「昨日は両親の帰りが遅かったんだ」
「ちょっと、私に近寄らないでちょうだい」
「え?何で?会話出来ないじゃないか」
「うるさいわね。あなたの家庭に妹が出来ようが弟が出来ようが、双子や三つ子で両方いっぺんに出来ようが、まだ私には関係ないじゃないの。どうして子守りを手伝えとか何とか私が言われなければならないのかしら。将来の練習のためとかいかがわしい理由で断りづらい状況に追い込まれたらたまらないわ」
「何を言ってるんだ!共働きの両親の帰りが遅いだけで僕の兄弟が増えてたら今頃はとんでもない大家族になるぞ!」
「うるさいわね。違うなら違うで話を膨らませたりしないでちょうだい、いやらしいわね。何を考えているのかしら」
「……自分で話し始めたクセに……いや、何でもない……とにかく違う話をしたいんだけど……」
「何をごにょごにょ恋人に向かって今後はお兄ちゃんと呼んでくれないかと衝撃の告白をしようとしている男のようにつぶやいているのかしら、気持ち悪いわね。とにかく他に話したい事があったなら早くしてちょうだい。このままではあなたの兄弟が何人になってしまうか分からないわよ」
「どんな理論なんだそれは!」
「うるさいわね。こうしてる間にも人はどんどん細胞を分裂させて、あなたの分身のようなものが体内でどんどん形成されているのよ。普段は日常生活をしながらだから細胞も分裂するだけに機能を制限しているけれど、あまり退屈した時間を過ごしていると細胞が調子に乗って、全く同じ人を作り出すまで分裂し始めてしまうかもしれないわ。あなたが二人になってしまったら私はどうしたら良いのかしら。私も分裂するしかないかもしれないわね」
「いや、そんな事態にはならないから心配いらないけど……でも僕がどんな状態になっても今と変わらないようにいてくれるんだな。それは凄く嬉しいぞ」
「……何を突然感動を司る細胞が活発化しているのか分からないけれど、一人でも面倒なのに二人になったら私一人ではとても対処出来ないもの。もし私がショック死してしまったら二人のあなたが野放しになって、地球の生態系が完全に壊れてしまうかもしれないわ」
「僕は人類にとって有害な人間とでも言いたいのか!しかもお前までショック死させちゃうなんて、いくらなんでも酷いぞ!」
「うるさいわね。こんなドキドキが倍になったら心臓が耐えられるわけが……って、何を言わせるのかしら、みっともない。どうでも良いからそろそろ早く違う話をしてちょうだい。このままではショック死するわよ」
「自らドキドキするような事を言ってるのが原因だと思うけど……っていうか僕が二人いるだけで地球の生態系が壊れるという酷い理由は残ったままって気がする」
「しつこいわね。いつまで話しているのかしら。あなたのような人に分裂が出来るなら誰にだって出来てしまうじゃないの。そうなったら地球上が同じ人だらけになってしまうわ」
「なるほど。そういう理由か。結局僕への評価が何となく酷いのはそのままか……まぁ良いや。昨日は久し振りにカップラーメンを食べたんだけど、たまに食べると美味しいな」
「あらそう。私にはラーメンの味は分からないし、味覚なんて人それぞれ違うから同意を求められても困ってしまうわ。フライドポテトだったら話は別だけれど。私も昨日は久し振りにフライドポテトを食べたけれど、たまにじゃなくてもいつもと同じよ」
「え?久し振り?そんなはずはないと思うけど……とにかく一人の時に手軽に食べるには便利だな。お湯を沸かすだけで食べられるし」
「あらそう。一人の時に手軽に食べるには便利ね。油なんて熱しなくても適当に中に入れるだけで食べられるもの」
「それでちゃんと揚がるのか?カップラーメンは3分待つだけだからな」
「ええ、そうね。フライドポテトも3分ほどで冷たい油をまとって美味しく揚がるわ」
「あの……カップラーメンの話を……」
「あら、フライドポテトの話をしているのよ」
「うーん、どうしてこんな展開に……」
「あら、どうしてもこんな展開になるわ。ラーメンとフライドポテトの世界に分裂してしまったのかもしれないわね」
「……なるほど、そういう遊びに付き合わされてたわけか。確かに分裂すると地球は大変みたいだな……でも僕はどんな世界でもお前の事が大好きだぞ」
「……何かしら、突然、気持ち悪いわね。私は大嫌いよ」
「こら!一応二つの会話は内容がリンクしてるんじゃないのか?」
「うるさいわね。大事な事だもの、仕方が無いわ」
「うううっ、何故突然嫌われてしまったんだ……」
「……うるさいわね。私は重要なところだけ適当なウソを織り交ぜる世界を演じていたのよ、って、こんな説明をさせないでちょうだい、みっともないわね」
「そ、そっか。じゃぁホントは大好きって事で良いんだな」
「しつこいわね。予想通り分裂するとドキドキも倍になってしまうわ」
「どの世界にいてもちゃんとクリックしてちょうだいね」
「ツイッター とかいうものを始めてみたわ」
小説版会話ブログ
第一弾【はじまりの日】
第二弾【拝啓、わが路】
第三弾【そして欠片は花弁のように】
会話ブログRPG
第1章
第2章
「リクエストや質問 、待っているわ」