前回紹介した『イチロー君』には省略した部分がある。この作を書き進めていくうちに次々と妄想、構想が湧き出てきて、思いもよらぬ大作になってしまった。暫時、紹介してみる。まずは差しさわりのないところから。
― チチローの諭しに続く ―
新天地シアトルに居を構えたのがこの半年後、そして迎えた7月10日。かいがいしくも妻弓子、朝もはよから台所、イチローのパワーの源おにぎりを作る姿がありました。
はるばる日本より五万円もかけまして取り寄せたる特別ブレンド米、水をたっぷり入れまして、手で軽くかき回し、繰り返すこと3・4回、これで十分、やりすぎますとでんぷんやビタミンBが出てゆきます。このまま待つこと30分、コメに給水させましょう。あとは水加減ですが(普通の場合)容量でコメの1.2倍、重量で1.5倍、炊き込みご飯の場合には液体調味料の量も含めることを忘れずに。すし飯のように硬めにしたい場合には、1~2割水の量を減らしましょう。いずれの場合にも必ず計量カップで正確に測ってください.お願いします。
次に火加減ですけれど、ちょいと手間をかけましょう。一般のガスコンロでは、その段階段階で火力の調節してほしい。まずは水温あげるため火は強火、水温上がり対流に伴い膨潤させるためにはこれは中火でお願いします。徐々に水量減りまして、米粒も安定し、余分な水分飛ばすためにはこれは弱火がよろしいでしょう。
具体的には、まずは中火にかけまして、沸騰してくりゃ強火にし、吹きこぼれない程度に火を弱め、この状態で4分5分、次に中火で7・8分、さらに弱火で10分間。
さて最後の仕上げとまいりましょう。火を止める直前にぱっと強火にいたしましょう、時間にしまして10秒くらい、中でぱちぱち音がする、ここで火を止めそのまま蒸らします、もしもおこげがお望みならば、スイッチ切れた3分後にも一度スイッチ入れましょう。
はじめちょろちょろ、なかぱっぱ、赤子鳴いてもふたとるな
九尺二件に過ぎたるものは、紅のついたる火吹き竹
どうやらご飯が炊けました。
私一人のものじゃない。日本だけのものでもない。アメリカ中の人たちにも、もはや受け入れられた人、どうぞ御身を大切に、と、作る料理に心がこもる。
― 次回に続く ―
尚、ご飯の炊き方については和食料理研究家、土井勝(1921~1995)さんの著書を参考にさせていただいた