今日は、現在、銀座の画廊「美の起原」で開催中の「中園ゆう子個展~幻想マニア」について紹介したいと思います。

(会期 2023年6月23日(金)~29日(木)日曜休廊)

 

今回の個展について、美術愛好家のための月刊誌アートコレクター6月号(P106)では次のように紹介されています。

『”見えていないだけで実在する世界”をテーマに表現してきた中園ゆう子。画業10年を超えての今回の個展では、「宇宙の理のようなものをかわいらしい世界観で覗き見たい」と、自身を”幻想マニア”と呼ぶ中園らしい、想像力に富んだ作品を展示する。100号の新作を中心に、日本画9点、デッサン6点を出品。』

 

これまで私のブログで中園ゆう子さんの作品を紹介してきましたが、彼女の作品は、美しい色彩、そして可愛らしい登場人物に癒されるとともに、故事や伝説などを題材にした想像の世界が、時代感覚にマッチした表現で描かれており、いつも新鮮で、大変楽しませていただいています。

 

それでは、作品を紹介します。まず、この1点です。

「伝言してね」 紙本着彩 F3

頭から背にかけて白、お腹から胸にかけて青いセキセイインコが、女の子の右手の上に乗っています。

鼻の周りが青いので、おそらく雄のセキセイインコで、女の子を見上げる様子から、何となくおしゃべりが上手そうです。

そして、女の子の髪飾り、服装や、左上のたわわな桃の実からすると、古代中国の世界を感じます。

 

この作品は、小さな作品ながら、会場に入り作品をざっと見渡した時に、一番印象に残った作品です。

中園ゆう子さんのお話によると、この作品は、昨年4月ここ「美の起原」で開催した個展に出展した次の作品の「外伝」的な作品とのことでした。

「令和艶中八仙・西王母」 F6 紙本着彩(この作品は、今回展示されていません。)

この作品は、江戸時代に浮世絵に描かれた中国の仙人に因んだ「艶中八仙」という美人画を題材にし、中園さんがその令和版として取り組んでいる「令和艶中八仙」というシリーズの一つです。

 

ここでは登場する人物は、女仙人の筆頭格の西王母であり、桃や3匹の青い鳥はいわば西王母のアトリビュートであり、西王母の青い鳥は「知らせ、手紙」を意味します。

 

先ほどの「伝言してね」の作品は、現代風の天女が青い鳥に西王母への「知らせ・手紙」を託しているところを描いたものであり、この二つ作品は関連性が深い作品ということになります。

インコ飼いの私としては、女の子の話に耳を傾けているインコの様子はとても愛くるしく感じますし、この二つの作品はとても身近に感じます。

 

次の作品です。

「令和艶中八仙・呂洞濱」 紙本着彩 F100

この100号という大きな作品は、会場に入ったすぐ左のスペースに、堂々と飾られており圧巻の作品です。

中園さんは、以前は日展に出展されていたので、こうした大きい作品を描かれていた時期もあるようですが、私が中園さんの作品を6年ほど前に初めて拝見してから、細密で丁寧に描きこむ画風で実績を重ねてきた彼女としては、これだけの作品を描くことがいかに大変だったか、私でも容易に想像できます。

 

作品の題にあるように、この作品は、中園さんが取り組んでいる令和艶中八仙の一つであり、最後の作品とのことです。

江戸時代の艶中八仙は、喜多川歌麿の八人の仙人に因んで遊女を描いた人気シリーズが有名ですが、この作品で完結する中園版、令和艶中八仙は中園さんの画業のエポックとなる仕事になったのではないでしょうか。

 

次は、この対の作品です。

 

(右)「狛犬ちゃんー阿」紙本着彩 F4

 

(左)「狛犬ちゃんー吽」 紙本着彩 F4

今回は、神社シリーズということで、この狛犬を題材にした作品など、数点が展示されています。

この二つの作品を、私は「阿」を右、「吽」を左と書きましたが、これは絵を鑑賞する者からみた右と左です。

しかし、狛犬は神様を祭る本殿の両側におり、神様から見ると「阿」が左、「吽」が右ということになります。

 

そして、そもそも左側の「阿」はそもそも獅子、右側の「吽」は狛犬という異なる霊獣であり、もともとは左優位の古代中国の思想では差(左の獅子>右の狛犬)があったなど、中園さんのお話をもとに調べていくと面白い話が次から次へと出てきます。

 

狛犬が口を開けた「阿」と、口を閉じた「吽」の表情をしているのも、もともとは寺の本尊を守る仁王像の阿吽の表情に由来しており、狛犬たちは阿吽の呼吸で本殿を守っているとの解釈も成り立ちます。

 

この作品では、それぞれ、マイクとヘッドファンをしており、互いに交信して仲良く神様を守っている作品となっています。

 

神社シリーズには、DM(案内状)にも使われた次の作品があります。

「獅子舞ちゃん」 紙本着彩 F8

 

また、神社シリーズで私が注目したのはこちらの作品です。

「絵馬ちゃん」 紙本着彩 SM

達磨が描かれた絵馬を頭に乗せ、メイド風の服装をしたこちらの作品は、小さいながらとても可愛らしく仕上がった作品です。

この作品の凄いところは、黒いレースの服が細かく丁寧に描かれており、その精密さは驚くばかりでした。

 

この調子で紹介していくと全部の作品に触れることになってしまうので、次の作品で最後にします。

「水宮の巫女」 紙本着彩 F3

丸々とした金魚が泳ぐ水の世界で、振り向く水宮の巫女。

この作品の浮遊感、そして写実的な金魚の姿が愛くるしく感じます。

中園さんは自ら、水のモチーフは得意と述べられているとおり、水を表現した作品には印象に残るものが多く感じます。

 

例えば、2017年美の起原展で準大賞を受賞した、こちらの「夏を纏う」という作品でも、泳ぐ流線形の金魚の姿が印象に残っています。(こちらの作品は今回は展示されていません。)

 

 

 

以上、中園ゆう子さんの作品に関しては、ついつい私も饒舌になってしまいます。

会場では、今回新しく作成した画集やグッズなども並べられていました。

拝見するたびに、新たな姿を見せる中園ゆう子さんの個展に、今回も心から堪能することができました。

 

最後に美の起原のHPアドレスを紹介しておきます。

銀座画廊・美の起原 | 銀座画廊 (xn--xxtyc847fky0a.jp)