焼き入れ冷却材からの引き上げチャンス | ―正宗の名刀は再現できる―

―正宗の名刀は再現できる―

自身を「スーパーメーカー」と称する鋼の研究者、古屋道正です。
世界に3人しかいないダマスカス鋼の再現者の一人です。
鉄・鋼に対するあくなき探究心を、ブログに少しずつ書き記していきます。名刀細川正宗は再現することができることを知っていただけることでしょう。

 焼き入れは焼きの入りがたい炭素鋼ではカンナのような刃物なら完全焼き入れが可能な急速冷却材使用が望ましいので10%塩水がいいと述べた。



 しかしMs点以下のマルテンサイト変態が一気に進む250℃以下は急激な冷却は危険である。


 現代の鋼扱いの達人大和久重雄さんの鉄鋼材料入門には焼き入れ途中の引き上げのことが書いてある。


 炭素鋼の場合は 水焼き入れでは3ミリ1秒、油やきいれでは3ミリ3秒とある。


 つまり3ミリの厚さのものは1秒で焼きが入るのでそのあとさっと水から引き揚げる必要がある。




 これは赤めた刃物を水に投入したらカチカチと唱えて1秒だけ数えてさっと引き上げるのがよいということである。


 刀で厚さが3ミリを越える部分は中心まで焼きが入らず中心部は不完全焼き入れとなる。



 引き揚げたら棟側の熱で焼きが戻らないように空中でまたカチカチと1秒を唱えて再び水中に投入する。

 
 さらにまたカチカチと1秒唱えて空中に引き戻す。


 以下繰り返して温度が下がる頃を見計らって終わりとする。


 このあともちろん湯戻し30分とサブゼロをつずけて行う。


 白紙1号はほんとに焼き割れしやすい。


 すこしでも歩留まりを良くするために引き上げ焼き入れをするのであるが 大和久さんのような達人のようにうまくいくかどうかは場数を踏む必要があるだろう。



Android携帯からの投稿