今日は、現在、東京都渋谷区広尾にある山種美術館で開催されている企画展「上村松園ー美人画の精華-」(会期2017.8.29~10.22)について書きたいと思います。

 

山種美術館は、恵比寿駅から徒歩10分のところにあります。

 

山種美術館には、上村松園の代表作の「蛍」、「新蛍」、「砧」、「牡丹雪」などの代表作を始め、18点の作品が所蔵されており、今回、これらを一挙公開するということで、上村松園ファンとして、楽しみにしてみに行きました。

 

入り口の外には、「蛍」を使ったポスターが掲示されていました。

 

また、チラシとチケットも「蛍」が使われています。

 

上村松園の「蛍」の実物を初めてみたのは、昨年の7月で、大変素晴らしかったのを記憶しています。

「近代日本の美人画展(講談社野間記念館)」「江戸絵画への視線(山種美術館)」に行ってきました!

 

この作品は、山種美術館の松園の所蔵品の中でも、一、二を争う作品に間違いないと思います。今回も、いの一番、入り口正面に展示されていました。

 

この「蛍」という作品の特筆すべき点は、色々あると思います。

松園の描く女性は、みな凜として高尚な印象がありますが、この作品の女性も大変高尚で、かつ、清楚な印象があります。

蚊帳をつるその浴衣姿は、大変涼しげに描かれていますし、蛍に気付き、振り返る仕草も魅力的です。

そして、顔の表情が、他の松園の作品にくらべても、際だって柔和で微笑むような表情が感じられます。

本当に、素晴らしい作品だと思います。

 

今回の、企画展は原則写真撮影禁止になっていますが、1点だけ、撮影可能になっていました。

「砧」という作品です。

 

「砧」とは、台の上に濡れた布などを置き、木の棒などでそれをトントントンとたたき、しわを伸ばす作業です。いわば、アイロンかけのような家事といえると思います。

この作品は、遠くにいる夫を思いながら、この作業をするという故事を聞き、自らも砧を打つという能楽の作品を題材にしているとのことで、都にいる夫を思いながら、空に出ている月を見上げ、これから砧を打とうという女性の姿を描いています。

日々の生活の中で、ふっと遠くにいる夫を思う女性の姿を松園は、「肖像のような又仏像のような気持ちで描いてみた」とのことです。

気品のある表情の中にある女性の思いを見事に描いた作品と思います。

 

このほか、「新蛍」、「夕べ」、「桜可里」など魅力的な作品が所狭しと並べられていました。

「新蛍」(購入した絵はがきの写真です。)

 

この企画展では、このほか、伊藤深水、鏑木清方、小倉遊亀、片岡球子など、多くの美人画が展示しています。

 

女流画家の小倉遊亀の次の2点の作品が、並べて展示してありました。

「舞う(舞妓)」

 

「舞う(芸者)」

 

さらに、その横には、奥村土牛の次の作品も並べて展示していました。

「舞妓」という作品

 

さて、様々な美人画の名作を楽しめたわけですが、小さな第2展示室にも現代の魅力的な作品がありました。

 

それは、京都絵美さんの「ゆめうつつ」です。

この作品は、山種美術館が50周年を記念して、2016年からスタートした「Seed 山種美術館 日本画アワード」で、第1回の大賞受賞した作品です。

この作家さんは、第72回春の院展の展示で、初めて知った若手の作家さんで、調べると、このような賞を受賞されていました。

第72回春の院展(於 横浜そごう美術館)に行ってきました!

 

今回、この「ゆめうつつ」の作品が展示してあり、女性の表情や背景の描き方など、繊細で神秘的であり、魅力に溢れた作品でした。

このほか、この展示室には、伊藤深水の作品3点、北田克己氏の「ゆうまどひ」という作品、それに、林武の「少女」(油彩)など、たいへん魅力的な作品が展示してありました。

 

以上、上村松園を始め、数多くの美人画の作品(出品表では88点)を楽しめることが出来る、山種美術館ならではの企画展でした。