「あー、やっぱり店の中は涼しいな」
「………………」
「食事も含めて、しばらくここでゆっくりしていこうか」
「………………」
「いやはや、それにしても外は暑かったな」
「あらそう。良かったわね」
「いや、良かったとはとても思えない暑さだったぞ」
「あらそう。本当に良かったじゃないの」
「どうしてそう思うんだ?体調が悪くなるような暑さなのに」
「うるさいわね。8月に日本が凍えるような寒さになったらもうそんな地球は完全に終わりじゃないの。暑いのが当たり前の季節に暑いのは実はとんでもない天体の奇跡によってもたらされた必要不可欠な暑さなのよ。あまりにもスゴイ現象だから太陽もちょっとテンションが上がってしまって熱を帯びているだけだと思うわ。コッチの気も知らないで本当に迷惑な話ね」
「結局最後は太陽批判になってるじゃないか。せっかく数日は涼しかったけど、暑さに強いお前でも耐えられないくらい今日は暑いって事か……」
「あら、でも今年はクーラーなどは使っていないわよ。北風よりも太陽よりも強いのは人を騙す話術だと以前から言っているじゃないの」
「そんな話をされた記憶が無いけどな……とにかく暑さの凌げる場所で過ごしたいよな」
「あらそう。それなら人間ではなくてマネキンとか人形のフリをすれば良いんじゃないかしら」
「いや、それで何かが変わるとは思えないぞ?雑念を捨てて心頭滅却するって意味か?」
「違うわよ。【者】ではなくて【物】になるのよ。そうすれば太陽が上にあっても【暑】という漢字にならなくて済むわ」
「そんな漢字の成り立ちで暑さを凌げるとは思えないぞ!」
「うるさいわね。冗談に決まってるじゃないの。大きな声を出せば太陽光線をはじき返せると思ったら大間違いなのよ【大】の隙間をぬって【太】が光線を届けている事が文字からも分かるものね」
「いや、だから漢字の話をされてもピンと来ないぞ」
「あら、今度はそんな風に対応するのね。確かに【たいおう】の中には【たいよう】が全て含まれてしまっている可能性があるわ。【お】に【よ】を上手に重ねて隠す事が出来そうだもの。ついに日光を全て遮る事に成功して良かったわね」
「……こんな事で暑さを凌げたら誰も苦労しないと思うけどな。っていうかどんな対応をしても対応って言葉を使うんだし、何でも良い事になっちゃうじゃないか」
「うるさいわね。そうやって揚げ足を取れば私の足がどんどん空中に上がっていくと思ったら大間違いなのよ。そのまま宙に浮いた私のスカートを日傘に使おうだなんていやらしいわね。何を考えているのかしら」
「話がシュール過ぎて何が何だか分からないぞ!全く。結局今日みたいに暑い日はどうやって過ごすべきなんだろうな」
「しつこいわね。今日みたいに暑い日は今日みたいに過ごせば良いのよ」
「どういう事だ?暑いのはもう諦めろって事か?」
「違うわよ。一人でクーラーを使わずに、こうして大勢が集まるクーラーの効いているお店とかで過ごせば良いのよ。一台を皆で使えば消費電力も抑えられるわ」
「まぁ確かにそうだな。地域の老人が皆で集まって一緒に過ごす会とかも新たに各地で出来たってニュースで観たぞ」
「あらそう。そんなに各地にあったら全てのグループにはとてもクーラーは行き渡らないと思うけれど、どうなっているのかしらね」
「そうか?公民館とか区役所とかの使ってない部屋や会議室を使えば全く問題ないと思うけどな」
「違うわよ。どうやって行くのかしらね、って言ったの。あなたは一人しかいないじゃないの。どうやって各地の人にまで寒さを届けるのかしら」
「こら!僕がいるだけで周囲が寒いって言いたいのか?いくらなんでも酷いぞ!」
「うるさいわね。あなたより寒い人なんてこの世にいないから仕方が無いわ。あなたのギャグは全て分かっているもの」
「いや、そんな定番の寒いギャグなんて持ってないぞ……」
「違うわよ。あなたの熱は全て私のもの、って言ったの」
「あなたのクリックも私のものよ」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
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