「やっぱり秋になると食欲が湧いてくるな」
「あらそう。悪かったわね。その感覚は何だかよく理解出来ないわ」
「いや、別に謝るほどの事じゃ……かえって一年中食欲が変わらないなら悪くないんじゃないのか?」
「あらそう。でも協調性に欠けるんじゃないかしら。ひょっとすると礼儀に欠けたり義理に欠けたり迷惑を掛けたりしているかもしれないじゃないの」
「いや、だからそこまで気にしなくて良いと思うぞ。それはそうと、昨日の夕飯はおかずが先に無くなっちゃってさ。もっと食べたかったんだけどご飯しか残ってなかったんだ」
「あら、期待を掛けて願を掛けたのにおかずが既に欠けていたのね。食べている最中にもう少し自分の腹具合を気に掛けた方が良いんじゃないかしら。ちゃんと健康的な食事と不摂生なドカ食いとを秤に掛けて、時にはブレーキを掛ける事も必要だと思うけれど」
「まぁ確かに腹八分目ってのが一番良いとは言われてるけどさ。昨日はそれにも満たないようなカンジだったから、仕方なくご飯にふりかけを掛けて食べたよ」
「あらそう。ずいぶんありきたりで平凡な性格に輪を掛けるような、創造性や独創性に欠けた選択だったわね。あなたの事は何でもお見通しだから言われる前に私は山に掛けていたけれど、本当にその通りになると鎌を掛けるのも面倒になってしまうわね。どんどんつまらなさに磨きが掛かってきているし、これ以上拍車を掛けるようだと手に負えないかもしれないわ。手塩に掛けて育てるべきか、もう目に掛けたり気に掛けたりするのを辞めるべきか天秤に掛けてしまいそうよ」
「ふりかけでご飯を食べただけでそこまで言わなくても良いじゃないか!じゃぁ一体何を掛ければお前は満足してくれるんだ?」
「うるさいわね。そんな風にモーションを掛けて会話に水を掛けないでちょうだい。私は媚を売って尻目に懸けるようなマネはしないわ。それに私と付き合っている事を鼻に掛けてうるさくすると手に掛けてしまうわよ。私がいつでもあなたの寝首を掻けるという事を忘れてはならないわ。まぁ、そんな事をしたら縄を掛けられてしまうじゃないの、失礼な。白飯を掛けるわよ」
「白いご飯に白いご飯を掛けたらただの大盛りのご飯じゃないか!」
「うるさいわね。命を懸けるわよ、って言ったの。私はあなたとの関係に命を懸けているのよ」
「そ、それは嬉しいけど……完全に【白いご飯】じゃなくて【かける】をメインに話してるよな……」
「私にクリックをかけてみたいんじゃないかしら?」
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【はじまりの日】
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【そして欠片は花弁のように】