23日と24日に、以前の職場の仲間と安曇野の旅行をすることになった。


参加者は女性2人(東京と栃木から)と僕も含めて男性3人(福島と茨城から)だった。そのうち男性1人は夜だけ参加するということだったので、普段は4人で行動することになった。


男の仲間とはよく会っているけれど、女性とはなかなか会う機会がない。考えてみたら、栃木から参加した女性とはパリで会って以来だし、東京から参加した女性とも、ここ数年は全く会っていないのだった。


穂高駅で待ち合わせをした。天気が心配だったが、よく晴れていた。

昼にはそばを、ということだったが、そば屋がいっぱいで、先に「大王わさび農場」に行くことにした。


黒澤明のオムニバス映画「夢」の最後の話に出てくる水車を見た後(映画自体はつまらない)、わさび田のまわりを散策した。水は相変わらずきれいだった。


わさび農場


僕は何度もここに来ている。夏に、カリフォルニアに住んでいるクリスともここに来た。クリスはわさび田を歩きながら「僕は長野にも彼女がいたから、ここも来たことがある」と言い、僕はがっかりした。


何度も来ている場所だが、わさびソフトクリームは初めて食べた。後味が、わさびっぽい感じだった。


わさび農場を出て、安曇野ちひろ美術館に行った。食事のことは、もうすっかり忘れていた。


安曇野ちひろ美術館は広大な庭を持っている。

そこにはチェコの絵本作家パツォウスカーがデザインした大きな池と石のオブジェがあり、それが北アルプスと安曇野の風景にとても合っている。


ちひろ美術館自体もとてもセンスがいい建物だ。平屋建てなのだが、背景の北アルプスと合うように屋根も山並みのようにつながっているのだ。

内装も、デザインもとてもシンプルで美しい。


僕は、美術館内にある絵本の図書館で、人から薦められて読みたかったチェコの絵本「もぐらのじどうしゃ」(文 エドアルド・ベシチカ、絵 ズデネック・ミレル)を読んだ。他にも2冊ほど読んだ。


美術館の隣には約3万株の大花壇があり、美術館から自由に出入りできるようになっている。

花畑いっぱいに咲く色とりどりの花を見て、女性達は「プロヴァンスみたい」と喜んでいた。


花畑


絵本を読むスペース、昼寝スペース、カフェと、ちひろ美術館は1日中いられるように設計がされている。また、入館証は金属のクリップでできていて、それを持っている限りは出入り自由なのも嬉しい。

この美術館は本当にセンスがいい。


ちひろ美術館を出て、すぐ隣にある「すずむし荘」の温泉に入る。ちひろ美術館のパンフを持っていくと割引もしてくれる。


ゆったりとした気分になったところで、穂高のアートヒルズに立ち寄る。

僕はここで、8000円もする細野朝士という人が作った万華鏡を買った。

周りの風景を切り取って、きれいな模様に変えてくれるのだが、とても精巧に作られている。

僕は画面が11分割されるものを買った。


夜は梓水苑という公共の宿に泊まった。ここで、もう1人の仲間とも出会った。茨城から10時間近く運転してきたらしい。


宴会をして、それからモノポリー大会をした。

2回やって、終わったときにはもう2時を過ぎていた。


福島から運転をして参加した友達はよっぽど疲れていたのだろう。

布団に入るとすぐに寝入ってしまった。


僕も布団に入って眠ろうとした。

梓水苑の周りには何もないのだが、秋の虫たちが鳴く音が、うるさいほどよく聞こえた。

実家に帰ると異常なほどに眠ってしまう。

朝起きて、ご飯を食べて寝て、昼ご飯を食べて寝て、夜もちゃんと眠るのだ。


寝過ぎると悪夢を見るらしい。また自分も実際に寝過ぎると見るのだが、今回はそんなこともなかった。


悪夢も昔は高いところから落ちる夢が多かったが、「夢で高いところから落ちても、着地ができる」と人に聞いてから、本当に着地できるようになって悪夢でも何でもなくなってしまった。

今では、高いところから落ちるのは夢でも現実でも(安全なら)大好きである。


寝る前には、アロマテラピーの本を読んだり、英文のマイ・キアス・ティーンエージ・ライフ・イン・シンガポールの続きを読んだり、ロバート・マキャモンの「少年時代」を読んだりしていた。


「少年時代」はとても長い小説で、もう300ページ以上読んだが、それでも上巻の5分の3程度なのだ。

なかなか取っつきにくい小説で、人には薦めないけれど、僕向きの本なのでしぶとく読み続けている。


読んでいるうちに、つい眠ってしまう。夢と小説が混同したりしてしまう。


僕は夢うつつの自分が好きだ。思いがけないことをするからだ。


中学校に通っていた頃、朝、なかなか起きることができなかった。目覚まし時計をセットして寝るのだが、知らない間に自分でオフにしてしまうのだ。


そこで、ある日、目覚まし時計を絶対にオフにできないように細工をして寝たところ、やはり朝、起きれなかった。オフにはできないようにしていたはずなのに…と思いながら目覚まし時計を見たら、なんと電池が抜いてあった。「俺って源を見抜く力があるなあ。」と本気で感心した。


こんな夢を見たこともあった。

イギリスに旅行していた夢で、僕の隣には英語がペラペラの友人がいて、僕たちは学校対抗のラグビーの試合を見ていた。

応援団がいて、応援歌を歌っていた。もちろん英語である。


その瞬間、僕はこれが夢だということを、見破ってしまった。そして、隣にいる英語がペラペラの友人も、実は自分なのだ、ということを認識した。

自分自身が、そんなに英語が話せるわけがない。


応援団は、なんだか数字のような応援歌を歌っていた。

「あのさあ、あれ、何って歌ってるの?」

僕はちょっと意地悪な気持ちで、その友人に聞いた。

「あれはさあ、学校の…」

友人は困ったような顔をした。

「学校の何について歌っているんだよ。」

「あれはねえ、学校の住所を歌っているんだよ。番地とか…」


それを聞いて、僕は爆笑して起きてしまった。

どこの世界に、住所を歌っている応援団がいるんだよ。


それから、しばらくして、そういえば早稲田大学の校歌って「都の西北…」とかで(今は所沢に移って、極端な西北になっちゃったけど)、まあ、言ってみれば住所を歌っているようなもんだからなあ。と思いついた。


そして一般的にも、校歌とか応援歌って、確かに地名や名所を折り込んで作ってあるから、あれは住所を歌っている、と考えてもいい訳だよなあ、と思った。


そうか、住所を歌っているって答えで正解なんだ。

「俺、寝ぼけているときって、本質を見抜く目を持っているなあ。」と自分にまた、感心してしまった。


今回もそんなことがあるのではないかと期待していたのだが、そんなことは全くなかった。

ただひたすらスヤスヤと眠るばかりなのであった。

ニュージーランドにいるフィンクルからメールが来た。


彼女の兄のサムが結婚すると言うのだ。


サムはロンドンに住んでいて、僕はバーミンガムに研修に行っているときに、週末、ただフィンクルの兄だというだけの理由で、会いに行ったことがある。それまで、面識は全くなかった。


初めて電話をしたときは緊張した。

「僕はフィンクルの職場の同僚なのですが、週末にロンドンを紹介してもらえますか?」

そんなことを、たどたどしい英語で頼み込んだ。

断られて元々の話なのだが、サムは僕の話を聞き終わると、とてもゆっくりとした英語で、

「イッツ、ファンタスティック」と言った。

それから、何を言っても、サムの回答は同じ。

「イッツ、ファンタスティック」というだけだった。


バーミンガムからの長距離バスの待合室で、サムは待っていてくれた。


地下鉄でグリーンパークに行き、キヨスクでサンドイッチを買って、公園で食べた。

「イギリスの公園には花がない。昔、妻に、あなたが一番きれいだと思う人に花を差し上げたら?と言われたイギリスの王が(名前を聞いたけど忘れた)、妻以外の女性に花を渡してしまったため、妻が激怒して、公園に花を植えるのを禁止したのだ。」

そんな話をしてくれた。


それから、ロンドン塔、バッキンガム宮殿などを歩いて回った。子供の頃、憧れていたべーカー街のシャーロックホームズの家にも行った。しかしイギリスではホームズはあまり人気がないようだった。


夜は、回転寿司を食べ、それからたまたま日本から来ていた職場の同僚と一緒にパブでビールを飲んだ。

途中からサムと同僚はウォッカを飲んでいた。


気付いたときには、閉店時間で、パブは鐘を鳴らして閉店であることを告げていた。


それから地下鉄で帰ろうとしたのだが、グリーンパーク駅で小便がしたくなって、地下鉄を降りた。

トイレが見つからなかったので駅の裏手で、サムと一緒に小便をした。


それから、サムの家までバスに乗って帰ることになった。その乗るべき最終のバスが、すぐ目の前を走っていることを知り、僕とサムは全力で走った。


眠るとき、枕を2つ渡された。1つでいいと言ったが「イギリスでは2つ使うのだ」と言われた。


翌朝、10時頃起きた。


トーストにベジマイトを塗ったものを渡された。それまで、ベジマイト(オーストラリアの発酵食品)をうまいと思ったことがなかったのだが、初めてうまいと思った。


それから、グリニッジ天文台に行った。経度0度のラインを見たかったのだ。


それから、フィッシュアンドチップスを食べて、僕はまたバーミンガムに戻った。

帰りのバスが走り出したときに、サムが手を振ってくれた。


あれからもう、何年が経つのだろう。

サムも、結婚かあ。


「おめでとう、そして、イッツ、ファンタスティック」とサムに伝えてもらうようにフィンクルに頼んだ。


消防学校に体験入学をした。

入学していたのは2泊3日だったが、朝は6時に起床し、夜は10時に就寝する規則正しい生活だった。


僕としては、ロープの結び方と、心肺蘇生法(人工呼吸と心臓マッサージのしかた)を教えてくれればいいや、と思っていたのだが、消防は持っている知識が広い。


その他にも、敬礼の仕方から始まり、AED(自動体外式除細動器、一般に医者が「ドカン!」などという、電気ショックで心臓の動きを正常に戻す装置のこと。)の扱い方、避難器具の扱い方、煙の見分け方、火災からの逃げ方、着衣水泳、簡易な浮き輪の作り方などなど、自分が望んでいたことよりも、遙かに多くのことを教えてもらうことができた。


例えば、敬礼で頭の横に手を挙げるのは、帽子またはヘルメットを被っているときだけだとか、AEDは蓋を開ければ、後は機械がみんなやることを教えてくれるだとか、この体験が無ければ、知らずに一生過ごしていたかも知れない知識や技能も身に付いた。


もうちょっと詳しく言うと、心肺が停止した人がいたら、とにかくAEDの機械を急いで取りに行って(誰かがその間も心臓マッサージや人工呼吸をしていてくれるのがベスト)、蓋を開けるだけでいいのだ。多くの機種は、それだけで自動的に電源が入って、あとは機械の指示に従えばいい。


心臓マッサージも簡単。要は、両乳首を結んだ線と、へそと喉を結んだ線の交差部分を、肘を伸ばして、掌の力の入る部分で15回ずつ押せばいいのだ。間違って、あばらより下を押すと、胃を押してしまい、内容物が逆流して「とどめを刺してしまう」こともあるから、その点だけは要注意。


人工呼吸は患者の顎をあげて、鼻をつまみ、口全体を覆うようにして、ゆっくりと息を吹き込む。

でも、その際、ハンカチやガーゼを挟んだ方がいいらしい。肝炎やエイズに掛かっている人も多いそうなので。それから、口の周りから変な液体が出ている人にも、人工呼吸はやめた方がいいらしい。理由は、農薬を飲んでいる可能性が高いから、だそうだ。


今日は、着衣水泳をした。

プールで服を着たまま、40名ほどで泳いだのだが、あまりに異様な光景で笑ってしまった。


「服を着たまま、溺れた人を助けるなんて不可能。ベストは、浮き輪を投げてやること。浮き輪が無くても2リットルの空のペットボトルがあれば、それでもいい。浮くだけなら、なんとかなる。それでも、どうしても直接助けるというのなら、服を脱いで、ズボンを浮き輪代わりにして、近づけ。」

教官はそういうのだ。ズボンで、浮き輪を作る方法も教えてもらった。


3日間、本当に大変だったけど、面白かった。避難器具のような、高いところから低いところへ降りる道具は大好きなので、垂直式、斜行式、緩降器の3種類を2回ずつさせてもらって満足した。

でも基本的には、避難には階段を使うのがベストだそうだ。

「避難器具は最後の手段。いざというときに、こんな少人数をゆっくり下ろす機械なんか使っていられない」からだそうだ。



この学校に行っていた間に、本多孝幸の「FINE DAYS」を読んだ。最近、女性の間で支持が広がっているらしい。僕の買った本も第27刷だった。


ストーリーはまあまあかな。でも、台詞や描写が不自然で読むのがつらかった。


特に「眠りのための暖かな場所」といった、スカしたタイトルの短編では「刑法の優秀な院生」が主人公だったが、この院生は絶対に優秀じゃない。刑法の初歩がわかっていない。もっとちゃんと勉強しろ!と言いたい。


こんなインチキくさい本じゃなくて、もっと、ちゃんとした本が売れればいいのになあ、と規則正しい生活を送りながら、消防学校の布団の上で、僕は思ったりしたのだった。

アロマテラピーを始めた。


数日前、BODY SHOPに行って、アロマ用のランプとベルガモット、ラベンダーを買った。

アロマに関係のありそうな店は、BODY SHOPしか思いつかなかったのだ。


アロマ用のランプは、キャンドルではなく、白熱球のものにした。

アロマで使う精油には可燃性があるのでキャンドルだと危ないような気がしたのと、火力が強いので、すぐに蒸発してしまうと教えられたからだ。


最初使ったときは、日焼けした肌に揮発したオイルが当たったせいか、肌がピリピリした。

でも、何度か経験しているうちに、だんだんとそういうこともなくなってきた。


先日、BODY SHOPにまた精油を買いに行った。

ローズマリーとイランイランを買った。

他にも欲しい精油があった。


「ここには、これだけしか無いんですか。」

「はい。」

「…ここの近くに、精油を売っているところって、どこか知りませんか?」

「えーと、この店の隣に、アロマの専門店がありますけど…。」

「となり!ですか。」


そういうわけで、隣の専門店に行った。確かにあった。今まで、僕は何を見ていたのか…。


アロマの効能表を見ていて、フランキンセンスという精油が欲しかったのだが、10mlで7,500円もするので諦めた。

そのかわり、ハーモニーというラベンダー、ゼラニウム、フランキンセンスをブレンドした精油と、ゼラニウムを買った。


今回はリラックスをテーマに買っていたのだが、今後は、頭をはっきりさせる精油も買っていくつもりだ。


昨日は、サッカーの試合があり、その後アロマ入りの風呂に入って夜の9時頃には寝てしまった。

家に帰ってから寝る直前まで、ずっと、リラックスできるラベンダーや不眠に効果のあるゼラニウムを使っていた。


朝、ちょっと寝過ぎたな、と思って起きたら朝の8時30分だった。こんなに寝たのは久しぶりだ。


窓を開けて外を見たら気持ちいいくらい晴れていた。

クリーニング屋にワイシャツを出しに行き、ついでに24時間営業のスーパーで食材を買って、パスタを作って食べた。

その後、洗濯をして、布団も干した。


昨日と同じアロマを使っていた。


昼にもう一度パスタを作って食べ、桂望実の「県庁の星」を読む。「役人意識構造改革ストーリー」なのだそうだ。


プロットは簡単。県庁職員が、スーパーに民間研修に行くという話だ。

そしてその研修先のスーパーで、マニュアルや組織図がないから仕事ができない、と主人公は悩むのだ。


リアリティはないし(ちゃんと取材してないだろ、県庁にもスーパーにも。)、ストーリーもつまらないし、悩みも浅い。役人意識の掘り下げもできていないし、それをどうすべきという主張もへなちょこだ。魅力ある人物も1人として登場しないし…。


あまりに、くだらなく、つまらない本を読んだせいで、ぐったり疲れてしまった。


アロマの鎮静効果もあったのだろう。その後、気付かないうちに、マットレスの上で寝てしまった。


夕方の4時30分頃、目が覚めた。


外が暗くなっていた。窓を開けると土砂降り。

慌てて、布団を取り入れたが、雨に濡れて、干す前よりずっと重くなっていた。

サッカーの試合があるというので、午後3時にグランドへ行った。


前回、試合に出たときには、室内ジム用の運動靴(それしかなかったから)を履いていったのだが、「ちゃんとスパイクを履いてくるように」と指示されたので、今回はちゃんとスパイクを買って持っていった。


「いい靴買ったね。」

「4000円くらいでした。」

「今度はスネ当てとソックスも買ってきて。」

「…。」


僕の感覚では、もっとサッカーシューズは固いものかと思っていた。

ところが、最近は、素肌感覚が求められるということで、柔らかな素材が主流らしい。


最初の15分はフォワードだった。

走っているうちに、気持ちが悪くなってきて「もう、死んじゃう」と思いながら、パスを受けていた。


「後ろにいるよ。」

何度も声をかけられた。

どうして、この場面でバックパスをするんだろう?と思いながら、声をかけられる度に、パスを出した。

後で聞いたら、「すぐ後ろに敵がいるから、そのまま振り向いて前に行こうとしても、敵とぶつかっちゃうよ」という意味だったらしい。


フォワードをしているうちに、すぐに消耗した。走れなくなり、地面にしゃがみ込んだ。

そして、そのすぐ後、勢いよく飛んできたボールを股間でトラップしてしまい、悶絶した。


その後の30分は頼み込んで、スイーパーのポジション(ディフェンダーの一番後ろ。本当は今のサッカーではなくなってしまったポジションらしい)をやらせてもらった。

このポジションは本当に大好きだ。

全体が見渡せるし、口だけであんまり走らなくていいのも魅力だ。


あとはチームメイトがオフサイドなんか気にしないともっと嬉しい。

僕は敵のフォワードよりも明らかに足が遅いので、下がりながら守ることなどできないのだ。


今回、小学生の娘を連れてきた人がいた。

その子はいつもフィールドの外で試合を見ていて、ボールが大きくフィールドから蹴り出されると、取りに走ってくれた。

シュートが大きくはずれると、何度も、取りに行って僕に渡してくれた。


試合が終わった後

「いろいろと手伝ってくれてありがとね。」と言うと、ものすごく照れていた。


小学生の女の子ってこんなにいい子がいたんだったっけ。


ちょっと小学校時代を振り返ろうとしたら、可愛い女の子をいじめた愚かな日々が甦りそうになったので、いかんいかんと止めにした。



最近、さくらももこの「ひとりずもう」、爆笑問題の「ニッポンの犯罪12選」、絲山秋子の「スモールトーク」を読んだ。


「ひとりずもう」はもう23万部も売れているらしい。内容は、ちびまるこちゃんの初期に書いていた、「ももこほのぼの劇場」の作り直しが多く、僕にはあまり面白くなかった。


西原理恵子などは「さくらももこの漫画なんて、つまらなすぎて、もう痰も出ない。こんな漫画でも書いていていいんだとホッとする。」などと暴論を吐くが、今回、「ひとりずもう」を読んでいて気付いたのは、エッセーと漫画を組み合わせるという画期的な手法は、さくらももこが確立したのだ、という点だった。


どんなに嫌いでも「さくらももこ」がいなければ、きっと西原だって、世間に受け入れられるのに、もっと時間がかかっただろう。


爆笑問題の本は好きで、よく読んでいる。読む度に太田は天才だと思う。ただ、今回はテーマが犯罪だったので、なかなか面白くできなくて苦労したようだった。それはそうだろう。被害者のことを思ったら、それは難しいと思う。

いくつかの発見はあった。八百屋お七の起こした火事は、実はぼやだった。というのは知らなかった。太田の「アメリカなんかも少年犯罪は多いからね。ブッシュ大統領も『今の子供達に命の大切さを教えるべきだ』って言いながらイラクに空爆してたからな」という発言もなかなか皮肉が効いていていい。


「スモールトーク」は自動車の話だ。

多くは超高級車の話だったが、営業用のカローラバンの新車を会社で与えられ、それを徹底的に慣らし、5000キロまで一度の渋滞をしたことのない、急ブレーキを踏まれたことのない、回転数を管理された「カローラバン・スーパースペシャル」を作った話が載っていて、気に入った。

この本を読むと、運転の仕方が変わる。でも、人に薦めるほどじゃないなあ。


そういうわけで、今回はお奨めできる本はありませんでした。


スターバックスで、僕がいつも食べていたクロックムッシュが、8月31日で、メニューからはずれることになった。

並んでいたら、店員の人が教えてくれたのだ。


「代わりに、温かいサンドイッチのようなものもありますから…。」

「…ああ、そうなんだ。」


最後のクロックムッシュを頬張りながら、ぼんやりとスターバックスのガラス越しに、外の景色を眺める。

今日の朝は雨だった。


皆、傘を差して歩いていた。

雨は、夏の雨より少し温度の低い、秋の雨に変わっているようだった。


今週に入って、ずっと夜の12時近くまで仕事をしている。

昨日も、査定があって、帰ることができたのは12時過ぎだった。

疲れているのかもしれないな、と思った。


日記を書いて、それからいつもなら化学の本を読んだりするのだけれど、それも面倒だった。

もう、べつに何だっていいや。と思った。


あれは高校3年の夏だった。


夜、タバコを吸いながら、じっと降る雨を見ていた。

青白い街灯の光を斜めに横切る雨の軌跡がきれいで、それをずっと見ていた。


あのときも、似たような気持ちでいた。

何があったわけじゃないけれど、そのときの雨の音や、タバコの味を僕は今でも覚えている。

頬に冷たいガラス窓が当たって、ああ、こういう感覚も忘れていたな、ってそのときに思ったのだ。


そう、それで、それから、雨を見ながらこう思ったんだ。

「夏もおしまいだな」って。

そして、悲しくなった。


アイスコーヒーを飲みながら、僕は今もまた「夏もおしまいだな」って思っている。

あのときから、僕はいくつの夏を過ぎてきたのか…。


小さな声で「夏もおしまいか…。」とつぶやくと、何だか本当に悲しくなってきた。


「ああ、もうさっさと仕事に行こう」と思って、立ち上がった。


勢いよく、スターバックスのドアを開けた。

外は、まだ雨が降っていた。


そのときふと自分が傘を席に忘れたことに気づいた。

仕方がないので取りに戻った。


いつも物事がスムーズに進まない自分への怒りで、少しだけ元気な気分になった。


土日に実家に帰っていた。

すのこベッドを入れるスペースを作っていた際に出てきた、必要のなくなった本や雑貨を片づけるためだ。


実家まで、車を運転して2時間と少しかかる。

ただ運転しているだけだと退屈なので、たいてい音楽を聴いている。


高速道路を運転しているときは、スピーカーからの音が割れる寸前まで、音量を上げて運転していることが多い。

途中で、CDが切り代わり、いきなりガンズ・アンド・ローゼズなどがかかると、首から上がふっ飛ぶような音量にさらされ、驚くこともある。


今日、実家からの帰りにノーランズのベスト盤を買って聴きながら帰ってきた。


最近サントリーのカロリのCMでノーランズの「ダンシング・シスター」が流れているのを聴いて「ああ、ノーランズかあ」と懐かしくなったのだ。


中学生の頃から、英語もできないくせに洋楽を聴いていた。

レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、レインボー、クイーン、ベイ・シティ・ローラーズ、などなど。


そんなある日、僕がいつものようにステレオでレコードを聴いていると滅多に洋楽など聴かない姉がやってきて、「ノーランズのレコードが欲しい」と言ったのだ。


それで、週末、姉のためにレコードを買いに行き、ノーランズのアルバムを買った。


そのアルバムが何というタイトルだったのか、今は全く覚えていないが、せっかく買ってきたのに、姉は目当ての「セクシー・ミュージック」という曲が入っていなかったから、とあまり聴かなかったような気がする。


その分、僕が聴いた。


当時、学級新聞を毎日、クラスメートが交代しながら発行していたのだが、僕はその頃ノーランズのことばかり書いていたような気がする。


あと、「イチノセくん」という漫画も書いていた。実在の市ノ瀬くんを主人公にした4コマ漫画で、いつも最後のコマは「マンネリだ。」とイチノセくんが泣いて終わっていた。


「イチノセくん」は人気があり、書く度にクラスメートが「面白い」とわざわざ、僕のところまで言いに来た。市ノ瀬くんは怒っていたが、どこか嬉しそうでもあった。その一方で、ノーランズの話は誰も興味がないようだった。それでも、僕はノーランズのことを書いていた。


そんなある日、家に帰ると、姉が「レコードを買ってくれたから」と僕の部屋を掃除してくれていた。


「どうして、そんな勝手なことをするのだ!」


部屋にはいると、布団の下に隠していたヌード雑誌が、参考書などと一緒に机の本棚に挟まっていて、ますます腹が立った。

怒りながら、姉の部屋に行くと

「ねえ、持っているヌード見せてよ。」といきなり言われた。


僕はたちまち激高し「あれは、男の趣味だ!」と怒鳴った。


「え?コートが…?どうして?」

姉は不思議そうに、僕を見つめた。

そう言えば、僕はその頃、東京の従兄弟からコートをプレゼントされたばかりだったのだ。


コートとヌードと聞き間違えたのだとわかったが、恥ずかしくなってますます腹が立った。


僕は部屋に戻ると、コートを掴み、姉の部屋に入るなり姉に投げつけると、部屋を出た。

「なにすんのよ!」

怒った声が聞こえたが、無視した。

「ふざけやがって。」

机の上に参考書と一緒に並んでいるヌード雑誌を見つめながら、僕も怒っていた。


「ノーランズかあ。」

車の中で、思ったよりも古くないノーランズの曲を聴きながら、苦い思い出を噛みしめた。


前の車検から2年が経った。それで車を車検に出すことになった。

最近、マフラーが大きな音を立てるようになったので、ちょうどよかった。


自動車板金の店に電話をすると、いつ来てくれてもいい、帰りは車で送ってくれる、と言うので、午後から車を運転して行った。


店に着くと、誰もいない。

「すみません。」

大声を出しても、誰も出てこないので、携帯で電話した。

「あの、車持ってきたんですけど。」

「どこに?」

「店に来てるんですけど…。」


すまん、すまんと言いながら、出てきたおじさんに鍵と納税証明と車検証を渡す。

「マフラーから音が出る?高くなるかも知れないなあ。」

不安になるようなことを言う。


帰りに車で送ってもらいながら、2人でリサイクル法の悪口を言って帰ってきた。

「兄さんの車はともかく、目の前を走ってるステップワゴン。リサイクル料なんかかかるようになっちゃったから、車検のとき、私らの手間賃抜きでも10万かかる。」

「リサイクル法なんかできると不法投棄も増えますよね。」

「そうそう。あんなもん、ナンバー外して、登録番号削っちゃえば、分からないもんね。」


その後、不法投棄された車のリサイクル料を誰が払うのかというと、それは捨てられた場所によるのだ。

国道なら国が、県道なら県が、市道なら市が払う。

もっとも、多くの場合、1年間くらいは警察が保管している。事件性の有無を調べるためだ。

1年経つと、元あった道路の道路管理者に電話がかかってくる。

「事件性なかったんで、返します。」


今までは、廃車するだけだったので、捨てられた市町村が処分することが多かった。

でも、リサイクル料がかかるとなると、全て、道路管理者に返されてしまう。

制度が変わるといろんな面倒も付随して起きてくるのだ。

でも、リサイクル料を手にする(財)自動車リサイクル促進センターなんか取りっぱぐれは無いわけだし、ボロもうけだよなあ。


家まで送ってもらい、それから昨日、家に入れてもらったすのこベッドに寝転がって絲山秋子の「イッツ・オンリー・トーク」を読む。


彼女の文体はセンスがいい。ふしだらで、精神病の主人公なのだが、惹かれる。魅力がある。

車のことは詳しくないのでよくわからないけど、ロックについてなら、ある程度はわかる。ロックについての語り口から、車にも相当、造詣が深いんだろうなあ、と思う。それから、クスリや精神病についても。


前に「袋小路の男」を読んで著者紹介を見たときには(あまりに主人公が僕に似ていたので、僕の知り合いかと思って)、僕より11歳も年上だったのに、なぜか、今回見てみたら、僕より1歳だけ年上ってことになっていた。


いつか一緒にお酒を飲んでみたいものだと思った。



朝、起きて、部屋の掃除や洗濯をした。

9時45分頃に、家具の業者がやってきて、すのこベッドを組み立てて帰った。


今日の県内は、きれいに晴れ上がって、青空が眩しいほどだったので、布団も干した。


そして、ぱすかさんが絶賛していた映画「妖怪大作戦」を観に行った。


映画は、退屈はしなかったけど、人に薦めるのはちょっと…。という感じだった。

妖怪「すねこすり」はどう見てもぬいぐるみにしか見えず、スピルバーグが「グレムリン」を撮影してから何年経ってると思ってるんだ!と腹が立った。

妖怪をさらって「機怪」をつくる、という設定にも、ちょっと無理があるだろう、と思った。

脚本はまあまあ、面白い。プロッターというあらすじ作り屋の出来が悪いのだ。

でも、子供向けの映画だから、理屈でなく、単純に子供が喜べばそれでいいのかも知れない。


映画への行き帰りと、家に帰ってから、絲山秋子の「海の仙人」を読んだ。

敦賀の海が舞台の小説だ。


昔、S弁護士が司法修習生のときに、名古屋に遊びに行ったことがある。

彼は車を持っているという話だったが、本当に持っているだけで、その車は駐車場から動かなかった。

ガソリンスタンドの人を呼んで見てもらったら、バッテリー上がりだという。


それでとりあえず、エンジンを動かしてもらい、それから充電をするために、敦賀の美浜原発までドライブに行った。

「ウィンカー出すなよ。」

「なんで?」

「入れてくれないから。」

「ひどいな。」

「名古屋の人に言わせると、東京の人は冷たいって言うんだ。でも、こういうマナーって東京の方がいいよな。でも、俺、事務所でずっと名古屋の悪口言ってたら、「S先生って名古屋、嫌いなんですね。」って悲しそうな声で事務所の人に言われちゃって、まいったよ。」

車の中で、そんな話をしていた。


美浜原発についても、「絶対にエンジンを止めるな!充電しているんだから!」と偉そうに命令するので、車を降りて、ちょっと辺りをぶらぶら歩いただけだった。


夕方、名古屋に帰ってきた。ウインカーを出さずに、車線変更をするのは怖かった。

駐車場に車を戻し、エンジンを切ると、結局充電はされなかったらしく、2度とエンジンはかからなかった。


「海の仙人」を読みながら、そんなことを思い出していた。

本自体は決して悪くない。人に薦めるかは微妙だけど。面白くて、悲しい。

このプロットで、この文体で、ここまでの世界が書けるのか、と思う。


実はもう1冊本を読んだ。北杜夫の「マンボウ夢のまた夢」。

昔はマンボウものをよく読んでいた。ここ10年以上は読んでいない。

マカオのカジノに行った話が載っていたので、思わず買ってしまった。

でも、内容がひどい。

家族に愛されているのが自慢なのか、自分で立てるのに、子供に車いすを押してもらって旅行をし、何かというと、もう死んでしまいたいなどと書く。


「本書を読んでクスリと笑えぬあなたはどこかおかしい…!?」と帯に書いてあったが、こんな本読んで笑えるやつがいたら、そいつの方がよっぽどおかしい。


鬱病かどうかも怪しいものだ。自分が大好きで仕方がない、という感じだ。

もう、2度とマンボウは読まない。


本もゴミ箱に放り込んでしまった。