昨日、5月24日(金)、次の二つの作品展に行ってきました。

 

①「牧弘子特集」日本橋三越本店本館7階催物会場 会期5月22日(水)~27日(月)

②「中園ゆう子個展」銀座 美の起原 会期5月24日(金)~30日(木)日曜休廊

 

私は、美術展、個展をブログで紹介するとき、同じ日に回ったとしても、通常は別々に紹介するようにしています。

今回、牧弘子さんは洋画、中園ゆう子さんは日本画と大きな違いがあり、それぞれ内容も充実した個展でしたので、別々に紹介しようとも思ったのですが、幾つかの理由から、今回は一緒に紹介したいと思います。

 

この日、まず、日本橋三越で開催されている「牧弘子特集」、銀座の画廊、美の起原の「中園ゆう子個展」の順に伺ったところ、中園ゆう子さんが、牧弘子さんを同じ九州出身ということもあり若いころからよく存じ上げており、今回の牧さんの個展を、是非、会期中に拝見したいとのお話をされていました。

 

確かに、お二人とも、女性を題材にしていますが、作品は精密で神秘的に描かれた多くの花や植物、そして動物などで埋め尽くされており、その一つ一つに多くの含意が込められていることなどの共通点もあります。

 

そして、決定的なことは、私のブログでも過去に紹介したのですが、昨年12月に発売された「美術の窓2024年1月号」の特集「心ときめく装飾美」の中で、お二人の作品が見開きで紹介されていたこともあり、お二人の作品の共通点や相違点に触れながら二つの作品展を紹介していこうと思います。

 

 

 

それでは今回のお二人の作品展に展示された作品を紹介します。

牧弘子さんの作品です。

「あるがままにしか生きられない」牧弘子 100号

牧弘子さんの100号の大作です。

6人の女性に加え、様々な植物、動物、文物が一体となって細かく描かれ神秘的な世界が創り出されており、全体として明るく、大変美しい作品に仕上がっています。

 

中央下の人物を拡大したもの。葡萄をほおばる女性は写実的に表現されており、頭の上にはキャベツ、その上には獅子頭のようなもの、足元には鳥が描かれていますが、女性以外はあまり主張せず、背景として違和感なく溶け込んでいます。

 

 

3連の作品です。

 

「それは見ない」4号

 

「それも聞かない」4号

 

「そして言わない」4号

それぞれに独立した魅力的な作品ですが、「みざる、きかざる、いわざる」をオマージュした作品です。

 

次に、中園ゆう子さんの作品です。

「寒山拾得図」中園ゆう子 F12号 紙本着彩

東洋画の題材として有名な、中国唐代中期の高僧・詩人の寒山と拾得を題材にして、二人の少女を朗らかに、可愛らしく描いた作品です。寒山は文殊菩薩、拾得は普賢菩薩の生まれ変わりとされており、それぞれの霊獣の象と獅子等々が描かれています。

現代的な作品ですが、寒山拾得の故事を取材し、気品のある作品に仕上がっています。

 

 

四君子(しくんし)を題材にした4連の作品です。

「四君子-菊」中園ゆう子 F4号 紙本着彩

 

「四君子-梅」中園ゆう子 F4号 紙本着彩

 

「四君子-蘭」中園ゆう子 F4号 紙本着彩

 

「四君子-竹」中園ゆう子 F4号 紙本着彩

 

四君子(しくんし)とは、蘭、竹、菊、梅の4種を、草木の中の君子として称えた言葉であり、それぞれの気品の高い美しさから、中国宋代より東洋画の画題としてよく用いられています。

春は蘭、夏は竹、秋は菊、冬は梅と、四季を通じての題材となり、この四君子を題材にそれぞれに色彩豊かで美しい作品に仕上がっています。

 

ここまで、お二人の作品を紹介しましたが、全く異なる画風でありながら、描かれた幻想的で美しい作品に、意外な共通点があるように思います。

 

続いて作品を紹介します。

牧弘子さんの作品です。

右「触れる」4号、左「癒す」4号

「触れる」4号

「癒す」4号

二つの作品ですが、互いの手を触れることにより、「癒し」が表現されていると思います。

 

「浮かび上がる」6号

女性の視線、美しく描かれた花々、様々な文様がピタッと決まった作品に思います。

 

「静かに待つ」10号

牧弘子さんの一つ一つの作品の魅力を少しでも感じていただければ幸いです。

今回の牧弘子さんの展示の案内状に書かれたコメントを引用させていただきます。

 

「橋を架ける風を渡す」

日々どこかで分断が生じている。巨大な流れに無力感を覚え、ただ呆然と立ち尽くすことしかできずとも、希望が無くては生きられない。分断された国と国、人と人、再び橋を架け直す。まずは隣人から。

 

中園ゆう子さんの他の作品です。

右「巴図-龍」、左「巴図-虎」中園ゆう子 F8号 紙本着彩

 

「巴図-龍 中園ゆう子 F8号 紙本着彩

 

「巴図-虎」中園ゆう子 F8号 紙本着彩

龍と虎を題材に、美しい鎧姿の女性を勇ましく描いた作品です。

 

「星出づる」中園ゆう子 F4号 紙本着彩

こちらは扇子に描いた作品そして星座を題材に、制作した作品です。

みどり系の髪、濃い青の色合いがたまらなく魅力な作品です。

 

中園ゆう子さんの案内状には次の言葉が添えられていました。

「幻想の世界を夢想し描く時間は、まほろばを訪ねるような美しい時間。作品はその「まほろばタイム」の集積です。」

 

以上、お二人の作品展を紹介させていただきました。

日ごろ、おそらくはほとんど接点のないお二人と思いますが、熊本在住の中園ゆう子さんが、福岡在住の牧弘子さんをリスペクトされていることもありましたので、お二人の作品を一緒に紹介させていただきました。

 

二つの作品展は、会期も重なっていますし、比較的近くで開催されていますので、興味のある方は足を運んでいただければと思います。