倉庫営業者と寄託物
倉庫営業者は、物品を預かって保管する業者のこと。
寄託物は、倉庫営業者が預かる物品を指す。
規定の内容
商法第612条では、寄託物の保管期間について当事者(寄託者と倉庫営業者)が特に決めていない場合の取り扱いが定められている。
規定のポイント
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保管期間の未設定:
- 寄託者(物品を預けた人)と倉庫営業者が保管期間を特に決めていない場合に適用される。
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最低保管期間:
- 倉庫営業者は、物品の入庫日から6か月が経過するまでは、その物品を返還することができない。
- ただし、「やむを得ない事由」がある場合は例外として返還できる。
やむを得ない事由
「やむを得ない事由」とは、保管を続けることが非常に困難な状況。例えば、倉庫が火災や自然災害に見舞われるなど、通常の保管が不可能になった場合など。
具体的な例
1. 取引の背景
- 寄託者:小売店A
- 倉庫営業者:倉庫業者B
2. 寄託物の保管
- 小売店Aが商品100箱を倉庫業者Bに預けることにした。
- 保管期間について特に決めていない。
3. 保管期間の経過
- 商品が倉庫に入庫した日から6か月が経過する前:
- 倉庫業者Bは、特にやむを得ない事由がない限り、商品を返還することはできない。
4. やむを得ない事由
- 例えば、倉庫が洪水で被害を受け、商品の保管が困難になった場合:
- 倉庫業者Bは、6か月が経過する前でも商品を返還することが認められる場合がある。
なんで倉庫営業者がいつでも返還できないのか?
倉庫営業者が寄託物をいつでも返還できない理由は、
1. 安定した保管業務の確保
倉庫営業者が安定して保管業務を行うためには、ある程度の計画性が必要。例えば、突然返還の要求があった場合に備えるための準備が必要。
以下のような点が考えられる
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スペースの管理: 倉庫内のスペースは限られており、どの物品がどこに保管されているかの管理が重要。突然の返還要求があると、この管理が混乱する可能性がある。
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人員の管理: 保管物の出し入れには労力が必要。計画的に人員を配置することで効率的な業務運営が可能となる。
2. 寄託者の計画性
寄託者にとっても、一定期間は物品が確実に保管されることが重要。特に商業活動において、保管期間が安定していることは、物流や在庫管理の計画において重要な要素となる。
- ビジネス計画: 寄託者が自分のビジネス計画を立てる際に、保管期間が確実に守られることを前提にしている場合がある。
3. 法的安定性
法律で最低保管期間を定めることによって、倉庫営業者と寄託者の間の取引が安定し、公平に行われるようになる。
- 契約の明確化: 最低保管期間を法律で定めることで、両者の権利と義務が明確になり、後のトラブルを防ぐことができる。
具体例での考察
1. 取引の背景
- 寄託者:小売店A
- 倉庫営業者:倉庫業者B
2. 寄託物の保管
- 小売店Aが商品100箱を倉庫業者Bに預けた。保管期間は特に決めていない。
3. 6か月間の安定性
- 小売店Aは、少なくとも6か月間は商品が安全に保管されることを期待している。
- 倉庫業者Bは、少なくとも6か月間は商品を保管するためのスペースと人員を確保し、計画的に業務を進める。
やむを得ない事由の例
倉庫火災
- 倉庫業者Bの倉庫が火災に見舞われ、商品の保管が不可能になった場合。
- このような場合、6か月が経過していなくても、やむを得ない事由として商品を返還することが認められる。
結論
当事者が寄託物の保管期間を定めていない場合、倉庫営業者は原則として入庫日から6か月を経過するまでは物品を返還できないという規定がある。これは、倉庫営業者が安定して保管業務を行えるようにするための措置。ただし、やむを得ない事由がある場合には、この限りではなく、返還できる。