前回、’89年の高須での「明智光秀」を紹介したが、この日の私はよほど調子が良かったらしく、しょんがい音頭、残り二席もまことに出来が良い。ぜひ聞いていただきたい。「恩讐の彼方・前編」、「吉原100人切り・後編」の二席である.
以前にも書いたが、この「恩讐の・・・」は道中付けが本当に美しい。紹介する
恩讐の彼方
越後柴田は五万国・・・・・
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(道中付け)
空行く雲にうちまかせ 流れる水に心を清め
行き交う人に近江路や 琵琶の湖水も右手に眺め
いつしか晴れて唐崎の 松にさざめく夜の雨
坂本登りゃ比叡の御山 あの久保台の仏たち
居ますゆかりの庭なれば ここにもしばし杖を留め
一仏乗の道を聞き 誓いは固き不動寺の
峠に立って眺むれば 延たる如き琵琶の海
やがて下った白川の 流れに沿えば王城の
都の地にぞ入りにけり 時は弥生の春の風
柳桜とこき交ぜて 都ぞ巷錦織る 祇園精舎の鐘の音
鐘に暮れゆく寺でらの 仏の数も伏拝み
淀の川船ゆらりと乗れば 難なく着いた難波津の
良し悪し繁き世の波に 昔の罪をば洗い捨て
老いをいたわり弱きを助け 道なき里に道を付け
橋なき流れに橋をつけ 石にまどろみ経を読み
衆生済度の請願に 心播磨の浦伝い
瀬戸の入り江を眺むれば 島影出ずる真帆片帆
入日を洗う夕凪に 寄せては返す渚道
行く手は遠くあまがやに 洩るるともしび影暗く
備前、備後もはや超えて 行く夜、寝覚めの夢破る
千鳥の声も悩ましく 痛める胸を御仏に 救わせ給えと念じつつ
衣で返した夕凪の 龍の見合いの厳島 潮道伝えば渡殿の
ともしび揺らぐいざ走り 鹿のなく声聞き包む
一部八巻法華経の 読誦とともに参籠なして
“船をだしゃらば 夜更けて出しゃれ 帆影見るさえ気にかかる”
哀れをそそる舟歌の 節の響きも長門の国 硯の海や門司が関
海を渡れば九州の ついたところが小倉の町
道を転じて宇佐八幡に 参詣いたして了海が 山国川をば遡る
三口も過ぎて佛坂 やがて来かかる樋田の町
樋田の町へと着いたなら・・・・・・・・・・・・・
・・・・・略・・・・・・・・・・・・・・