「結構夏場は食欲が落ちて痩せる人も多いみたいだけど、何だか少し太ったかもしれない」
「あらそう。全く恥ずかしいわね。あまり人前でそんな事は言わない方が良いわよ。本来ならば私に言うのが最も恥ずかしい行為という気もするけれど、もしかして私の顔色を窺おうとしてあえて言っているのかしら?本当にいやらしいわね」
「えーと……そりゃ自己管理が出来なくて太ったのは恥ずかしい事かもしれないけど……そこまで言われるほど大幅に太ったわけじゃないぞ?」
「うるさいわね。普段は太らないのに今年だけ太るなんて、完全に私のせいじゃないの、失礼な。それで多くの人に【幸せ太りだ】とか触れ回っているんでしょう?本当に恥ずかしいわね。人間が幸せだけを食べて生きていけると思ったら大間違いよ。もし幸せで満腹感を得る事が出来たとしたら、かえって食べ物をほとんど口にしなくてどんどん痩せ細っていくはずじゃないの。だから今までに恥ずかしい事を公言した相手全員に、不摂生が太った原因だと修正して回ってきてちょうだい」
「僕はお前以外の誰にも言ってないぞ!まぁ……確かにそんな風に思われたりからかわれたりしたら恥ずかしいだろうけど……」
「まぁ、という事はあなたは不摂生が原因で太ったと言いたいのね。去年までは太らなかったという事は、完全に私のせいじゃないの、失礼な。私の管理能力が不足しているから、あなたは高カロリーで高コレステロールで高脂質で低品質な食べ物ばかり食べさせられたとか触れ回っているんでしょう?本当に恥ずかしいわね。今後あなたの関係者に会うたびに冷ややかな目で見られてしまうわ。どう責任を取ってくれるのかしら。僕の彼女は完璧で何一つ欠けた所はありません、と早く修正して回ってきてちょうだい」
「僕の話をちゃんと聞いてたのか?お前以外の誰にも言ってないって言っただろ!」
「まぁ、という事は私が太った原因だから責任を取れと直接的に抗議をしようと思っていたのね。やはり完全に私のせいじゃないの、失礼な。私と一緒にフライドポテトやアイスばかり食べていたから太ったと私に言いたいんでしょう?同じような物を食べた私の体重は一切増えていないのに、よくそんな言いがかりがつけられるわね。早く謝罪してちょうだい」
「お前のせいだなんて全く思ってないって!他にも間食で色々とつまんだりしてたし……」
「まぁ、お腹がつまめる感触にまで太ったのは私のせいだと言いたいのね、失礼な。もう耐えられないわ。あなたは恋人関係からもつまみ出すしかないかもしれないわね」
「ちょっと待て!どうしてそんな話にまで発展するんだ!」
「違うわよ。あなたをこうして鑑定するからつまませてちょうだい、って言ったの。…………何よ。Tシャツしかつまめないわ。全然お腹の肉がつまめないじゃないの」
「うん、だからあくまで【少し】太ったかもしれない、って言っただけなのに……いててててて!そんなちょっとだけつまんだら痛いじゃないか!」
「うるさいわね。私の心の痛みに比べたらこれくらい何でもないじゃないの。散々人を不摂生の象徴のように言ったりして、失礼な」
「だから全くそんな事言ってないんだけど……いててててて!勘違いして気まずいからって八つ当たりするんじゃない!」
「クリックしないとあなたもつまむわよ」
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【はじまりの日】
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