今日は、上野の東京都美術館において開催中の第7回新日春展について書きたいと思います。(会期 令和5年4月19日(水)~4月24日(月))

新日春展は、日本画振興のための新人育成を目的として 1965年~2015年の50年の歴史を重ねた日春展(日展日本画部春季展)を母体として、「新たに時代と生きていく絵画展を世に問い、進み、日本画の伝統と共に次世代へ続く新しい発表の場として誕生」しました。

 

私は、たまたまブログを初めたタイミングもあり、新型コロナにより中止となった第4回を除き、第1回新日春展から継続して拝見し、ブログで紹介してきました。

今、第1回新日春展について書いた記事を見ると、紹介した作家の方は、当時からよく存じ上げていた石井清子さんをはじめ、福田季生さん、山下保子さん、村居正之さん、藤島博文さん、池内璋美さん、山内登喜雄さんだけでした。

 

 

その後、回を重ねるごとに、様々な作家さんを知ることができ、今では毎年拝見することが楽しみな公募展の一つとなっています。

 

まず、最初に、掲載されていた受賞者一覧です。

それでは、作品を紹介したいと思います。

公募展の作品を紹介するとき、私は、通常、作品名と作家名、受賞した賞を掲載していますが、会場では、それに加え、会員等の種別と出身都道府県が記載されていますので、今回は、そうした細かい情報も記載しようと思います。

 

まず、第1回新日春展で初めて存じ上げ、その後、個展にも伺うようになった福田季生さんの作品です。

「花まとう」福田季生 会友 奨励賞

美しい花々を描きこんだ着物を纏うとともに、巧みに背景、そして前景に着物の美しい柄を配した作品です。

そして、女性の微睡むような表情、朦朧とした髪も魅力です。

 

私は、この作品を拝見し、福田季生さんの作品として懐かしさを感じたのですが、それは、第1回新日春展の作品「花ごもり」の雰囲気に共通点を感じたからだと思います。

参考に、その作品を掲載します。

「花ごもり」福田季生 第1回新日春展 

 

着物の表現、背景の描き方、統一感など、作品は大きく変わっていると思いますが、花の着物に包まれて微睡む女性の姿がいずれも福田季生さんの作品の魅力を引き出しているように思います。

 

今回は、福田さんの作品は奨励賞を受賞されており、第2室の展示された作品を、足を止めて見入る方が多かったように思います。

 

次は、石井清子さんの作品です。

「縁」石井清子 会友 福岡県

2匹の猫が、安心して寛ぎ、愛くるしい姿を見せる作品です。

石井さんの作品は、愛くるしい猫の姿と、背景の美しさが魅力です。

 

その魅力は、一部の人にしかわからないかと思っていたら、今年の「美術の窓3月号」の「かわいい」大研究のいの一番に2ページにわたり紹介されており、私のブログでも紹介させていただきました。

 

石井さんは、愛猫のクレアとジルを作品の中で描いてこられたのですが、そのどちらも今は虹の向こうに旅立ってしまいました。

 

今回の作品は、石井さんのブログによると、「鎮魂の思いを込めて描いた渾身のクレアとジル。彼女たちをつなぐラインは虹をイメージして七色で描きました。たくさんの方に見ていただけたら嬉しいです。」と記載されていました。

ブログで、長年、この猫たちの様子を拝見した私としても、今回の石井さんの作品への思いが、とてもよく理解できる気持ちでいます。

 

さて、今回も、石井さんの作品の掲示場所で気づいたことがありました。

作品は、第5室のコーナーに掲載されています。

 

実は、この場所は、5室から8室までに行く通路からみえるところなのです。

どういうことかというと、8室から見たところです。

第8室から振り返ると、その奥にこの作品が見えるという第9回日展であった同じようなことに気づいてしまった私でした。

 

次は、清水航さんの作品です。

「遊戯」 清水航 会友 神奈川県

清水航さんは、様々な動物、植物をこの淡い表現で写実的に描かれており、動物や花好きの私としては好きな作家のお一人です。

また、神奈川県の方ですので、横浜のデパートでの個展やグループ展も何度か拝見してきました。

 

2019年11月、清水さんは、横浜で交通事故にあわれ、集中治療室に入院されたということがあり、回復がたいへん心配されたのですが、奇跡的にも回復され、その後もこうして活躍されています。

 

今回は、入口まじかの第1室の展示でした。

 

次は、中村妃菜さんの作品です。

「山径にたつ」中村妃菜 会友 熊本県 新日春賞

山の小径でみつけた廃屋を、写実的に、かつ、情感あふれる表現で描いた作品で、新日春賞を受賞された作品です。

 

私は、この方自体は全く存じ上げないのですが、昨年の第9回日展の日本画部門で拝見し、印象に残った作品を私のブログで紹介させていただきました。こちらの作品です。

 

「おさんぽ」 中村妃菜

とても愛らしく、楽しい作品と思ったこの作品ですが、先に紹介した今年の美術の窓3月号の「かわいい」大研究にも取り上げられていました。

今回の作品は、この「おさんぽ」の作品とは、ギャップが大きいので、はじめ同一の方かな思いましたが、熊本県の方で同一名ですし、絵のタッチも違和感がありません。

それで、今回、ネットで調べてみると、中村妃菜さんは熊本県の崇城大学大学院芸術研究科美術専攻修士課程を修了されており、何とお父様は、同大学美術学部美術学科日本画コースで教授をされている日本画家の中村賢次氏であることが判明しました。

 

これは凄い!と思いましたが、それはそれ、今後、中村妃菜さんがどのような作品を制作していくのか注目していきたいと思います。

 

次は、山下保子さんの作品です。

「蒼天」山下保子 会員 神奈川県

いつも上品なご婦人の作品を描かれている山下保子さんですが、今回は、こちらの作品でした。

山下さんの人物でない作品を拝見するのは初めてですが、こちらの作品も上品で穏やかな作品です。

 

さて、他にも素晴らしい作品で私の印象に残るものが数多くあります。

以下は、原則、コメントも省略して、テンポよく紹介していきます。

 

まずは、人物画です。

「徒然」松田絵理 会友 長野県

 

「青をさがす」 福岡めぐみ 一般入選 新日春賞 熊本県

 

「あした」西田幸一郎 会員 京都府

 

「ハシナウウク カムイ」藤島大千 会員 茨城県

 

「風の童子」間瀬静江 会員 神奈川県

 

「竜田姫」 佐藤和歌子 会員 熊本県

 

「覚醒」金正愛 東京都 会友

 

そして、動物など生きものを描いた作品です。

「しずり雪」池内璋美 会員 京都府

 

「京・賀茂川白舞」 藤島博文 会員 茨城県

 

「君といつまでも」吉川綾 会友 新日春賞 外務大臣賞 神奈川県

 

「咲く」鍵谷節子 会員 大阪府

 

「小鮒宴-瓜花火-」諏訪智美 会友 茨城県

 

「秋茜」福井喜代子 会友 東京都

 

「羽音」森脇純子 一般入選 島根県

 

そして、花を描いた作品です。

「華」田島奈須美 会員 神奈川県

 

「盛椿」 渡辺信喜 会員 京都府

 

「いろはにほへと」 安田敦夫 会員 神奈川県

 

「移ろい」佐久間香子 会友 埼玉県

椿を描くにも、三者三様で面白いと思いました。

 

いつも、拝見するのを楽しみにしている村居正之氏の作品です。

「ロードスの遺跡」村居正之 会員 大阪府

この独特で大変美しい「青」は、村居氏ならではです。

 

「木」岩田壮平 会員 東京都

この勢いがあり、力強い木の表現は、凄いと感じました。

 

 

そして、最後は、この方です。

「春の炎」中村賢次 会員 熊本県

この燃え上がる火の表現に圧倒され、写真に納めました。

 

そして、この作品は、先ほど紹介した中村妃菜さんのお父様である中村賢次氏の作品です。

たまたまなのでしょうか、それとも自然と惹かれたのでしょうか、お二人の作品をこうして紹介できたのは絵を鑑賞する者として一つの出会いであり、感動です。

 

最後に、会場入り口から見えた東京都美術館の風景を写真に納めました。

 

そして、上野公園のスタバで、会場に入る前に、早めの昼食をしました。

 

この日は、国立西洋美術館の常設展を時間をかけて回ることができ、名画を堪能することができました。

以上です。