたが、次第にアイスランド全島を範疇に広げていきます。
このアルシングでは、ゴジと呼ばれる代表者が議長的な役割を果たしていました。ゴジは、アイスランド各地域の有力者(地主など)から選抜され、任期は3年とされました。また、集会には各地域の有力者が多数参加し、それに伴って自由民(一般農民)や女性らも傍聴人として参加していました。年に一度、長い冬の終わりを告げる6月に、約2週間に渡って行われたため、参加者にとっては一種のお祭りのような感じだったそうです。
このアルシングですが、13世紀にノルウェーの支配を受けた後も存続を続け(権限は大幅に縮小されましたが…)、後の支配者であるデンマークの下でも続けられました。一度、19世紀に中断されましたが、また復活して、1944年の独立からは再び以前と同じ権限を有するに至りました。今日でも、アイスランドでは議会をアルシングと呼び、古代から続く民主議会としてその役割を果たしています。