「そういえばお前はスキーとかスノボってやった事あるのか?」
「あら、それはどういう事かしら?」
「どうもこうもスキーやスノボをした事があるのか訊いてるだけだけど……」
「あらそう。私の発する言葉がいつもいつも滑っているからさぞスキーやスノボも上手だろうとバカにしているのね、失礼な。例え誰かが滑ったとしても、それは同じ場所にいる全員の責任だと思うわ。例えばあなたが突然くだらないダジャレを言ったとしても、私の反応次第ではあなたは滑らなくても済むのよ。だから私がスキー上手だと広く勘違いされてしまっている事をあなたは反省してちょうだい」
「一体何の話をしてるんだ!スキーと会話は関係ないぞ!」
「うるさいわね。何を興奮して盛り上がっているのかしら。今回もまたあなたのつまらない発言をしっかりフォローしてしまって、滑らずに済んだあなたは楽しくなってつい興奮してしまったのね。その事実に対する感謝の言葉というのは全く聞いた事がないけれど、まさかあなたが口から発した途端にゲレンデを転がり落ちるように感謝の言葉だけがどこかへいってしまうんじゃないでしょうね。私に聞こえるようにもっと大きな声で言った方が良いわよ」
「いや、何を言ってるのかよく分からないけど……いつも楽しく一緒に過ごせてどれだけ感謝してもし足りないくらいだぞ……って、何なんだこれは。今はそういう話じゃなくて……」
「何をぶつぶつスキー場なら誰でも格好良く見えるという情報だけを頼りに慣れないナンパをしようとしている男のように呟いているのかしら、気持ち悪いわね。それで、今日は一体何を話したいのかしら?話題が完全に本流から滑り落ちてしまって今頃はどこかで奔流に飲まれてしまっている状態よ。何を話せば良いのか、雪が深くて視界が悪くてさっぱり分からないわ。」
「そこまで雪山っぽい比喩を使ってれば充分理解してくれてるはずだと思うけど、まぁ良いか。スキーをやった事があるかどうか訊いてるんだぞ」
「あらそう。やるとかいう以前に、スキーなんて出来るはずがないに決まってるじゃないの。何を考えているのかしら」
「やった事が無いって言うだけなら話は分かるけど、出来るかどうかはやってみないと分からないじゃないか。お前の場合は誰よりも飲み込みが早いし、案外すぐに滑れるようになるかもしれないぞ?」
「うるさいわね。そうやって口車に乗せて私をスキーやリフトに乗せてしまおうとしても無駄よ。雪が溶けないもの」
「いや、言ってる意味がよく分からないんだけど……雪が溶けてる方が良いのか?それじゃスキーにならないぞ」
「違うわよ。腕が解けないもの、って言ったの。私は腕組みしたまま腕が解けないのよ。スキーどころではないわ」
「ウソつけ!それで普段はどうやって着替えてるんだよ!」
「うるさいわね。腕が解けないもの、って言ってるじゃないの。あんな不安定な板に身体を乗せていたらずっとあなたにしがみつかなければ立っていられないわ。そんな事をするためにわざわざ雪山へなんて行ってたまるもんですか、みっともない」
「そんな事を言われると僕としては行ってみたくなるけどな……」
「指が滑ってクリックする分には歓迎するわよ」
公認会話士の小説連載中
小説版会話ブログ第一弾
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