「いたっ。いててててて」
「あら、何かしら、騒々しいわね。周囲の人に私が暴力を振るっているのかと思われてしまうじゃないの。早く黙らないと引っぱたくわよ」
「完全に暴力の現場を目撃される事になるぞ!って、いててててて」
「うるさいわね。何なのかしら、さっきから。仮病を使って私がどれくらいあなたを心配するのかチェックしようとしているのね。ずいぶん健気な行動だとは思うけれど、そう簡単に私が誰かの心配をすると思ったら大間違いよ。あまりそういう行動を繰り返していると本当に何かがあった時に信じてもらえなくなるわよ。でも今回はあなたの名誉のために、一応仮病の症状くらいは聞いておいてあげようかしら。早くどこがどのように痛むのか話してちょうだい」
「……全く素直じゃないな……いや、大した事じゃないんだ。目にゴミが入って……」
「……あらそう。こんなに心配させておいて何なのかしら。って、結局口を滑らせた私が大怪我をしてしまっているじゃないの、腹立たしいわね」
「ううっ、やっぱりお前は優しいな。いててて。口では色々言うけど、誰よりも優しいって僕は分かってるぞ」
「うるさいわね。痛い事を言うのか痛がるのかはっきりしてちょうだい。とにかくあまりこすらずに放って置けば目に馴染むわよ」
「そうか?って、ゴミが馴染むのはどうかと思うけど……」
「あら、そうかしら。でもゴミはゴミ箱に入るのが最もしっくりくると思うわ」
「こら!僕の目はゴミ箱って言いたいのか!」
「うるさいわね。冗談よ。元はとても由緒正しい血統書付きのゴミなのかもしれないじゃないの」
「ゴミ箱という大前提が変わらないと何を言われても嬉しくないと思うぞ」
「あら、でも大金持ちの貴族の家では、庶民の食べるフライドポテトがゴミのように扱われているかもしれないわ。ある人にとってはゴミでも、別の人にとっては宝物になりえるのよ。難しいとは思うけれど、なるべく多くのものが宝物に見えるような価値観を身に付ければ人生は自然と豊かになるでしょうね。そう考えるとフライドポテトに見向きもしないような贅沢を覚えた人間の心なんて本当にゴミみたいな……」
「ちょっと待った!何か危ない事を言いそう、っていうかほとんど言っちゃってた気がする……いつの間にか話が全然変わってるし」
「あらそう。私はゴミ箱にだって何かしらの価値を見出す事は出来ると思うわ」
「あんまり嬉しい言葉に聞こえないのが残念だけど……」
「……周囲からゴミでも見るような扱いをされてきた私が入ってしっくりする場所なんて他にはもう……」
「ん?どうした?何か言ったか?」
「あら、誰にも聞こえない言葉や誰も知らない過去なんてゴミみたいなものだから気にしないでちょうだい。でも話しているうちにゴミが取れたんじゃないかしら?」
「あ、そういえばもう痛くないな。僕の注意を会話に向けてくれてたのか。やっぱりお前は誰よりも優しいな」
「……何を言っているのかさっぱり分からないけれど、無意識に出た言葉を宝物にしてしまう人がいるかもしれないから注意した方が良いわよ。とにかくただゴミが目に馴染んだだけかもしれないから見せてちょうだい」
「え、うん。どうかな……っていうかこんなに近くで見詰め合うとテレるな……」
「……うるさいわね。ちょっと、本当にゴミなんて入っていたのかしら。やはり仮病だったんじゃないでしょうね」
「いや、今のゴミが取れた状態だけを見て言われても困るぞ。それとも何か理由でもあるのか?」
「あなたの瞳を見ると、私の姿しか目に入っていないわ」
「瞳をクリックするのは辞めてちょうだい」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
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