有限責任社員(合同会社の社員を除く。)が出資の価額を減少した場合であっても,当該有限責任社員は,その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務については,従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う(会社583条2項)。この責任は,登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては,当該登記後2年を経過した時に消滅する(会社583条4項)。
1. 出資額の減少と責任の範囲
有限責任社員が自分の出資額を減少させたとき、その社員は持分会社(合名会社、合資会社など)の債務について、減少前の責任の範囲で責任を負う。つまり、出資額を減らした後も、登記(公式な手続き)をする前に発生した債務については、以前と同じ範囲で責任を持つということ。
2. 責任の消滅について
この責任は永久に続くわけではない。登記を行った後、以下の条件を満たせば責任は消滅する。
- 登記後2年以内に、債権者が請求(お金を返せと言うこと)や請求の予告(お金を返せと後で言う予定ですと通知すること)をしない場合。
- その2年が経過すると、請求や請求の予告をしていない債権者に対しては、その責任が消滅する。
具体例
例えば、有限責任社員Aさんが出資額を100万円から50万円に減らすとする。この変更を登記する前に、会社が200万円の借金をしていたとする。この場合、Aさんは減少前の出資額(100万円)の範囲内で責任を負うことになる。
でも、登記をしてから2年間、債権者がAさんに対して請求や請求の予告をしなかった場合、その2年が過ぎた時点でAさんの責任は消滅する。つまり、その後は債務について責任を問われることはなくなる。
このように、出資額を減少しても、登記前に発生した債務に対しては一定期間は責任を負う必要があるものの、その期間が過ぎれば責任はなくなるのだ。
なぜ2年なん?
1. 債権者保護
有限責任社員が出資額を減少させると、持分会社の信用力が低下する可能性がある。債権者がそのリスクを早めに認識し、適切な対応を取るために、一定期間(2年)を設けることで、債権者が持分会社に対する請求を行う機会を確保している。
2. 法的安定性
2年間の期間を設けることで、出資額の減少後の法的状態が明確になる。この期間を過ぎれば、有限責任社員の責任が消滅し、会社の資本構成や財務状況が安定することが期待される。これにより、持分会社およびその社員にとっても、一定の法的安定性が確保される。
3. 実務的な観点
2年間という期間は、債権者が持分会社に対して請求を行うのに十分な時間とされている。これは、通常の商取引のサイクルや訴訟手続きなどを考慮したものであり、債権者がその権利を行使するのに適した期間。
4. 他の法律との整合性
日本の商法や会社法では、類似の状況での責任消滅期間として「2年」が設定されているケースが多い。この期間は、商取引における一般的な慣行や法的手続きの平均的な期間を反映しており、他の法律規定との整合性を保つためにも合理的とされている。
これらの理由から、会社法583条においても「2年」という期間が設定されている。この期間を経過することで、有限責任社員および持分会社の法的な安定性と債権者保護のバランスが取れると考えられている。