会社法上の公開会社ではない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)においては,定款によって,取締役の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとすることができる(会社332条2項)。
背景
株式会社の取締役(会社の経営を行う人)の任期(仕事をする期間)は、法律で決まっている。でも、特定の条件を満たす場合、その任期を長く設定することができる。
公開会社ではない株式会社とは?
- 公開会社ではない株式会社:会社の株式が証券取引所などで自由に売買されていない会社。
- 除外される会社:
- 監査等委員会設置会社:内部監査のための特別な委員会を持つ会社。
参考:
監査等委員でない取締役の任期:最長1年
監査等委員である取締役の任期:最長2年
- 指名委員会等設置会社:経営陣の選任や報酬を決める特別な委員会を持つ会社。
参考:取締役の任期:1年
任期の設定について
基本の任期
- 通常の任期:取締役の通常の任期は2年。
特別な任期設定
- 最大10年:公開会社ではない株式会社では、定款(会社のルールブック)に書いておくことで、取締役の任期を最長10年まで延ばすことができる。
具体的な仕組み
- 定款で決める:会社の定款に「取締役の任期は10年まで」と書いておけば、その会社の取締役は最長10年まで任期を持つことができる。
- 事業年度:任期は選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定めることが可能。
例
-
A社の取締役:
- A社は公開会社ではなく、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社でもない。
- A社の定款に「取締役の任期は10年」と書いてある。
-
任期の計算:
- 取締役が2024年に選ばれたとする。
- その取締役の任期は2034年まで(10年)となる。
- 具体的には、2034年の事業年度が終了する時点までが任期。
なぜこの規定があるのか?
- 経営の安定:取締役の任期が長いと、長期的な経営計画を立てやすくなるから。
- 柔軟性:特定の条件を満たす会社において、経営の柔軟性を確保するため。
なぜ株主総会で決められないのか?
取締役の任期の決定方法
-
定款での設定:
- 株式会社のルールブックである「定款」に、取締役の任期を最長10年まで延ばすことができると書いておけば、その任期を適用できる
-
株主総会での決定ではない理由:
- 安定性の確保:取締役の任期を定款で設定することにより、任期が一定の期間にわたって安定する。株主総会で毎回任期を決めると、頻繁に任期が変わる可能性があり、経営の安定性が損なわれる可能性があるから。
- 事前の透明性:定款に任期を明示することで、株主や投資家は会社の運営方針や取締役の任期について事前に理解し、安心して投資や取引を行うことができる。
- 手続きの簡便化:取締役の任期を毎回の株主総会で決定するのは手間もお金もかかる。定款に一度設定すれば、その後の手続きが簡便になるのだ。
具体例
例えば、A社が公開会社ではなく、定款で取締役の任期を10年と設定している場合:
- 取締役の任期は10年に設定されており、その間は毎回の株主総会で任期を変更する必要がない。
- この任期の長さは、定款に明記されているため、株主や投資家は事前にこの情報を把握できる。
任期の定款設定の利点
- 安定した経営:任期が長いと、取締役は長期的な視点で経営を行うことができる。
- 透明性:定款により事前に任期が明示されているため、株主や投資家にとって透明性が高まる。
- 効率性:株主総会で毎回任期を決定する手間が省け、効率的に会社を運営できる。
まとめ
取締役の任期を株主総会で決めない理由は、経営の安定性を保ち、透明性と効率性を確保するため。定款によりあらかじめ任期を設定しておくことで、これらの利点を享受できるのだ。