この時点で私は「長嶋を教祖とする巨人教団の一信者」となっていた。
「神」の座の上った以上、それだけの成績を残さなければならない。
ここで長嶋茂雄の成績記録を書き並べてみようか。そんな野暮なことはしない。知りたければいくらでも調べられる。大事なことはそれが私にとってなんであるかなのだ。
確かに本塁打王は二回取っている。首位打者六回、打点王、MVPそれぞれ五回。三冠王はとっていないとはいえ、堂々たる成績である。
しかし私はある種、フラストレーションを感じていた。欲求不満、物足りないのだ。私の思い描いた長嶋茂雄とは明らかなギャップがあった。
他人と競り合ってのタイトルであってはいけないのだ。ずぬけていなければ。ホームランなら50本以上、打率なら4割、10年連続3冠王。それが私にとっての長嶋茂雄であった。