「ネット上で友達を見付けたり交流するサイトっていくつかあるけど、ああいうのってどうなんだろうな」
「どう、と言われてもよく分からないけれど、楽しかったりつまらなかったりするんじゃないかしら」
「まぁそれはそうなんだろうけど……突然知らない人から中傷されたり、しつこく絡まれたりするケースもあるらしいじゃないか」
「ええ、そうね。いくら人間同士の交流をうたっていても、相手は顔も名前も住んでいる所も分からない人だものね。そうなるともう本当に人間なのか、ひょっとして人を喰らうお化けや妖怪なのかどうかさえ確認出来ないわ。だから自分が誰なのか特定出来るような事はしない方が良いんじゃないかしら。中には写真を載せるブログや日記を書いていて、部屋からの夜景などを載せたら家を特定されてしまって、ストーカー被害に遭ったという例もあるそうよ。例えるならネットオークションで好きなデザインの服を購入したところ、相手が近所という事が判明して、送料を節約するために直接手渡しで品物を受け取りに行ったら相手が大嫌いな知り合いだったようなものよ」
「何となく例えが違うような気がするんだけど……でもネットの世界ってのは上手に扱わないと怖いな。文字によるやり取りだと普段とは違う印象を与えたりするし」
「ええ、そうね。冗談やツッコミというのはキツイ言葉になる事が多いけれど、それを文章にしたまま受け取られてしまうと知らぬ間に相手を傷付けているケースもあるでしょうね。冗談で書いていると分からせるために下手に笑顔の顔文字なんて使うと、相手にとっては更にバカにされているような気持ちになってしまうんじゃないかしら。例えばいつもちょっとキツめの言葉を冗談で言い合っている二人がネットでも同じように言い合っていたところ、日常の冗談だと分かってしまうやり取りでは全く物足りなくなって、友達関係を辞めてネットだけの付き合いに成り下がってしまったようなものよ」
「だからその例えはちょっと違うような気がするんだけどな……とにかくネットの中では自分でも過剰と思うくらいに慎重に丁寧に交流するのがちょうど良いのかもしれないな」
「さぁ、どうかしらね。あえて全く自分を飾らずに、理解してくれる人だけを真剣に探す、という使い方もあるかもしれないわよ。でも自分を飾らないと言っても、失礼にするべき、という意味ではないわ。もちろん最低限の礼儀をわきまえた人じゃないと、通報されてそのサイトからアクセスを制限されてしまうだけでしょうね。例えば色んな人の日記やブログに辛らつだけれど的を射た事を書き続けて【毒舌お兄さん】などと呼ばれてファンを増やした人が、ついにファンが開催する交流イベントに呼ばれるのよ。でも彼は実はとても良い人で、生身の人間に対すると相手の長所しか見付けられないわ。毒舌を期待していた参加者は全員徹底的にこてんぱんに褒められて、期待外れでガッカリするどころか生きる希望で胸がいっぱいになってしまうのよ。彼の足元に泣きながらひれ伏して、永遠に導いてくれるように懇願するわ。これが宗教がこの世に誕生する瞬間を描いた神話よ」
「既に例えなのか何なのかわけが分からなくなってるぞ!全く。まぁ結局はそれぞれ警戒心を持って独自の楽しみ方をするべき、って結論なんだろうか」
「そうね。あなたもやってみたら良いんじゃないかしら。何か面白い事も起こるかもしれないわよ」
「うーん、どうかな。あんまり時間を取られるのもどうかと思うけど。お前はやらないのか?」
「さぁ、どうかしらね。別に興味が無いわ。それにあなたの世話でもう手一杯だもの」
「……何だか僕の保護者みたいな言い方だな……お前がやりたいなら放課後別れた後にそういうサイトを使う時間くらいあると思うぞ?」
「違うわよ。あなたのせいでもう幸せいっぱいだもの……って、何を言わせるのかしら、みっともない。とにかく他の人と交流してもあなた以上に楽しくなるはずが無いからやらなくても良いのよ」
「うううっ、まさかそんなに嬉しい理由で興味が無いって言ってたとは……」
「ええ、そうね。こんなウソでここまで嬉しそうにする間の抜けた人なんて他にいないもの」
「こら!ウソとか言うんじゃない!」
「SNSについては↓の小説を読むと良いわ。でもここをクリックしてからね」
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