「冬の空って黒いイメージがあるな」
「何よ、突然、気持ち悪いわね。冬のどこがどう黒いのかしら?漢字だけを見るなら何となく夏の方が黒っぽい形だと思うわ」
「いや、ホントの色の意味で言ってるんだぞ。冬は夜の時間が一番長いし、それだけ暗い時間が多いじゃないか。もちろん昼間は違うけど、他の季節に比べたら黒のイメージが強いと僕は思う」
「あらそう。厳密には黒ではないと思うけれど、そう思うなら勝手に思っていれば良いんじゃないかしら」
「何だか投げやりだな……厳密に黒じゃないとすると、どんな色なんだ?」
「さぁ、どうかしらね。本当に黒かったらもう何も見えないはずよ。だから夜の空は亜黒みたいなものね」
「アグロ?黒に次ぐ色みたいなカンジか?」
「そうね。漢字化よ。だから夏の方が黒っぽいと言ってるじゃないの。春はちょっと下半身のボリュームがあるから夏よりは黒っぽくないわね。どちらかと言うと青に近いと思うわ。秋はちょっと異質ね。緑とか橙とか銀とか紅とか紺とか緋とかかしら」
「だから漢字の話じゃなくて、あくまで色そのものの話だぞ!」
「うるさいわね。煤竹色(すすたけいろ)とか錆色(さびいろ)みたいな古びた印象の顔をして怒らないでちょうだい。私の気分が鉛色(なまりいろ)になったらどうしてくれるのかしら。煉瓦色(れんがいろ)を投げつけるわよ」
「いや、よく分からないけど……」
「あらそう。言葉だけではどんな色か想像が出来ない縹色(はなだいろ)のような心境なのかしら。そもそも私こそがまず縹色の状態なのよ。何を話したいのかさっぱり分からないわ」
「一応僕は空の色の話をしてたはずだぞ。お前はどんな空の色が好きなんだ?」
「さぁ、どうかしらね。正確な色の名前は分からないけれど、暗ければ暗いほど良いかしら。でも黒になったら何も見えないからやはり亜黒が良いわね」
「なるほど。夜空にまたたく星とか、神秘的な月とかが見えないのも殺伐として悲しいからな」
「ええ、そうね。暴れてばたつく足とか、辛気臭い顔つきとかが見えないのは撮影している価値がないものね」
「……僕はそんな事言ってないんだけど……」
「あなたがクリックするかどうかも撮影してしまうわよ」
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