「イラストってどうやったら上達するんだろうな」
「あら、何かしら、突然、気持ち悪いわね。目と鼻の位置が逆になってしまった福笑いみたいな顔をして何を言っているのかしら」
「どんな顔なんだそれは……全く。そうじゃなくてイラストが上手になるにはどうしたら良いんだろうな」
「うるさいわね。描いて描いて描き続けるしかないとか言う人もいるけれど、本当に描き続けた事が無いからよく分からないわね。もちろん描き続ける事で技術は上がるでしょうけれど、人の心に響くイラストが必ず描けるようになるとは思えないわ。漫画家なんて毎日ずっと絵を描き続けているものね」
「なるほど。どれだけ描き続けてもストーリーじゃなくて絵だけで人を惹き付けられるような力を持った漫画家はあんまりいない、ってカンジか」
「あら、まるで絵に描いたような分かりやすい毒舌を言っているわね。今後はそうやって多くの人を言葉で傷付ける人間になる事を思い描いているのかしら?まずはその力の無い漫画家についてもっと詳しく聞かせてちょうだい」
「ちょ、ちょっと待った!お前が言ってたから賛同したんだぞ!どうして僕だけの意見みたいになるんだ。しかも更に辛辣な内容になってるような気がするし」
「うるさいわね。私は漫画家が毎日絵を描き続けているという事実を言っただけじゃないの。せっかく軽いタッチで誰にでも受け入れやすい内容だったのに突然あなたが劇画調の展開にしたのよ。いきなり作風が変わって泣き叫んでいる子供もいるんじゃないかしら」
「いや、話の内容で僕達の姿が変わるその世界観がよく分からないけど……じゃ、じゃぁ質問を変えて、人の心を打つようなイラストを描くにはどうしたら良いんだろうな」
「しつこいわね。そういうのはある程度センスや才能も必要でしょうし、また時代も合っていないとダメでしょうね。有名な画家なんてほとんど死んでから評価されたりして本当に気の毒だと思うわ。死んでから突然天才画家扱いされたらとても成仏出来ないんじゃないかしら。どの絵にも絶対に祓えない呪いや怨念が込められてしまいそうよ」
「確かにそうだな。一度評価されたらその後は数世紀に渡ってずっと評価されるような印象だけど、どうして最初に評価されるまでに時間が掛かるんだろう。その画家が活動してた当時の人達だって芸術を見る目はあったはずだと思うんだけどな」
「さぁ、どうかしらね。その人が生きているうちは、もしかすると突然とんでもない駄作を作り始める危険性があるからじゃないかしら。駄作は時に名作以上の影響力を持ってしまうものね。映画監督でも作家でも芸人でも、ずっと良い作品を作ってきたのにたった一度失敗しただけで【力が落ちた】とか【もう終わり】とか言われてしまうのよ。そうなるともう人々は批判するつもりで作品を目にするようになってしまうわ。だから画家が死んでしまってもう何も作品を残せない状態になってから初めて評価する方が無難なのよ」
「言いたい事は分かるけど、それがもしホントだったらずいぶんと割りに合わない職業だな……生きてるうちは評価されないわけか」
「ええ、そうね。だから画家はどこかで一度死亡説を流せば良いんじゃないかしら。【死】というのは駄作以上に人々の価値観を揺るがす力があるものね。今までほとんど名前も知らなかった役者が若くして亡くなった途端に世間で伝説として扱われるようになったり、世間を騒がすスキャンダルだらけで嫌われ者だった歌手が亡くなると突然作品だけが純粋に評価され始めたりするわ」
「でも死んでないのに死んだって言っちゃうと、それこそお騒がせでちゃんと評価されなくなっちゃうんじゃないのか?」
「あらそう。それなら作品を発表するたびに死んでしまえば良いのよ。【これがファイナル】とか言いつつ、その後も【今回に限り特別に復活。今度こそファイナル】みたいな宣伝文句を繰り返して写真集を発売し続けるアイドルがいるじゃないの」
「……何年間も閉店セールをし続ける洋服屋みたいなカンジか……どっちにしてもそんなに何回も使える手段じゃない気がする……って、結局イラストが上達する話とは全く違う展開になっちゃったな。まぁとにかく練習あるのみってカンジか」
「ええ、そうね。それである程度名前を知られるようになったら死んでしまえば良いのよ。だから画材一式と毒を今から買いに行きましょう」
「絵の具の横に置いてあったりしたら怖いな。って、それじゃフリじゃなくてホントに死んじゃうじゃないか!それにどうしてもイラストが上手くなりたいと思ってるわけじゃないぞ」
「あらそう。でも私達の会話の価値を高めるためにもどこかで死ぬのは効果的だと思うわ。だから毒だけでも買いに行くわよ」
「だからホントに死んじゃうって言ってるだろうが!」
「クリックを上達させるために練習していってちょうだい」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
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