フェンネルの種蒔き
4月10日 フェンネルの種を蒔いた。
フェンネルの名前は知っていたが、どんなハーブかわからない。
フェンネルを選んだ理由は何も無く、ハーブの種の袋が偶然目に付いて、
種蒔きの時期でもあり、育ててみることにした。
種を蒔いてから、2、3日で芽がでてくるはずはない。
「となりのトトロ」のメイちゃんのように、『まだ出ない。まだ出ない。』と
呟いていた。
[4月25日頃に発芽し5月14日双葉が出た]
フェンネルは、原産は地中海沿岸だから、乾燥した土地に生育しているのだろうか。
学名は、 Foeniculum(フォエニクラム)。ラテン語の「foenum(乾草)」が 語源
とされる。名前からも、耐暑性があり、きっと育て易いのかもしれない。
アネトールという香りの主成分があって独特の香りをもつフェンネルは、ヨーロッパからイスラム教の地域を経て、中国に渡って行った。
フェンネル伝来の流れが名前に反映されているようで、回教徒を表す「回」の字が
あてられて、回香、茴香(ういきょう)とも呼ばれている。
また、ギリシャ神話では、プロメテウスによって地上の人間にもたらされた火は、
フェンネルの茎に太陽の火が点されたものと語られている。
フェンネルは、古くから利用されてきたハーブらしく、古代ローマ時代にも、
健胃薬として用いられ、ローマの人々の胃を丈夫にして戦に備え、勇気が湧く種
としても珍重されてきたようだ。
フェンネルを燃やし、燻すと、その香りは妖怪を誘いだしてしまうほどの香りの
ようで、魔除けにも使われている。
教会のお祈りの時や説教中の空腹を紛らわすために、信者がフェンネルの種子を
噛んでいたらしいことも知った。フェンネルが礼拝の種ともいわれている所以だ。
今は用いられない”呉の母”(くれのおも)という名称は、何のことだろう。
「くれのおも」の「くれ」は中国の呉(ご)で、中国の長江以南の地域名とされる。
古今和歌集の解釈にまつわる秘伝、古今伝授(こきんでんじゅ)というものの中に、
三種の草花の名があり、「川菜草(かわなぐさ)」「呉(くれ)の母(おも)」「蓍(めど)に削り花」三草があげられている。
ヤブカンゾウ(萱草)を忘れ草というのに対して、「思い草」とされる一草が、
「呉(くれ)の母(おも)」である。その「思い」をとって(おも)としたのか、
または、ウイキョウの別名「香芸(こうおん)」の「芸」が変じて(おも)となった
ともいわれるが、何れにしても、フェンネルは、「くれのおも」というずいぶん
洒落た名前がついていることに感心する。
すみれ(菫)の学名、Viola mandshurica を命名したドイツの園芸学者
W.ベッカーは、自書の園芸書の中で、「くれのおも」という名前で取り扱っていて、 fennel の日本名を、「kureno-womo」 と記している。
(大正13年 マンドシュリカは満州産の意)
まだ嗅いだことのないフェンネルには特別な香りといろいろな用途があることが
わかり、楽しみがひとつ増えた。うまく育てられて収穫することができたら、
しばし古代ローマの人になったつもりで、その効果のほどを自分で治験して
確かめてみようではないか。